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東猴史紘 Headshot

ワシントンDCで思うトランプ後の2017年

投稿日: 更新:
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年末年始を使ってワシントンDCを訪れた。昨年、たまたま都内でトランプ政権移行チームの講演会に参加したことがきっかけで、せっかく予定もない年末年始に間もなく就任予定のトランプ次期大統領が働く舞台となるホワイトハウスを始めとするワシントンDCを一目見てこようと思ったのである。

成田空港からユナイテッド航空で約14時間のフライトを経て米ワシントンDCのダレス空港に向かった。座席にはテレビ画面が1台1台ついており、私はフライトの半分程度をディズニー映画やマッドディモン主演の「ジェイソン・ボーン」を見て過ごしていた。途中、ビールを飲み過ぎたせいか頭痛になったが、何とかダレス空港までたどり着いた。

12月29日
1655 成田空港出発
↓フライト(ユナイテッド航空エコノミー席)
米国現地時間
12月29日
1430 ダレス空港着
1515 ホテル到着

空港からすぐにタクシーに乗りホテルへ直行、まだ午後15時前後だったが、フライトで疲れ果てていたのでシャワーも浴びずスーツを脱いで翌朝の04時まで爆睡だった。朝7時に起きる予定だったが、すっかり夜型の習慣が染みてしまった生活をこの機械に朝型の生活にするため無理矢理起きてシャワーを浴び、コーヒーを飲みながら成田空港で購入した雑誌「Newsweek日本版」を読むことにした。

そこで飛び込んできた記事はトランプ次期大統領が12月22日にtwitterでつぶやいた核戦略の見直しについてのものであった。実際にトランプ氏のツイートを見てみた。

The United States must greatly strengthen and expand its nuclear capability until such time as the world comes to its sense regarding nukes.
(世界が核に関して理性を取り戻すまで、合衆国は核の戦力を大幅に強化し、拡大しなければならない。)

世界が核に関して理性を取り戻す、がどういった意味で使っているかはツイートされていなかったが、推測するに、米国の安全を脅かす国々やテロリストグループなどが核保有を狙う中で米国が核の根絶を目指すのは危険極まりないということだろうか。

Newsweekによると、今回の発言でニュース番組の司会者に軍拡競争を始める気かと聞かれ、「軍拡競争、大いに結構。やろうじゃないか。」と開き直ったとのことだ。メディアを中心に強い批判もあるだろうが、「強いアメリカ」の実現のためには、核軍縮を唱え、安全保障でも弱い米国にしてしまったオバマ大統領とは逆のスタンスを取っていかなくてはいけない以上、これは当然の発言と言える。(表現が過激ではあるが)

加えて、私の目を惹いたもうひとつの記事はトランプが選挙時に主張した「10年間で2500万人の雇用創出」と「中国製品に45%の関税をかける」という政策の担当者が決まったことに関するものである。カリフォルニア大学の教授で「中国による死」という著書も書いている反中派のピーター・ナバロという人物である。

ナパロ氏は中国がアメリカの雇用を奪っているのであり、中国に対処すれば雇用を取り戻せると考えており、米国の雑誌でも中国製品に45%の関税をかける政策が実行されれば米国の貿易赤字は解消すると主張しているとのことだ。

確かに、トランプ氏は当選時に台湾の蔡英文総統と電話会談をして中国を明らかに敵視している具体的な行動に出ているが、今や米国の最大の貿易国相手にそんなことをやるのだろうか。私はメキシコの国境に壁を作る政策以上に実現不可能と思っていたが、恐らくトランプ氏はこの中国へかなら高い関税を課すことは実行に移すのではないかと、蔡英文総統への電話会談を行ったとき以来、考えている。

中国と仲良くやっていくつもりなら電話会談しないだろうし、貿易赤字を何とかしようと思ったら中国製品の輸入を何とかしないといけないし、昨今の中国の台頭(アジアの軍事的存在感やアジアインフラ投資銀行の設立など)を許してしまったのは、オバマ大統領が中国を野放しにしてしまった要因も大きいので、トランプ氏は同じ道は歩まず、中国に厳しい態度で臨んでいくはずだと思うからだ。

さて、朝の7時になったのでホテル内の朝食を食べに行こう。本日12月30日(米国時間)の予定は以下である。

米国現地時間
12月30日
0500-0700 レポート執筆
0700-0730 朝食
0745-1030 ホワイトハウス
      ワシントン記念塔
      リンカーン記念館
1130-1300 キャピトル・ヒル見学
      最高裁判所
      議会図書館
1330-    ホテルにて作業

朝食を食べ終わって部屋に戻り、日本のユニクロで買ったネックウォーマを巻いてコートを着てホワイトハウスに徒歩で向かった。ワシントンの年末は日本と同様寒さが厳しい。コートだけでは耐えきれなかっただろう。ユニクロ様様である。

歩くこと40分くらいで自分が今、どこを歩いているのか迷った。スマホを海外でも使えるように手続きしていなかったためWIFIが整ってない場所以外ではGPSが使えなかったからだ。しばらく適当に歩いているとワシントン記念塔が見えてきた。その付近に地図があったので見てみたら、ホワイトハウスを通り越していることに気づいた。具体的にはホワイトハウスの横を歩いてきたようだった。

地図通りに歩いていると、ドラマでしか見たことがないが、いつも見ていたかのような気分にさせられる白色の建物が見え始めた。少し感動したが、いかんせんホワイトハウスから結構遠い場所からしか見ることができないのでスマホのカメラではさらに遠く写ってしまう。テロの前はもっと近くから見ることができたようである。最初は感動したが5分もすれば、さて次に行こうという気分になった。建物内には上院議員や下院議員の紹介がないと入れないらしいしね。

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ホワイトハウスを後にし、私はそのまま近くにあるIMFや世界銀行を見ようと歩き始めた。すぐ近くにあるはずだが、GPSが使えないのが痛かった。「地球の歩き方 ワシントンDC」に付属している地図では大雑把すぎて見つけるのが不可能だった。しかし、IMFも世界銀行も国際政治の舞台においてその役割を果たしているとは言いがたいし、存在感の小ささを感じていたので見る価値はそこまで無いかな、と建物を見つけれない方向音痴な自分を正当化しながらジョージワシントン大学を横切りながらリンカーン記念館の方に歩いていった。

リンカーン記念館も、ドラマではよく見ていたが、実際に見ると大きい。トランプ氏もワシントンポストのインタビューで「リンカーンだけは大統領の中では別格だ。さすがにリンカーンにかなう奴はいない」といった趣旨のコメントをしていたので米国政治上においてもリンカーンが果たした役割と評価は極めて高いのだろう。日本でリンカーンに匹敵する歴代の首相は誰だろうか、と考えるが思い付かない。子供も大人も好きな首相で、かつ世界の誰もがその功績を称える首相となると誰だろうか。首相ではないが坂本龍馬くらいか。

リンカーン記念館からはこの後の目的地であるワシントン記念塔も、キャピトルヒル(連邦議事堂)は人目で見渡せる。一直線だからである。ただしそこまでの距離は長い。ワシントン記念塔までは歩くこと20分以上、さらにキャピトルヒルは20分くらいである。しかもワシントン記念塔は工事中で上れなかった。

キャピトルヒルの見学ツアーを日本から申し込んでいた。11時半からだったので10時半には現地についてしまったので先にすぐ近くにある最高裁判所に向かった。中には入れず、建物を外から撮影するだけであったが、建物に刻まれている言葉が目に入ってきた。

EQUAL JUSTICE UNDER LAW
(法の下の平等)

さて、このあと横にある議会図書館の中で少し休憩しても、まだ11時前だったが、先にキャピトルヒルの中には入れるかもしないと思い、キャピトルヒル・ビジターセンターの入り口にできていた長蛇の列に並び、ボディチェックを終えて議事堂の中に入った。

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雰囲気は日本の国会と似ている。ツアーの受付で日本から申し込んだ旨の用紙を見せたら11時10分からのツアーに変更してくれた。ツアー時間は30分以上あったのだが、見学できたのは当然ながら一部のみで、議場は見れなかった。ただ、こういった場所で議会が行われているのか、と一目見れただけでも良しとしよう。そもそもそれが目的だったし。

さて、1月20日にはトランプ氏が大統領に就任し、私が見たホワイトハウスやこの連邦議事堂がまさにトランプ政治の中心となる訳だが、トランプ大統領の就任で2017年はどのようになっていくのだろうか。それはトランプ氏の公約がどの順番で、どういったタイミングで実現されるかにも左右される。

目下、大型減税と公共投資への期待が膨らんでおり現在のドル高はその期待の表れであろうが、実際には連邦議会を通す必要がありその実現は2017年10月以降となる。この大きな2つが行われることが確実視されれば2007年は一年を通して株高・ドル高志向が続くだろう。

10月だとかなり遠い話だなと思うが、その前にトランプ氏は選挙公約にも掲げていた米国企業の海外での利益を国内送金すれば一回限りで10%の税率(現在は国内送金すると35%の法人税)を適用する政策を実施する可能性が取り出されている。本国投資法(HIA)である。これは過去にブッシュ大統領が2005年に実施し、海外資金の国内寒流を実現させ、その年は対円でドル高志向となった。

つまり、2017年の前半で本国投資法、後半で大型減税と公共投資を実施するというイメージを持っていればいいだろう。そうなるとやはり2017年は株高・ドル高志向となるのではないか。

ただし、トランプ氏は米国の貿易赤字の解消も政治課題のひとつにあげている。貿易赤字を解消しようとすると、ドル安にしなければならない。冒頭にも書いたが中国の輸入品に45%の関税を設ければ貿易赤字は解消すると提唱する人物がトランプ政策の担当者になった。トランプ氏も貿易赤字の一番の原因となっている中国に対して「中国への為替操作国の認定を就任初日に財務長官へ指示」すると主張しているので対中国への教鞭な政策が米国の株価や為替にどのような影響を与えるのか。

恐らく、大型減税と公共投資が行われるなら対中国政策の悪影響は案外小さなものではないかと楽観的な思いを持っている。オバマ大統領とは真逆の政治である「強い米国」という考え方に沿った政治が行われていけば、対中国への政策でリスクはあるものの、2017年は総じて、米国の株式は高くなり、為替もドル高志向が続くのではないかと個人的に予想する。根拠はないが、それだけのパワーがトランプ氏にはある。

米国現地時間
12/31
0500-0630  ホテルにて作業
0700-0800 朝食
0900-1100 アーリントン国立墓地
国防総省(ペンタゴン)
1100-1300 ペンタゴンシティー
1330-1630 ホテルにて作業

朝食を食べそのままタクシーに乗ってアーリントン墓地へ向かった。セキュリティー通って墓地に入った後、手袋をなくしたことに気づいたが戻るには遠すぎる場所まで来てしまったので諦めた。本来ここを訪れたら、定番なコースが海兵隊戦争記念碑とケネディ大統領の墓を見ていくのだろうが、3日目だから疲れていたのと、墓地が相当広いと、地図通り行ったのにたどり着けなかったのもあり、諦めて基地を後にした。1時間くらい歩けば雰囲気はわかる。

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アーリントン墓地からペンタゴンまで本来、タクシーに乗る予定だったが、せっかくなので歩いていくことにしたが後悔した。高速道路みたいな道で車が100km近くで走る中、その隣の小道をひたすら1時間くらい歩いた。そうすると、だんだん要塞みたいな建物が見えてきた。写真を見てもらえば分かるように上空から撮影した六角形のイメージに慣れている私たちに少し物足りない風景だ。しかし、ここが米軍の中枢であり、報道で話題となった狂犬と呼ばれるジェームズ・マティス氏が国防長官としてトランプ氏の安全保障を支える。ちなみにペンタゴンは予約すればネットからツアーを申し込める。私はその事実に気づいたのが間際だったので叶わなかったが訪れる際は、ツアーに申し込んで建物に入ることをお勧めする。

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そしてこの日の最後にペンタゴンから徒歩15分くらいのところにあるショッピングモールであるペンタゴンシティーに立ち寄って友人へのお土産を買って隣接しているリッツカールトンホテルの入り口からタクシーに乗ってホテルに帰った。本来、ホロコースト記念博物館にも寄る予定だったが疲れすぎキャンセルした。

起きたのは夜中の23時半。ニューヨークと違ってワシントンDCはカウントダウン花火がないので寂しい町なのだが、ホテルの1Fのバーに行くと人だかりができていた。人種もバラバラすぎたが、TVでどこかのイベントのカウントダウンの風景が映し出され、新年を無事迎えることができた。しかし、一人は寂しいね。そしてそのまま就寝し、以下のスケジュールで日本へ戻った。

米国現地時間
1/1
0500- 本記事執筆
0700- 朝食
0900- ダレス空港到着
1225    ダレス空港出発
↓フライト(ユナイテッド空港エコノミー席)
日本時刻
1/2
1640 成田空港着

最後に・・・2017年、紛れもなく国際政治で話題の中心となるトランプ次期大統領の働くワシントンDCを短い間であったがその空気に触れることができた。しかし、この町ほど実際に働いてみたりしてみないとその実態を理解できない場所はないだろう。日本の国会や省庁見学をしたところで日本政治の実際が理解できないのと同じだ。

まさにこの町は大統領を頂点として行政や議会、そして各国政府や要人、企業、海外NGOやロビーストなど様々な人種が入り乱れる。その入り乱れの中に入ることは、ただの旅行ではできない。とはいえ、我が国日本はこのワシントンDCで方向付けれられた事(アジェンダセッティング)に大きな影響を受ける。2017年は嫌でもトランプ次期大統領の政策に我が国は影響を受けるのだ。

そういった意味では一度、ワシントンDCを訪れてみると政治をより俯瞰して見ることができるきっかけになる。昨今、日本人の米国留学離れやワシントンDCへのロビー活動の現象がささやかれ、日本におけるワシントンDCでの影響力低下が指摘されているが、日本でもワシントンDCとの繋がりを持てる団体はある。一つは私が渡航するきっかけとなったトランプ移行政権の講演会を主催した一般社団法人JCU(共和党全米委員会の広報活動を日本で行っている)や、「新日米外交を切り開く」著者の猿田佐世弁護士が主宰する新外交イニシアチブの活動もお勧めだ。

東猴史紘