オバマケアに救われた家族と、苦しんだ家族。共和党は医療制度をどう変えたいのか

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【ノースカロライナ州ローリー】ジェニファーとキース・ギブス夫妻は、医療保険制度改革法「アフォーダブル・ケア・アクト(ACA)」、通称オバマケアによって保険料が値上がりし、自己負担分が増加したことから逃れられず苦しんでいる。

一方、クレアとアレン・シクリスト夫妻は、自分たちと幼い娘にとって、家計を破壊することなく、人生が変わるほどの医療が受けられたのはこの制度のおかげだと言う。

この2つの家族は、30マイル(約48km)離れたところに住んでいて、お互いに面識はない。しかしこの2つの物語は、2010年の医療保険制度改革が、どのように「勝者」と「敗者」の両方を創り出したかを教えてくれる。そして共和党が提出したオバマケア撤廃法案が、この2つの家族にどのように関わってくるのかを示している。


保険料は値上がりした。そして値上がりは止まらなかった

ギブス夫妻は40代で、10代の2人の娘がいる。キースさんは医療品とバイオテクノロジーの会社向けのコンサルティング会社を数年前に立ち上げ運営している。家族との時間が増えると思ってのことだ。ジェニファーさんは非営利団体のパートタイムの仕事で、元受刑者の援助をしている。小綺麗に飾られた2階建ての家は、急速に発展している地区にあり、「リサーチ・トライアングル」として知られる、都市圏で働く人に人気のエリアだ。

この家族は雇用主を通してではなく、自分たちで支払う形の医療保険に加入している。2013年、ACAの主要な法律が施行される前は、ノースカロライナ州のブルークロス、ブルーシールドといった医療保険に7200ドル(約80万円)を支払っていた。ギブス家が利用していたこの保険制度は、補償内容が比較的幅広いものだった。雇用主用の保険には大抵含まれているが、個人向けの保険にはあまり含まれていない入院中のリハビリサービスといった補償も含まれていた。

しかしこの保険プランが安かったのには理由がある。精神疾患の補償が限られていて、出産に関する補償は全くなかった。また生涯で補償される金額の限度が決まっていた。すなわち、ギブス一家の誰かが長期の集中治療が必要な病気(例えば進行性のがん)にかかったとしたら、医療費が限度に達し、それ以上の医療費を支払うために苦労することになっただろう。


2013年にノースカロライナ州で個人向け保険に加入しようとした人のうちの約25%の人が却下されている。HealthPocket.comの調査による。

一番重要なのは、ブルークロスは、皆保険ではなかったことだ。当時、ブルークロスも他の保険会社と同じように、「医務査定」をしていた。これにより、保険料を値上げしたり、補償を保留にしたり、病歴によって病気になる確率が高い人の補償を却下したりすることもありうる。2013年にノースカロライナ州で個人向け保険に加入しようとした人のうちの25%が却下されている。これは、HealthPocket.comの調査による。この数字は、もし加入しようとしていたら断られたとみられる人の割合を低く評価している。持病がある人の多くは、保険に申し込んでも無駄だと分かっていたからだ。

当時、保険会社が保険料の値上げや、補償適用除外、その場での補償拒否を正当化するために挙げていた既往症のリストの中には、クローン病(炎症性腸疾患の一つで。主に腸管に慢性の炎症や潰瘍が起き、腹痛や下裏発熱などの症状を伴う)、癌、糖尿病、てんかんなど、ありとあらゆる病気が含まれていた。当時のこの基準では、人口の約27%が、保険加入の資格なしとされる既往症を持っていることになった。これは、ヘンリー・J・カイザー・ファミリー財団の2016年12月の調査によるものだ。この調査によると、ACA以前に個人向け保険に加入しようとした人のうちの約17%が却下されたという。

ACAの消費者保護、特に既往症に対する補償の規約が、この制度の最大の売りの一つだ。ACAが施行されたことで、医療保険料はかなり値上がりした。これは、今まで補償しなくてもよかった人たちの莫大な医療費を補償するためだ。

ブルークロスが新料金を発表した際、同社は加入者に次のことを伝えた。ACAの支援を受けるとすると、現加入者の約3分の2の人の保険料は、今と同じか、値下がりする。3分の1の人は「大幅な値上がり」に直面するだろうということだ。事前に用意された声明の中で、ブルークロスの保険計理官は、次のように説明した。この制度は「今まで加入できなかった多くの人が利用できるようになり、多くの加入者への補償を強化します。これは素晴らしいことですが、それには費用がかかります」

ギブス一家の保険料は年間9600ドル(約106万円)に値上がりした。大幅な値上がりだが、法外とは言えない。しかしその1年後、ブルークロスは、この保険自体を中止した。ジェニファーは、政府が運営するオンライン健康保険サイト「healthcre.gov」で加入を申し込み、ユナイテッドヘルスケアというプランを見つけた。しかしこのプランの料金は年間約1万2000ドル(約133万円)だった。ジェニファーさんによると、1年後にまた値上がりした。

国内の多くの保険会社と同じく、ノースカロライナ州の保険会社も市場を大きく見誤った。健康な人の加入者数は、期待していた数を下回り、新しく加入した人の補償額が予想を上回ったことで、莫大な損害が発生した。2016年、ユナイテッドヘルスケアはノースカロライナ州から撤退し、ノースカロライナ州のほとんどの地域で残った保険会社は、たった1社だけだった。

ジェニファーさんは「healthcare.gov」に逆戻りとなった。以前と同じような補償がある保険料は、年間で2万ドル(約220万円)近くしたと、彼女は話す。これは住宅ローンを超える金額だ。それに、補償内容には、大きな病気や怪我が起こった場合の1万ドル(約110万円)ドルを超えるかもしれない自己負担額は含まれていなかった。それより安価な選択肢は、医師不在のネットワークなどだった。また「ブロンズプラン」になると、自己負担額がさらに大きくなる。

「私たちにとって2万ドルは大金です」と、ジェニファーさんは言う。家族が生活ができなくなるわけではないが、別の部分を節約したり諦めたりしなければいけなくなっただろう。外食や、家族旅行、自家用車のうちの1台(この家族は同じミニバンを13年間使っている)の買い替えなどだ。最終的にこの家族は、「小企業プラン」の対象となる方法を見つけ、ブルークロスから直接購入した年間保険料1万6000ドル(約178万円)の保険に加入した。ACA以前の保険料と比べるとかなり高い保険料だ。

ジェニファーさんは、自分の家族がいろんな意味で恵まれていると思っている。娘の1人の喘息を除いてはみんな健康だからだ。彼女はACAが目指そうとしていることに強く賛同している。「保険に入るお金がなくても、保険には加入できるべきという考えに賛成です。こういうことは絶対に政府が提供すべきものです」と、彼女は言う。しかし彼女は、トランプ政権が「保険について間違った方向に向かっている」と感じている。「これほど私たちに影響があるとは思ってもいませんでいた」と、彼女は話した。


補償してもらえなかったはず

シクリスト一家は、ノースカロライナ州ローリー・ダーラムの反対側のタウンハウススタイルのアパートに住んでいる。この地域の幹線となるハイウェイに沿った開発の一環として建てられたアパートだ。この家のリビングは、小さい子供がいる若い夫婦の生活感が溢れている。床に積まれたCDや、壁にあるクレヨンの落書き痕が見られる。

シクリスト一家が支払う保険料はギブス一家よりも少ない。またギブス一家よりも保険に依存している比重が大きい。2013年、クレア・シクリストさんは妊娠し、妊娠高血圧腎症を発症した。出産は難産で骨盤に重い損傷を起こし、出血多量で輸血を必要とした。その後、クレアさんには手術とリハビリ、多くの薬が必要だった。夫妻の3歳の娘、ホリーちゃんは生まれた時から深刻な病気と闘っている。網膜芽細胞腫、いわゆる「目のがん」などだ。最終的に、医者はホリーちゃんの片目を義眼と取り換えなければならなかった。アレンさんはアレンさんで、皮膚がんにかかりやすい先天性の疾患があり、年に2回の生検を含む、継続的な診察が必要だ。

クレアさんが妊娠していた時、シクリスト家は、当時アレンさんがテクニカルアシスタントとして働いていた病理学研究所を通して雇用主の保険に加入していた。クレアさんの出産後、アレンさんは一連のレイオフ(一時解雇)により職を失い、それに伴って家族は保険も失った。ホリーちゃんは、子供の健康保険プログラムのノースカロライナ州版の加入資格を満たしていた。このプログラムは連邦と州が運営していて、比較的所得が低い家庭に住む子供のためのプログラムだ。その後の2年間は、アレンさんはレストランのデリバリー「グラブハブ」社でドライバーの仕事をするかたわら、他のアルバイトもした。クレアさんは図書館学の資格を得るための勉強をしながら、学校向けのテスト会社で働いた。そして夫妻はACAを通して保険に加入した。


クレア、ホリー、アレン・シクリスト一家には、ACAが提供しているものと同等の経済支援が必要だ。

当時、この夫婦の年収は合わせて約3万ドル(約330万円)。幅広い補償のある医療保険には到底手が出ない。必要な食費、賃貸料、ガソリンだけで、収入の大半を使い果たしてしまう。しかし彼らはACAの税額控除対象に該当していた。この税額控除は、政府が彼らの保険料を値下げするために、前もって適用したものだ。この制度では、低所得の人や保険料が高額な人には税額控除が多くなるように構築されている。シクリスト一家のような家族、低所得で保険料が高額という両方に当てはまる家族には、年間で1万ドルほどの補助となる。

シクリスト家の収入だと自己負担分の補助金対象にも当てはまる 。これもまた金銭の補助で、連邦政府から直接保険会社に支払われた。結局、クレアさんが言うには、年間で医療にかかった費用は3000ドル(約33万円)以下だったという。現在も治療中の多くの病気があるにも関わらずこの金額だった。もしこのような補助がなければ高額になっただろう。

補償は、完全というにはほど遠い。シクリスト一家が1年目に加入していた保険会社「コベントリー」は、クレアさんの手術の保険補償を拒否し続けた。その翌年に加入していた保険会社の規約には彼女が産後鬱が原因で通っていたセラピストの補償が含まれていなかった。しかし、この家族に必要だったその他のすべてのドクター、近くのデューク大学医療センターの専門家も含め、この保険補償に含まれていた。何よりも、いろいろな場所で支払った少額の自己負担分を除いては、この保険がほとんどの医療費を補償してくれたと、クレアさんは言う。

この補償は「とても役に立っている」とクレアさんは言う 。このように思う人は極めて多いが、ACAに批判的な人はそれを認めようとしない。国民基金カイザー財団のアンケートによると、ACAから個人向けの保険に加入している人の大多数は満足しているという。そして補償の状況は良くなっているようだ。治療へのアクセス改善医療費の負担軽減などが過去2年間複数の調査で報告されている。

もし今ある保険がなかったら、「今のようにまともな健康な状態を保てていなかったと思います」と、クレアさんは言う。「地域の保健センターで、予防接種なども受けようと思っています。本当に、この保険がなかったら、すごく困っていたと思います」

共和党のオバマケア撤廃法案の核心は、ジェニファーさんとキースさんのようにアフォーダブル・ケア・アクトに苦労している人々の状況を改善するという約束だ。「オバマケアの犠牲になった多くの人を目にしてきた」と、ドナルド・トランプ大統領は3月15日のテネシー州、ナッシュビルの演説で訴えた。「私たちはオバマケアにとって代わる新しい制度を導入し、みなさん、そしてみなさんの家族にとって、ヘルスケアの状況が良くなることを目指していく」

実際にオバマケアが撤廃されたら大きな混乱が起きるのではという懸念がある中、共和党はシクリスト一家のように、現在の保険制度に頼っている2000万人の人々にも約束した。「誰一人として、経済的に今よりも悪くなる状況にはさせません」と、トム・プライス厚生長官は18日のインタビューで強調した。

共和党にこの約束は果たせない。その理由は単純だ。共和党はこう主張している??オバマケアが施行されたことで、ギブス一家のような家族の保険料は値上がりした。そして結果的に、多くの国民の税金が費やされた、実際には国民のためになっていない。

この主張はおおむね間違ってはいない。しかし不十分だ。具体的に言えば、これと同じ制度、そして同じ政府の資金で、シクリスト一家のような家族に適切な補償が手の届くものとなった、という事実が抜けている。共和党が提案しているように、この制度と資金がなくなれば、ギブス一家のような家族は、自分たちの生活が良くなると思うかもしれない。しかし、シクリスト一家のような家族は、確実に困ることになる。

オバマケアの代替法案「アメリカン・ヘルスケア・アクト」(AHCA)はその典型例だ。AHCAが施行されたら、ギブス一家のような家族の保険料負担は減ることになるが、その代わり、受けられる補償が縮小されるところだった。またこの家族は、代替法案で新たに実現する莫大な税額控除の恩恵を受けられた。しかしシクリスト一家のような家族は、自分たちに必要な広範囲の保障が得られる保険を探すのに苦労していただろう。もし見つけることができたとしても、自分たちで支払う余裕はなくなる。おそらく彼らは保険未加入の状態になり、必要な医療を受けるのに大変な苦労をしていたはずだ。

オバマケアの「勝ち組」を困ることなく「負け組」を救う道はある。しかし共和党の代替法案は、共和党が思い描くものとは違う形の選択肢と代償を伴うことになっていた。


代替法案が施行されたら、こんな「勝ち組」と「負け組」が生まれていた

アメリカン・ヘルスケア・アクト(ACHA)、あるいはこれと同等の制度が採用された場合、すべてが変わっていただろう。

共和党はACAが提供する経済援助を変えたがっていた。共和党が狙っていたのはACAの税額控除の廃止。ACAの税額控除は、低所得の人や高額保険料を支払う人により多くの援助をするが、共和党は、これを高額所得者を除いたすべての人が利用できる一律の控除に置き換えようとしていた。この場合、年齢によってのみ控除額が変わってくるが、年配の加入者が支払う高額な保険料に見合うものではない。ACAは自己負担分への援助もしているがAHCAになると廃止される。

また共和党は、ACAの規約を除外、または縮小しようとしていた 。保険会社が少額の医療費を補償することを認めたり、精神的疾患などの補償を廃止したりしようとしている。現制度で定められている(好評な)持病がある人の補償も対象だ。共和党は持病がある人の補償について「継続加入」を続ける人のみ適用すべきだと考えた。医療保険制度改革では、63日間以上保険を失効させた人は、30%の保険料値上げの対象になるとしている。しかしこの規約も共和党の保守派が見直しを要求している項目の一つだ。

共和党が盛り込みたいと言っていたすべての規約が代替法案に盛り込まれているわけではない。これらの規約を盛り込んだ場合、予算調停を通して現制度の廃止を推し進める過程が複雑になるからだ。この予算調停では、民主党の同意なしに法案を通過させることができる。しかし新しい制度では、健康でない人に経済的ペナルティを課すことで、健康な人が保険に加入することを奨励する個人向け規約をすぐに廃止するだろう。このような理由から、連邦議会予算局(CBO)は、共和党の提案を実行するとしたら、最初の2年間は実際に保険料が値上がりすると予測した。

しかしこの後で、CBOは、補償範囲が比較的狭いプランが市場の中心になるだろうと予測した。しかし年配の人は、この制度の下では、補償範囲が狭まり、保険料は上がるということに気づき、保険の加入自体を辞めてしまうだろう。その結果、値上がりは緩やかになり、最終的にはACAがそのまま残った場合の保険料より安くなるだろう。共和党が、大統領令や将来の法案を使うなりして、現制度を弱体化させることができれば、保険料はさらに値下がりする 。これは共和党が公約に掲げていたことだ。

それでも、今すぐには、ギブス家のような家族の負担が減るだけの資金は捻出できない。しかし時間が経てば、ACAが今のまま残った場合の保険料よりは値下がりすることになる。もちろん、自己負担額は上がることになるし、もし大きな病気や怪我があったら、その負担は大きくなる。


ヘンリー・ジェイ・カイザー基金

ギブス一家にとって大きな節約となるのは、政府からの補助金の変更からくる。ギブス一家はACAの経済援助の対象となる年収を少しだけオーバーしている。だからこの家族は全額を支払っている。しかしこの家族は共和党の代替法案では税額控除対象に入る。この対象は収入に関係なく全員が対象となるからだ。子供2人(子供1人につき2000ドルの補助)、夫婦2人(1人に付き3000ドル)、この家族が払う保険料の金額に関係なく、合わせて年間1万ドルの補助が出る。

共和党の法案では、この家族の他にも多くの国民が、今までACAのもとで得ていたよりも、税額控除が増えることになる。その中には、現在ほとんど援助を受けていない人で保険料を払うのに苦労をしている人たちも含まれる。共和党の法案では、より加入しやすい保険料となる。しかし、繰り返し言うが、補償の範囲は縮小される。

シクリスト一家のような家族には、これらの移行が全く違った影響を及ぼすことになる。このような家族には、ACAが提供しているような経済援助が必要だ。この経済援助を共和党は取り上げてしまう。共和党の法案では、ジェニファーさんとキースさんより若干若いアレンさんとクレアさんを対象とした補助は、1人につき2500ドル(約27万円)、2人で5000ドル(約54万円)となる。これは、この夫婦が利用していた1万ドル近くあったACAの補助を大きく下回る。

この家族が今と同じような補償をしてくれる医療保険に加入しようとする場合、おそらく年間の保険料は6000ドル(約67万円)くらいになる。これは今支払っている金額の2倍から3倍になり、この家族が支払える金額ではない。ACAが廃止されると、自己負担額の特別補助もなくなるのでなおさらだ。

補償の幅が狭い貧弱な保険は、安価だ。保険会社の規約が弱体化すれば、市場に出回る医療保険はこの保険1種類だけになるかもしれない。しかし医療ケアを頻繁に利用しなければならないシクリスト一家には、自己負担額がさらに増えることになり、共和党が主張するところの、オバマケアが全国民に与えたという「使えない」医療保険とまったく同じ負担をこの家族に課すことになる。

シクリスト一家にとって、他の選択肢の可能性があるとすれば、「ハイリスク・プール」(州政府が運営する、既往症のために健康保険。既往疾患を持っているために保険料が高すぎて民間保険に加入できないハイリスクを抱えている人のための保険)と呼ばれているものだ。 これは特有の保険プログラムで、共和党の法案の下、州政府が重い疾病を抱える人を助けるために用意される。ハイリスク・プールはACA以前にも存在していたが、加入者がほとんどいなかった。これは、限られた資金が州の加入の足かせとなったためか、補償自体があまり人を惹きつけるものではなかったという理由だろう。ノースカロライナ州にはこのようなプログラムが1つ存在した。普通の保険料の2倍にもなる保険料で、加入してから1年間は持病に対する補償は支払われなかった。

このような選択肢に直面すれば、シクリスト一家はおそらく同じような経験をした家族が選んだであろう道を選ぶことになる。保険以外のことに優先的にお金を回し、保険に入らないで、何も起こらないことを願う。AHCAが施行された場合、10年以内に保険未加入者が2400万人増加するとCBOが予測する理由の一つがこれだ。


オバマケア撤廃の代替案

共和党の代替法案の目的は、個人向け保険市場をオバマケア以前の保険料のようなものに立ち戻らせることだった。そのことでオバマケア以前の補償内容も受け入れることになり、結果、シクリスト一家のような家族を見捨てることになるとしてもだ。しかし、これが唯一の選択肢というわけではない。州政府と連邦政府の官僚には保険料や自己負担額に苦しむ家族を助ける効果がある。現制度がこのような人たちにとって重要な意味を持つ補助をしてきたのと同じように補助をすれば、このような家族が困ることはない。どの保険補償を選択するのかを正し、正しい代償を受け入れればいいだけの話だ。

ギブスさんの保険料がこれほど値上がりした理由の一つは、たまたまノースカロライナ州に住んでいたことだ。ノースカロライナ州は、個人向けの医療保険料が国内で最も高い州だ。例えば、ギブスさんがデトロイト市近郊に住んでいたとしたら、同じような保険に年間1万1000ドル(約122万円)から1万4000ドル(約155万円)くらいで加入できたはずだ。ノースカロライナ州の問題は、多様な要因を反映している。一つにはノースカロライナ州が田舎の州という立場にあるということだ。田舎地域は、保険会社にとって常に難しい場所だ。料金の交渉をするために、医者や病院同士を競合させることができないからだ。

しかし、ノースカロライナ州の問題の中には、州の政治家の決定により直接引き起こされたものもある。主なものでは、共和党議員が決めたメディケイド(州が運営する低所得者向けの医療補助制度)拡大の撤廃がある。これにより健康でない人がノースカロライナ州の個人向けプランに流れ、保険料の値上がりを招いた。メディケイドを拡大するだけで、市場の安定に役立ち、保険業界は前進し、保険料の値上がりにストップをかけられただろう。同じことが他の州でもいえる。アリゾナ州やテネシー州も同じような問題に直面していた。全体で見てメディケイドを拡大した州での保険料は拡大していない州よりも7%低くなっている。人口統計などの要因を管理する保険福祉省による情報だ。

国レベルでは、政府が保険料が高い加入者にかかる保険会社の費用を賄う補助金を提供すればいい。そうすれば、保険会社が加入者に高い保険料を請求しなくてもよくなる。ACAには、もともとこの部分を補うために考案された2つのプログラムがあった。しかしどちらも一時的なもので、そのうちの一つは支出した費用を取り返すことができなかった ー その理由はマルコ・ルビオ上院議員(当時はフロリダ州下院議員)率いる共和党が、このプログラムを「救済措置」だと攻撃して、ロビー活動を駆使し、このプログラムの財源を差し止めたからだ。

一時的であれ恒久的であれ、これらのプログラムを復帰させれば市場の安定に役立ち、保険料値上がりにストップをかけられる。AHCAの数ある規約の中で比較的大きな変更をしている法案の部分に、このような規約が実際に盛り込まれていることが分かった。これは「州と患者の安定」の基金で、州が保険再加入のために使える資金で、その他のことにも使える。再加入により、本質的には保険会社がお金のかかる受給者に支払う高額な補償を補填することになる。

もっと簡単で直接的な解決法としては、現制度の経済的支援を拡大し、もう少し多くの人を対象にすることだ。これは実際にACAを構築した人が最初に考えていたことだ。初期段階の法案では、もっと寛容な税額控除を見込んでいて、もっと時間をかけて段階的に減らしていくことだった。そうすることで収入が多い人もこの控除の対象となるように考えていた。今この財源を出すことで、多くの家族の保険料支払いや自己負担分の足しになるだろう。加入者を増やすにはそれで十分だろう。以前そうであったように、みんなの保険料が下がることになるだろう。

この方法での利点の一つは、医療保険の世界にある「勝ち組」と「負け組」という分類は流動的なものだと認識されることだ。健康な人も病気になる。若い人は年をとる。共和党の案が通過すれば、補償が縮小されることで保険料を節約した人が、後になって自己負担額が増えることで、結局は多く支払うことになる。

政策として、法案としての複雑な要素は、これらの段階にはさらなる国の支出も必要になってくるということだ。 つまり、保守派が正確に指摘しているように、アメリカの納税者のさらなる負担になる。ACAは、実際には予算内で収まったが、予算がすでに割り当てられていたという議論はある。連邦政府には他の部分で支出を抑えるという方法もある。またヒラリー・クリントン氏が大統領選で提唱していた方法も使える。富裕層へ課税を上げることで新しい補助金を捻出するという方法だ。

どちらにしても、これらの段階を踏むために、まずはオバマケアを残すことに同意すべきだ。共和党はこれには同意していない。しかし現存する医療保険制度をさらに強化する方が、撤廃してしまうよりも望ましい選択肢と言える。現制度に満足していない人たちにとってもだ(ギブス一家も含めて)。「私は、ACAに賛同しているんです。今ここで保険料に不満をもらしている私が言うのも変ですが」と、ジェニファーさんは言った。「絶対に必要なものだと思います」

ハフィントンポストUS版より翻訳・加筆しました。

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