世界に衝撃を与えた「パナマ文書」わかりやすく解説すると… 

日本では31億円の申告漏れが判明

地中海のマルタ共和国で10月16日、パナマ文書をもとに政府を追及していた女性ジャーナリスト、ダフネ・カルアナ・ガリチアさん(53)さんが自動車に仕掛けられた爆弾で殺害された

世界中に衝撃が広がっているが、そもそも「パナマ文書」とはどんなものか。ポイントをまとめた。

■タックスヘイブンを通した取り引きを暴露

パナマ文書を公開しているサイト

パナマ文書とは、パナマの法律事務所「モサック・フォンセカ」から流出した膨大な量の内部文書だ。南ドイツ新聞が匿名の人物から入手し、国際調査報道ジャーナリスト連合(ICIJ)とともに分析して、2016年5月に21万以上の法人と、その株主らの名前を公表した

ニューズウィーク日本版によると、パナマ文書はモサック・フォンセカの40年に渡って記録した1100万件以上の文書の電子データだ。世界各国の首脳や富裕層が、英領バージン諸島、パナマ、バハマなどを初めとしたタックスヘイブン(租税回避地)を利用した金融取引で、資産を隠した可能性を示していた。

内部リークの可能性も指摘されているが、モサック・フォンセカは「外部からのハッキングで流出した」と説明。違法行為への関与も否定していたが、2017年2月には経営者のモサック氏とフォンセカ氏がブラジルの汚職事件に絡むマネーロンダリングでパナマ検察当局に逮捕されたと報じられた

■アイスランドとパキスタンでは首相辞任

アイスランドのグンロイグソン首相(左)と、パキスタンのシャリフ首相

パナマ文書のデータ量は、2.6テラバイト(2600ギガバイト)に上る。iMacの最高級モデルのハードディスク容量が3テラバイトなので、それに匹敵するデータ量だ。

タックスヘイブンにある21万以上の団体の情報が記載され、分析の結果、各国の首脳や首脳経験者12人を含む政治家など140人がタックスヘイブンを利用して金融取引などをしていた。

その中の1人、アイスランドのグンロイグソン首相は2016年4月に辞任した。彼は2008年のリーマンショックで自国が金融危機に陥るなか、夫婦で株主に名を連ねるタックスヘイブンのイギリス領バージン諸島の企業を通じて、国内の銀行の債券を数百万ドル(日本円で数億円)保有していたとパナマ文書に記載されていた。首相退陣を求める数千人規模の抗議デモが起きていた。

パキスタンのナワズ・シャリフ首相も2017年7月に辞任した。シャリフ氏はパナマ文書で、息子や娘がタックスヘイブン(租税回避地)に会社を持っていたと指摘され、資産隠しに関与していた疑いが浮上。野党が最高裁に調査を申し立てた結果、最高裁判所がシャリフ氏が下院議員資格が無効だとの判決を下した。シャリフ氏が審理であいまいな説明に終始したことで、議員としての説明責任を果たしてないと判断した模様だ。

このほか、ウクライナのポロシェンコ大統領、サウジアラビアのサルマン国王などもタックス・ヘイブンを利用していたと指摘された。ロシアのプーチン大統領の古くからの友人も、バージン諸島に設立した企業を通じて、少なくとも20億ドル(日本円で2200億円)に上る金融取引を行っていた。

このほか、中国の習近平国家主席の義兄がバージン諸島に2法人を設立していた

■日本では31億円申告漏れが明らかに 国税当局が調査

朝日新聞デジタルによると、パナマ文書で株主などとして挙げられている延べ約37万の人や企業の住所地のうち、最も多いのは香港の5万4065、次いでスイスの4万2531、中国の2万8755と続いている。日本は439で全体では65番目だ。

また2017年6月までにパナマ文書に名前があった日本関連の個人や法人について、日本の国税当局が調査を行い、所得税など総額31億円の申告漏れがあったとも報じている

この中には、携帯電話・OA機器販売会社「光通信」(東京)の重田康光会長が、パナマ文書に記載された英領バージン諸島の法人の株式譲渡をめぐって約3億7000万円の申告漏れを指摘された事案も含まれていたという。

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