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「インド洋大津波」(2004)のデジタルアーカイブ公開

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■おしらせ

みなさま、大変ご無沙汰しています。渡邉英徳です。今夏、広島国際会議場で開催された国際平和シンポジウム後の記事からかなりの時間が空いてしまいました。今回の記事は、その後の経過についてお知らせすることから始めたいと思います。

まずは単著発売のお知らせ。「ヒロシマ・アーカイブ」など、これまでの仕事をまとめた「データを紡いで社会につなぐデジタルアーカイブのつくり方」(講談社現代新書)が11/15に発売されました。

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この本には、文系の高校生にも読める「データと社会のかかわりについて知るための入門書」をしたためるつもりで取り組みました。これまで論文などに書いてきた技術話は控えめにして、これまでに考えてきたこと、そして出会った人々とのつながりに焦点を当てて書いたものです。

いしたにまさきさん、瀬戸寿一さんはじめ、たくさんの方にご感想をいただいています。ハフィントン・ポストの読者のみなさまもぜひ、お読みいただければと思います。年明け1/9には、東浩紀さんプロデュースの「ゲンロンカフェ」にて、刊行記念イベントも開催されます。こちらにもぜひご参加いただければ幸いです。

刊行記念イベント詳細はこちら

また「ヒロシマ・アーカイブ」が第40回「日本賞」の優秀作品に選出され、さらに「東日本大震災アーカイブ」が2013年度「グッドデザイン・ベスト100」および復興デザイン賞を受賞するという、嬉しいできごともありました。ご支援いただいた皆さまに感謝いたします。

■「アチェ津波アーカイブ」公開

2004年12月26日に発生した「インド洋大津波」から、本日で9年目になります。首都大学東京の渡邉英徳研究室では、京都大学・地域研究統合情報センター(CIAS)の山本博之先生・西芳実先生と共同で「アチェ津波アーカイブ」の制作を進めてきました。本日正式公開となりましたので、このブログでもお知らせします。

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山本先生・西先生はこれまでに、死者・行方不明者約22万5000人を出したインド洋大津波の被災地で調査を行い「アチェ津波モバイル博物館」の開発を進めてきました。お二人の研究については、読売新聞の記事「痛みと再生の諸相―インド洋津波から2年を迎えたスマトラの経験を振り返る」にて、詳しく紹介されています。

山本先生・西先生には、2012年8月に開催された情報処理学会の研究会「第95回人文科学とコンピュータ研究会」ではじめてお会いしました。僕たちはふだん、アート&デザインの分野で活動しており、人文科学のことばでうまく説明できるとは限りません。当日の参加者からの質問内容も辛辣で、アウェイ感ありありでしたが、似通ったミッションで仕事を進めてこられたお二人とはその場で意気投合し「ぜひ何かやりましょう」という話になりました。

その後、僕がCIASの客員准教授に着任し、具体的なプロジェクトが動き始めました。今年の8月には、渡邉研究室の学生たちとともにインドネシアに出張し、現地の取材や試作版のテストを行なってきました。その模様が朝日新聞デジタルの記事「アチェの津波被害、モバイルで継承 京大「博物館」公開」にて紹介されています。また、同行した渡邉研究室4年の佐久間亮介くんによるブログ記事もあわせてご参照ください。

以下の写真は、山本先生と僕、そして現地の学生たちによるアチェ津波アーカイブ試作版テストのようすです。

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■「アチェ津波アーカイブ」の機能紹介

アチェ津波アーカイブは、これまでにリリースしてきたアーカイブズ・シリーズに続くものであり、前例と同様のシステムデザインが施されています。デジタル地球儀「Google Earth」に、インド洋大津波に関する多元的な資料がマッピングされており、ユーザは、ズームイン・アウトやパン操作を用いて、デジタル地球儀上に再現されたバンダアチェの空を飛び回りながら、すべての資料を一覧することができます。

なお、これらの資料は山本先生・西先生、そしてシアクアラ大学大学院防災学研究科のMuhammad Dirhamsyahさん、シアクアラ大学津波防災研究センターのNurjanahさんからご提供いただいたものです。

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津波災害を生き延びた被災者たちの証言が、顔アイコンで示されており、クリックすると全文が表示されます。現時点では、日本語化された証言のみが掲載されています。現在の証言数はそれほど多くはありませんが、「東日本大震災アーカイブ」に掲載された証言と比べてみると、インドネシアと日本における、津波の記憶の共通点や差異がみえてきます。今後、証言資料をさらに拡充していく予定です。

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被災直後から収録されてきた大量の写真がマッピングされています。画面左上のタイムスライダーを操作することで、時系列に沿って絞り込み表示が可能です。Google Earthにも過去の衛星画像が収録されており、津波前後の変化、そして街が復興していくようすを、時空を越えて体感することができます。

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写真資料の表示については、これまでのアーカイブズ・シリーズにはない、新たなインターフェイスデザインを試みました。ズーム度合いに応じて写真のサムネールサイズが変化するようになっており、地面に近づいていくと、衛星画像に写っている事物のスケールに対応した、大きなサムネールが表示されます。このことによって、ユーザは大量のアイコンを一つ一つクリックせずとも、写真の内容を知ることができます。

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バンダアチェには、テクスチャマッピングされた3Dモデルも掲載されています。上の画像はそれぞれ、被災遺構となっている発電船と、アチェ津波博物館のようすです。発電船の周辺は現在、津波の記念公園として整備されており、たくさんの観光客が訪れています。アチェ津波博物館も賑わいのある施設です。過去の写真を閲覧し、タイムスライダーを操作することによって、これらの場所が、かつてどのような状況だったのかを知ることができます。

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震源地からの距離の同心円、そして世界から現地に届いた支援の手をあらわす光の線などの資料も掲載されています。今後、震源域や津波の遡上高など、多面的な資料を網羅していく予定です。

■資料を拡張現実表示するARアプリ

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位置情報に基づいて、アーカイブの資料をiPhoneのカメラビューに重ねて表示するARアプリも公開準備中です。バンダアチェでは、被災後10年近くが経過し、過去の被害のようすを想像することは、難しい状況にあります。このARアプリの目的は、現在の風景に過去の資料を重ねあわせることによって、被災状況を実感を持って伝えることです。

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実際に現地でテストしたところ、現地の空が開けていてGPS衛星の信号をキャッチしやすいこともあり、まずまずの精度で資料を表示することができました。上のスクリーンショットは、前述した被災遺構の電力船から撮影されたものです。アプリは、2014年1月にApp Storeで公開予定です。しばらくお待ち頂ければ幸いです。

■アチェから日本へ

現地で出会ったシアクアラ大学大学院防災学研究科学生たちは、口を揃えて「津波の記憶が薄れつつある」と話していました。僕たちもそうした印象を受けました。このことには、日本とインドネシアの国民性の違いもあらわれているかも知れません。しかし学生たちは、未来に記憶をつなぐ研究活動を精力的に続けています。

また、被災遺構である発電船や、打ち上げられた船の周りに集って遊ぶ子どもたちなど、津波の記憶が「日常」のなかに定着しつつある例も見受けられました。こうしたバンダアチェの被災状況、そして現状を知ることは、日本の将来を考える手がかりとなるかも知れません。多くのかたに「アチェ津波アーカイブ」を活用いただければ幸いです。

■「アチェ津波アーカイブ」開発メンバー

  • 渡邉英徳、荒木佑介、菊本有紀、岸岡信伍、佐久間亮介(首都大学東京)
  • 山本博之、西芳実(京都大学地域研究統合情報センター)
  • Muhammad Dirhamsyah(シアクアラ大学大学院防災学研究科 研究科長)
  • Nurjanah (シアクアラ大学津波防災研究センター)
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