【2019年W杯が日本で開催】ドローンやiPadまで駆使するラグビー日本代表の"過酷な訓練"

2015年09月16日 23時11分 JST | 更新 2015年09月20日 14時03分 JST

「日本はどこかの国を真似している。そんな風に見えたんです」

そう語るのは、ラグビー日本代表のエディー・ジョーンズHC(ヘッドコーチ)だ。3年前から現職について以来、世界ランキングは16位から最高位9位(2014年11月10日当時)まで上がった。間もなくイングランドで始まるワールドカップではベスト8を狙うという。

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なぜ、ここまで成長を遂げられるのか? 国内でスポーツ振興のための助成活動を行っているスポーツくじtoto※のパートナーシップのもと、五郎丸歩選手とエディー・ジョーンズHC(ヘッドコーチ)に、その秘訣を聞いた。

■練習に使うのは、iPadとドローン

ジョーンズHCはもともと1996年に日本代表のフォワードコーチを1年間務め、その後複数国の代表チームをけん引。2012年からHCとして再び日本代表に戻ってきた。もともと日本に縁はあったものの、HC就任当初は自分が受け持つチームに対して「もったいなさ」を感じたようだ。

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「自分の母と妻が日本人なので、いつか日本に恩返しをしたいと思っていました。日本代表チームはもっと強くなれると確信していたので、オファーを受けました。それまでの日本代表はチームとして独自のスタイルがなく、他の国の真似をしているようでした。個々の選手のポテンシャルが活かされていないように見えたんです」

そこでジョーンズHCは「JAPAN WAY」というスローガンを掲げ、選手の強化に取り組んだ。この言葉には「誰かの模倣ではなく、日本独自スタイルで世界に挑戦する」という熱意が込められている。

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どうすれば日本代表のオリジナリティが出るのだろうか? まずはパワーやスピードなど総合的な体力、身体性、持久力強化に努めた。テクニカル・アドバイザーの経験もあり、スポーツ科学に明るいジョーンズHCが、選手に課すトレーニングは独特だ。日本代表の副キャプテンを務める五郎丸選手は、その手法を「かなりしんどい」と苦笑を交えて語る。

「日本代表練習は、1日3回〜4回に分けられています。第一部は、朝5時〜6時あたりにスタート。筋力をつけるには、朝早くからのトレーニングが必要なんだそうです。ジョーンズHCが招聘したストレングス&コンディショニングコーディネーターに食事面もしっかり管理してもらい、効率的に身体強化に励んでいます。4年前は体重93~94kgでしたが、今では100kgになりました。それでもしっかり走ることができるのは、今まで積み上げてきた成果だと思います」

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テクノロジカルなトレーニング手法は、用いる道具も独特だ。ジョーンズHCはGPS(全地球測位システム)やiPad、ドローンなど、さまざまな最新技術を駆使する。これによって運動能力や訓練結果の分析はもちろん、選手個人においてベストな手法を編み出せるという。

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空気抵抗から負荷を作り出す「ワットバイク」も活用している。モニターに「今、どの筋肉をどれくらい使っているのか」がリアルタイムで表示される。

「GPSを付けて練習することで、一人ひとりの選手がどのくらいのスピードで、どれだけの距離を走ったのかを詳細に測定でき、必要な練習を組み立てます」

このデータ分析によって、走るスピードが秒速8.5メートルから9メートルに上がった選手もいるそうだ。

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無人航空機であるドローンには、鮮明な映像が撮れる4Kのビデオカメラを積み、選手たちの動きを記録する。高い場所から自分の動きを見ることで、俯瞰した分析が可能になる。

さまざまな角度からの分析は、iPadで確認する。ジョーンズHCいわく、「若い世代の選手たちは、スマートフォンに慣れているので、ホワイトボードに書いたり、口頭で説明するよりもiPadで説明した方が効果的」だそうだ。

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ラグビーをはじめさまざまなスポーツの発展には、totoの助成が役立てられている。ジョーンズHCはこう語る。

「今回ワールドカップが開かれるイングランドは、スポーツくじがたいへん盛んなことで知られていますし、その収益がさまざまなスポーツの普及に充てられていると思います。日本では、totoがその役割を果たしていますが、この助成で多くのスポーツが支援されていることはすばらしいことだと思います。totoを購入することで私たちを応援してくれている方のためにも、より良いパフォーマンスを見せたいですね」

■限界に挑戦する勇姿が意味するもの

また、JAPAN WAYの戦術は強固な協力体制が特徴だという。パスとランでボールを繋ぎ、保持時間を長くする。1つの攻撃に大勢が参加することで、チームとしての攻撃力が向上するのだ。1人1人の身体の増強には限度があるが、選手たちの連携で可能性は広がる。五郎丸選手は、チームワークについてこう語る。

「以前と比べて、グラウンド上で選手同士がいろいろと指摘し合える関係になりました。ラグビーの試合では、監督はスタンドにいることが多いので、リーダーたちが80分間にわたって、自分たちが進むべき方向を的確に示すことが大切だからです」

自らの頭で考え、指摘しあい、チーム全体の向上を図る。それは紛れもなく、個の能力をそれぞれ認め合っているからこそなせる技だろう。

「ラグビーは見返りを求めず体を張って、仲間のためにプレーするところが一番の魅力です。世界の強豪に比べると、日本代表チームは身体が小さいと言われます。しかし、それでも世界のトップが集まるワールドカップで懸命にプレーしている姿を見て、何かを感じ取ってほしいと思います。私たち日本代表が世界の舞台で勝つ姿を日本の子どもたちに見せ、世界に挑戦できる選手がもっと増えればいいと願っています」

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五郎丸選手が持つ気概は自分の競技だけにとどまらない。

「日本は他の国と比較すると、スポーツが文化としてまだ根付いていないと感じています。日本代表がしっかりとしたパフォーマンスを出すことで、スポーツがより社会に認められるように努力していきたいと考えています。ワールドカップ2015では、日本だけでなく世界を驚かせるようなプレーで、日本のラグビー、日本のスポーツを変えていけるきっかけが作れればと思っています」

きっと、どんなスポーツでも日本代表の実績が、その人気に大きく作用するだろう。世界ランキングは上がったものの、ラグビー日本代表チームは24年間ワールドカップで勝利を収めていない。2019年の日本での開催に向けて、国内の温度感をさらに上げる必要がある。だからこそ、今回のワールドカップはなおさら重要なのだ。

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自らの限界に挑むその姿こそが、オリジナルの輝きを放つ道筋なのだろう。ラグビー日本代表チームはその勇姿をもって、見る者をエンパワーしてくれる。2019年に向けた戦いが、間もなく始まる。

※スポーツ振興くじ助成とは

スポーツ振興くじtoto・BIGは、独立行政法人日本スポーツ振興センターによって運営・販売されており、その収益は選手や指導者の育成、グラウンドの芝生化、地域のスポーツ施設の整備など日本のスポーツを育てるために使われています。

詳細:http://www.jpnsport.go.jp/sinko/josei/tabid/77/Default.aspx

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