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対馬の仏像、韓国の寺に引き渡し命令 韓国の地裁「倭寇に略奪された」主張認める

2017年01月26日 15時32分 JST | 更新 2017年01月26日 15時39分 JST
長崎県

長崎県・対馬の寺院から盗まれ、韓国に持ち込まれた仏像を、韓国の寺院が「中世の倭寇に略奪された」として返還を求めていた裁判で、韓国の大田(テジョン)地裁は1月26日、寺側の主張を認め、仏像を引き渡すよう命じた。

韓国の通信社、聯合ニュースは「600年ぶりの帰還」と見出しをつけて報じたが、「日本政府の強い反発も予想される」とも述べている。

仏像は、対馬の観音寺が保有していた「観世音菩薩坐像」。長崎県の有形文化財に指定されている。像の中から見つかった「結縁文」から、1330年に制作され、韓国中部の都市・瑞山にある浮石寺にあったことが判明している

2012年10月ごろ、観音寺から盗まれたが、2013年1月に韓国で窃盗団が逮捕され、仏像は韓国政府に押収された。しかし、「倭寇に盗まれたものだ」と浮石寺が所有権を主張。大田地裁は2013年2月に浮石寺側の主張を認め、日本への搬出を禁じる仮処分を決めていた。

仏像はそのまま韓国政府の文化財庁が保管していたが、浮石寺側は2016年4月に、韓国政府を相手に引き渡しを求める裁判を起こしていた。

聯合ニュースによると、判決は「贈与や売買など正常な方法でない盗難や略奪などの方法で、日本に運ばれ安置されていたとみるのが相当だ」と、浮石寺側の主張を認めた。韓国政府側は「文化財であり、引き渡せば損傷する恐れがある」と却下を求めていたが、判決は「寺に十分に保管能力がある」と退けた。

浮石寺側は、窃盗団が処罰されたことで窃盗事件は解決しており「残った問題は、仏像の所有権が元の所有者である浮石寺にあるのか、占有者だった観音寺にあるのか」と主張。寺のある瑞山地方に1352~1381年に5回、倭寇襲来の記録があるとして、仏像が倭寇に略奪されたと主張していた

円牛(ウォヌ)住職は「日本に略奪されたり不法流出したりした文化財は7万点以上に達する。今回の判決は不法に流出した文化財を取り返す出発点となる」と評価した

観音寺は訴訟の直接的な当事者ではないが、近世の朝鮮半島との交流で多くの仏像や文書がもたらされたうちの一つだとして、返還を求めていた。前住職の田中節孝氏はNHKニュースに対し、今回の判決に無念さをあらわにした。

裁判所の判断が今まで長引いたのは、今回の結果を導くためだったのかという思いで、悔しさを超えて何とも言えない気持ちだ。判決を受けて韓国政府が控訴しなければ窃盗事件を正当化することにもなり、今後の隣国との関係のありようが問われる大きな問題だと思う

菅義偉官房長官は26日午前の会見で「極めて残念だ」「速やかに仏像が日本に返還されるよう、韓国政府側に適切な対応を求めていきたい」と述べた