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昔日の栄光と世界遺産―ニュースの定点観測(6)

2013年08月15日 16時20分 JST | 更新 2013年10月14日 18時12分 JST

毎年夏休みになると、テレビニュースでは過去を振り返る映像が多くなる。広島の平和記念日などは日本発のニュースとして外国の報道機関も報道するが、海外での報道ぶりは過去の「鎮魂と祈り」というより、現在の国際情勢の中でもつ意味合いに力点がある。だからニュースの解説は「歴史問題」であったり、「原子力政策」であったりする。 

日本のテレビに出てくる過去の映像はもちろん戦争や原爆ばかりではない。高度成長華やかなりし頃に作られた映像は、ニュースに限らず、ドキュメンタリー、スポーツ、ドラマ、歌番組などでも再放送やリバイバル、リメークのかたちでよく登場する。テレビを見る世代自体が高齢化しているせいなのか、過去の栄光を懐かしがる人たちに、テレビ局が迎合しているようにも見えるが、それではちょっと寂しい気がする。

富士山をはじめ世界文化遺産に登録されることを目指す動きも、まちおこしの一環として盛んだ。たしかに過去の優れた技術や文化の成果物を今に保存し記憶にとどめることは大事である。意識的に価値を認識しておかないと過去はいとも簡単に消滅してしまう。

しかしもっと大事なことは、先人たちの苦労に思いを馳せ、困難を乗り越えた知恵を将来に活かすことである。単純に保存するだけでなく、若い人がそこから将来の新しい世界を創造するための知恵を学び取ってこそ意味がある。

最近、アメリカ経済の中核を担ってきた自動車産業の中心地、デトロイト市が財政破綻した。アメリカの自動車産業は今日なお健在であるのに、なぜ過去の栄光の都市は破綻してしまったのか、学ぶべき点は多い。日本も自動車で栄える都市が全国に数多くあるが、アメリカの体験と歴史に学ばなければ、都市だけでなく産業も消えて、国中に文化・産業遺産ばかりとなりかねない。

成功体験であれ、失敗体験であれ、過去の経験から学ぶことは大事なことだ。重要なのは過去に潜む現在であり未来である。過去を冷凍保存することは目的ではない。