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「渡辺明竜王を弁護する」弁護士が文書公開も「怪文書」と物議⇒削除 どんな内容だったのか?

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WATANABE
渡辺明竜王 | 時事通信社
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将棋の三浦弘行(43)九段が対局中に将棋ソフトを不正使用していたと指摘され、のちに「不正の証拠はない」と認められたことをめぐり、ある弁護士が「渡辺明竜王を弁護する」という文書を発表し、物議を醸している。

この文書は横浜パートナー法律事務所の大山滋郎弁護士の名義で、 2月26日に「三浦九段不正疑惑について、渡辺明竜王を弁護する」というタイトルで同事務所のサイト上に公開された。文書は公開後、Twitterなどで物議を醸し、同日中に削除された。

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26日に掲載された「三浦九段不正疑惑について、渡辺明竜王を弁護する」。同日中に削除された

■削除された渡辺竜王擁護の声明、どんな内容だった?

まず文書の冒頭では「将棋観戦記者の小暮克洋氏から、弁護の依頼を受けた」「将棋の渡辺明竜王を、ネットなどの攻撃から、『弁護』して欲しいという依頼である」と記されていた。

小暮克洋氏は将棋の観戦記者。今回の不正疑惑をめぐり、三浦九段が「許せないという気持ちはありますね」と、産経新聞のオピニオンサイト「iRONNA」のインタビューにおいて名指しで批判した人物だ。

連盟も今回の騒動で大変な被害を被ったと思うんですけど、ただやっぱり悪意を持って、私のことや将棋界全体を苦しめた一部のメディアと一部の棋士、そして私が不正をしているという噂をまき散らし将棋界を無茶苦茶にした観戦記者の小暮克洋氏だけは、許せないという気持ちはありますね。

「どうしても言いたいことがある」 三浦九段が初めて語った騒動の内幕より)

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三浦弘行九段

三浦九段に疑惑の目が向けられた「将棋ソフト不正疑惑」をめぐっては、渡辺竜王が第29期竜王戦で対局する予定だった三浦九段が、将棋ソフトを用いて不正対局をしていると指摘。週刊文春の取材に応じた。

不正ソフト疑惑を調査した第三者委員調査委員会の報告書によると、渡辺竜王は竜王戦開幕直前の2016年10月中旬、週刊文春が疑惑についての記事を掲載するという情報を把握。日本将棋連盟の島理事らに訴え、連盟としての対応を求めた。

これを受けて、三浦九段は将棋連盟から出場停止処分を受けたが、2016年12月、第三者調査委員会は「不正行為に及んでいたと認めるに足りる証拠はない」と結論づけた。これを受けて、疑惑への対応を巡り混乱を招いたとして谷川会長と島常務理事が引責辞任した。

第三者調査委員会の発表を受け、渡辺竜王は1月17日に「メディアの取材に対応したことにより、三浦九段にご迷惑をかけたことを申し訳なく思う」と竜王位の就位式で謝罪している

■大山弁護士「ネットを見れば、渡辺竜王を『有罪』とする意見が9割を超えていた」

週刊文春などの取材に応じたこともあり、渡辺竜王は「一連の騒動の引き金となった」という声もでている。大山弁護士の文書によると、「ネットを見れば、渡辺竜王を『有罪』とする意見が9割を超えていた」という。

本件を引き受けるにあたり、相当のためらいはあった。ネットを見れば、渡辺竜王を「有罪」とする意見が9割を超えていた。「竜王位を返還させろ。」などは良いほうで、「引退させろ。」「除名しろ。」などという意見が、非常に多く見受けられた。そんな中で竜王を「弁護」(それも裁判外で)すれば、相当強い反発が予想された。なにも「火中の栗」を拾わなくてもという思いも当然あった

そのため、大山弁護士は「『刑事弁護人』として、渡辺明竜王に言い分があるのなら、それを世間の人たちに理解してもらおうと決意した」とした。

■渡辺竜王には「三浦九段を『疑う根拠』があった」

文書の中で大山弁護士は、「ネットの論調を見ると、かなり将棋を知っている人でも、根本的に誤解している」と主張。

また、「何ら疑うべき根拠がないのに、三浦九段がカンニングしたと問題提起した」という渡辺竜王への非難に対し、「三浦九段が本当に黒だったかは別にして、『疑う根拠』があったことを示せれば、渡辺竜王に対する『弁護』はできる」と説明した。

また、第三者調査委員会が「三浦九段の指し手の一致率が高いという点に関して、問題とされている4局を検討したのち、必ずしも疑惑を裏付けるものとは言えないと結論付けた」としたことについて、 一致率でカンニングを決めるのは困難だと主張。

「一致率というのは、全ての局面において、棋士の指した手とソフトの指した手が一致した割合である。しかし、これをもって、カンニングの有無を決めるのはかなり難しい」としている。

■「予備校などが行う『試験』と、そこにおけるカンニングの事案と全く同じ」

また、「本件を『将棋』の問題と考えずに、予備校などが行う『試験』と、そこにおけるカンニングの事案と全く同じなのだと考えてみる」と提起。その上で、以下のように説明した。

普段は70点の実力の受験生が、一定の短い期間の試験で、通常の正規分布の山の右端に位置する、85点以上の高得点を、4回も取ったのである。さらにそのときに、その受験生は何度もトイレで席を外していたという。これは怪しいと、多くの生徒たちが騒ぐ中、先生に問題提起をしたのが、渡辺受験生だったということになる。
三浦九段の4局の点数は、普段の彼の実力からすると、当方の計算では、出現率でいえば、良くて10%程度である。そんな出来の良い将棋が、疑いをもたれた短期間に、4局もでてきている。

なお、第三者委員会の報告は、三浦九段の「疑惑の4局」程度の一致率の将棋は、35局中9局あったと指摘している。つまり、三浦九段にとっても、上位4分の1に入るような出来の良い将棋だったことになる。

そのような出来の良い将棋が、疑いをもたれた短期間に、4局も出現していることになる。もちろん、そのような偶然があり得るというのは、第三者委員会の指摘する通りではあるが、常識的にはめったに生じない事態である。

その上で、大山弁護士「似たような事態が、受験において生じていれば、他の生徒が問題を提起したとしても、当然」「生徒たちを代表して、先生に問題提起した渡辺竜王の行動は、少なくとも非難に値するようなものではない」と持論を展開した。

■「三浦九段を『黒』だと言い立てることではない」とはしているが…

大山弁護士は、「三浦九段を『黒』だと言い立てることではない。第三者委員会とことさら事を構える意思もない」としている。

その一方で、「何の根拠もなく、三浦九段を黒だと誹謗中傷した」「これは竜王戦の挑戦者から、三浦九段を追い落とすための陰謀である」などとった、渡辺竜王に対する「誤解を解くことが目的」としている。

その上で、「日本将棋連盟は、第三者の意見を聞くことなしに早まった処分をすることの危険性を十分に認識したはずである」「統計の専門家などを加えての調査が必要であると信じる」「第三者委員会と日本将棋連盟は、一致率等について資料の公開をすべき」と提起した。

■文書公開後、Twitterなどで「怪文書」と物議

26日に大山弁護士の文書が公開されると、Twitter上では「騒動を出発点に戻す、第2ラウンドの鐘を鳴らすような怪文書」「三浦九段の名誉回復を阻害するような記述も」などと、物議を醸した。

また翌27日には、佐藤会長と井上慶太・新常務理事以外の全専務理事・常務理事の解任が議題となった棋士総会が予定されていたため、「なぜこのタイミングで?」という声もあった。

また、大山弁護士が文書中で紹介した、ソフトと指し手の一致率を示すPDF資料の中には、作成者が「渡辺明」のファイルがあったことも、様々な憶測を呼んだ。

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大山弁護士の文書で紹介されていたPDF資料の情報(一部、加工しています)

大山弁護士の文書は26日中に削除された。

■渡辺竜王がブログ更新

大山弁護士による文書について、26日に渡辺竜王は自身のブログ内で言及。「小暮さん自身が非難されている中で私をかばってくれるという心意気は有難いと思いました」「その当時に何を信じたのか、と聞かれたので以前からあった資料は出しました」と記した。

その上で、「ただそれにより、不愉快な思い、ご迷惑をお掛けして申し訳ありません」としている。

また、27日の「臨時総会のことも含めてまた書きます」と綴っている。

昨日、出た文書について。小暮さん自身が非難されている中で私をかばってくれるという心意気は有難いと思いましたし、その当時に何を信じたのか、と聞かれたので以前からあった資料は出しました。ただそれにより、不愉快な思い、ご迷惑をお掛けして申し訳ありません。
明日の臨時総会のことも含めてまた書きます。

2017年2月27日のブログ記事一覧-渡辺明ブログより)

【UPDATE】報道目的のために当初、声明を全文掲載していましたが、非公表となった理由が不明なこともあり、全文については掲載を見合わせました。非公表とした理由について弁護士事務所に問い合わせています。(2017/02/27 17:49)

【UPDATE】弁護士事務所から「抗議のメールや電話が多数あり、業務にも影響があったので、依頼者にも了解してもらい削除した。依頼者のことを考えても、全文公開は躊躇する」と回答がありました。ハフィントンポストは、事務所側の削除理由を踏まえ、全文の掲載を見送りました。(2017/02/27 19:10)