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「飲食業界だけが取り残されている」トレタ 中村仁はテクノロジーで異業種にどんな革新をもたらすのか?

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飲食店向け予約システムを手掛けるトレタの中村仁さんへのインタビュー。「飲食業界だけがITから取り残されている」と語る同氏の事業に掛ける思い、そして既存業界をテクノロジーでイノベートするために必要な要件、その領域で活躍できる人材とは?


■ 飲食業界×テクノロジー

テクノロジーを使って異業種にイノベーションをもたらす企業特集第3弾。

※ラクスル、日本交通のインタビュー記事はこちら。
▽エンジニア・クリエイターが、WEBでビジネスの仕組みを変えていく。 ─《ラクスル》松本恭攝氏に聞く。
▽エンジニアが語る開発秘話。老舗タクシー会社《日本交通》は、なぜ90万DLのアプリを自社開発できたか?

今回お話を伺ったのは、『飲食業界』を舞台にテクノロジーを使って革新を試みる中村仁さん。入力予約件数が30万件、登録人数200万人突破した飲食店向け予約台帳アプリ《トレタ》を手掛ける人物だ。

大手電機メーカー、広告代理店勤務を経て、飲食店を自ら開業した経験を持つ彼は、飲食店を取り巻く環境のどこに問題意識を持ち、いかに解決しようとしているのか?そして、既存業界にテクノロジーでイノベーションを起こすために必要な要件、その領域で活躍できる人材とは?

[プロフィール]
中村仁 Hitoshi Nakamura
パナソニック、外資系広告代理店を経て2000年に西麻布で飲食店を開業。立ち飲みブームの火付け役となった「西麻布 壌」や「豚組」などの繁盛店を次々とプロデュース。2011年、料理写真共有アプリ「ミイル」をローンチ後、2013年に飲食店向け予約システムの開発を手掛ける(株)トレタを設立。2014年6月にはWiLより2億円の資金調達を実施。数々の飲食店向けセミナーの講師も務める。


■メーカー、広告代理店出身者が飲食業界に入ったワケ

― 中村さんのご経歴は異色ですよね。もともと飲食業界に入ったきっかけは何だったんですか?

僕は基本的に、周りに流される人間なんです。実は飲食店をやりたくてやったというよりも、飲食店をやる流れになったので、気が付いたらこの業界に入っていたんです(笑)。

飲食業界では最初から失敗ばかりしていました。当初、フリーで広告関連やマーケティングなどの仕事を請けていて、2足のわらじを履きながら飲食店を経営していたのですが、8ヶ月目には立ちゆかなくなって。

もともと自分がやりたくて始めたわけではなく、全く力を入れてこなかった結果でした。ただ、このままじゃ終われない。もう一勝負しようと、借金を負って店舗をリニューアルしたんです。すると右肩上がりに売上が伸びて、安定的に成長できるようになってきました。

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― 店舗をリニューアルしただけでは、そううまくはいきませんよね。どんなことに注力したんですか?

一言で言うと、価格ではなく、価値にこだわったんです。料理、ドリンクのメニューを全部変えて、とにかく自分たちが自信を持って出せるものを適正な価格で売る。お客さんに徹底的に満足してもらうように、価値のある物をそれにふさわしいお得な価格で出そうって。

― その後、立ち飲みブームの火付け役となった店舗や「豚組」などを次々とプロデュースされます。そこからなぜ、料理写真の投稿アプリ『ミイル』を創業されるなど、ITの領域を手がけ始めたのでしょうか。

10年近く飲食業界に身をおいて、業界全体の問題やグルメサービスに対する危機感とか問題意識を以前から強烈に持っていていました。

そんな時、経営していた店舗にエンジニアやデザイナーなどを職とするテクノロジー系の人がTwitterをきっかけに集まるようになって、IT系の知り合いが増えたんです。そういう人たちと交流してその課題意識を話すと、賛同してくださる人が多かったんです。それまでは単なる飲食店経営者だったんですが、問題意識と応援してもらえる環境がちょうど揃ったので、じゃあその課題解決にとりくんでみようと。それでミイル、そしてトレタ、と「食とテクノロジー」の接点みたいなところに軸足が移ってきた感じです。


■ 現場を熟知して芽生えた、飲食業界に対する問題意識。

― 飲食業界に対する課題意識とはどんなものなんでしょうか?

一言で言うと、お店からすると「常連客」、お客さんからすると「行きつけのいいお店」が激減していることですね。というのも、飲食店って、常連さんができて始めて経営が安定し、利益も堅調に出るようになるものなんです。

少し前まで、「いいお店」を見つけることはすごく大変でしたよね。リアルな口コミでお店を知ったり、ふらっと入ったお店がとても気に入ったり。そうすると、すごく大事に通うわけです。良いお店と出会うことはすごく貴重な体験だったし、また行こう、常連になりたいと思う。お店にファンがついて、そのファンがお店を育ててくれるっていう構造があったんです。僕自身、業界で身を持って実感したことは、「店が育つには時間がかかる」ということなんです。

Webサービスみたいにリリースして、速いサイクルでイテレーションを回してどんどん改善するということはできません。春夏秋冬の食材を一回り使うだけで1年かかるわけですから。投資したお金も結構大きいので、5年10年かけて回収することも珍しくありません。

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一方で、情報が氾濫している今。調べれば、昨日オープンしたお店が今日出てくる。レビューもあるけど、オープンした当初のレビューなんて読んでもアテにならないんですよね。店員のオペレーションも小慣れてなければ、才能のある人がお店を出したって最初のお店の印象は良くないです。ただ、その時の評価が絶対的なものとして残ってしまいます。

また、「良いお店」というものも「平均点」という括りでいくらでも簡単に見つかりますよね。出会い、体験に対する貴重性が希薄化しているんです。お店サーフィンじゃないけど、高い評価のお店を片っ端から回るような消費の仕方ができるようになって、お気に入りのお店に通うっていう行為が以前に比べて全然ない。

そうすると、いろんなことが不健全になっていく。飲食店はどうしても新規のお客さん偏重の来店施策としてクーポンを乱発して集客しようとする。お客さんの方は「通う」っていう行為が減って、初めて行く店にどんどん行く。

新規偏重は焼畑農業。なかなか経営も安定しないし、営業の質も上がっていかない。これではお店は疲弊します。


■ 技術、デバイス、リテラシーの成熟で機は熟した。

― そういった課題をテクノロジーで解決しようと。

そうです。ミイルとトレタは表裏一体。同じデータ、同じ行動をお客さん側、お店側から収集するツールです。

ミイルの写真を撮って投稿するというものはチェックインの代替。投稿する写真にお店をタグ付けることで、ユーザーの来店回数が分かる。また、写真を投稿するという行為は少なくともそのお店のことを気に入ってるはずなんです。不満に思っているお店の料理をきれいに撮影して投稿なんてなかなかしませんよね。純粋に、美味しいなどのポジティブな感想からうまれる投稿が、スクリーン越しに出てくる。そうするとお店のファンが見えてくるし、その人たちが投稿する写真は、周りからしても貴重な良いお店情報になっていくはずだと。

一方でトレタはお店向けの予約システム。予約台帳がそのまま顧客台帳になるものです。日時でまとめたデータではなく、個人別にデータでクラウドに蓄積して、お店に提供しています。お客さんの来店行動を予約という形で全て捕捉すると、「この人は何回目だ」というものが分かる。お客さんの名前から、どんなものを好んで頼んだかといった情報が入っていくわけなので、お店側からすると来店の数が100%予約になれば、そのお店に来店されるお客さんの個人情報がすべて予約台帳に蓄積されているはずなんですよ。

― つまりCRM、顧客関係管理を飲食業界でもしっかり導入しようと。

その通り。これが実現すると、入ったばかりのスタッフでも、「この人は三回目の来店なのか」とすぐに分かって、「いつもありがとうございます」という一言も言える。「前回はこれを召し上がってますが、いかがでしたか?今だと似たような感じでこれがお勧めです」というきめ細やかな接客も可能になります。

ただ今まではこれをやろうと思っても、技術的な部分やデバイス、実際にトレタを使うお店の人たちのリテラシーの成熟度の点で難しかった。しかし、iPadなどのタブレットが普及したことで、お店のスタッフも直感的にアプリを使えるようになり、クラウドの技術も劇的に進歩しています。

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そして肝となるのはWeb予約です。どんな人でもスマホを持つ時代、スマホを電話として使うのって飲食店の予約の時くらい。それはあまりにイビツ。飲食業界だけITから取り残されているんです。

というのも、飲食店の予約管理はほとんど紙で行なわれているんです。そこを解決するためにも予約情報をデータ化してクラウドに送るっていう最初のハードルを超えないといけない。そこをクリアしなければWeb予約はいつまでも普及しないでしょう。


■ toC出身者こそ、toBで活躍できる。

― それでは最後に、既存業界を変えるための要件、そしてトレタのようにBtoBの領域で活躍できる人材のポイントがあれば教えてください。

やはり『IT×〇〇』の〇〇となる業界のいろはや構造を身を持って理解していることは、一つ強みになると思います。

現場を知っていると、解決したい問題に対する熱量、事業に対する思いはとてつもなく大きいです。プロダクト面でも、トレタを実際に使ってもらう飲食店のスタッフの気持ちや状況がわかるから、すぐさま反映できる。ユーザーインタビュー、テストの対象を自分自身にできるんです。店舗が導入するきっかけとしても「現場を分かっている人が作っているサービスが一番信用できる」といって頂けることも多いです。

また、トレタはBtoBのサービスですが、いまトレタで活躍しているのはソーシャルゲームやtoC向けのサービスを手掛けていたエンジニアやデザイナーが大半ですね。

その理由を考えてみると、BtoBの世界ってBtoCに比べるとUI/UXが軽視されてきて、使いづらくても「マニュアル渡して覚えてもらえばいい」という風潮がありました。しかしそれはもう通用しない時代で。ビジネスで使うからこそUI/UXがとても重要になる。操作に迷う時間、余分なクリック一つ一つが全部コストなんですよね。その点、toCサービスで培った経験がすごく活かせているんだと思います。

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あと、BtoBの世界は本当に面白いですよ。BtoCと比べて目立つ機会は少ないですが、なんといっても世の中に対する影響力が大きい。トレタの場合、1,000程度の加盟店数でもそこに来店されているお客さんの数は既に200万人を突破しています。それだけ多くの方の「おもてなし」に関わるツールを提供しているっていうのは、実は世の中に対して影響力は大きい。これからもとできること、やりたいことがたくさんあります。

― 中村さんのご経験やトレタの開発背景、異業界をテクノロジーで変える要件、そして活躍できる人材についてのお話は、IT業界に身を置く読者の方にも気づきが多いものだったと思います。ありがとうございました!

[取材・文] 松尾彰大

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