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エチオピア:激減するメディア 5月総選挙前に法改正と政策見直しを

2015年01月29日 16時25分 JST | 更新 2015年01月29日 16時28分 JST

エチオピア政府は、国内の独立した意見を組織的に攻撃し、メディアを情報や分析の貴重なソースではなく脅威と見なしている。エチオピアのメディアは5月の総選挙できわめて重要な役割を果たさなければならない。だが多くのジャーナリストは、次は自分が投獄されるのではないかと恐れている。
レスリー・レフコウ、アフリカ局長代理


Newspaper readers at Arat Kilo, a square in Addis Ababa, Ethiopia.
© 2011 Tom Cochrem/Getty Images

(ナイロビ)エチオピア政府は独立メディアをしらみつぶしに弾圧している。2015年5月の総選挙を前に、言論の自由は風前の灯火だと、ヒューマン・ライツ・ウォッチは本日発表の報告書で述べた。昨年2014年、政府の嫌がらせで民間定期刊行物6誌が廃刊となり、少なくとも22人のジャーナリスト、ブロガー、編集者が刑事事件で起訴された。またジャーナリスト30人以上が抑圧的な法律による逮捕を恐れて、国外に脱出した。

今回の報告書「ジャーナリズムは犯罪ではない:エチオピアでの報道の自由の侵害」(全76頁)は、エチオピア政府による独立メディア抑圧の動きを、2010年以降について詳しく明らかにした。ヒューマン・ライツ・ウォッチは2013年5月から2014年12月にかけて70人以上の現役・元ジャーナリストに話を聞き、政府のジャーナリストに迫害のパターンを明らかにした。現在ジャーナリスト19人が言論の自由の権利を行使したことで投獄されている。2010年以降に亡命を余儀なくされたジャーナリストは少なくとも60人に上る。

エチオピア政府は、国内の独立した意見を組織的に攻撃し、メディアを情報や分析の貴重なソースではなく脅威と見なしている」と、ヒューマン・ライツ・ウォッチのアフリカ局長代理レスリー・レフコウは述べた。「エチオピアのメディアは5月の総選挙できわめて重要な役割を果たさなければならない。だが多くのジャーナリストは、次は自分が投獄されるのではないかと恐れている。」

エチオピアでは活字、テレビ、ラジオいずれのメディアもほとんどが政府の管理下にある。民間の活字媒体がいくつか存在するが、閉鎖命令を恐れ、政治的にデリケートな話題については自己検閲を行っている。

2014年に独立系の民間刊行物6誌が廃刊となった。国営テレビでは、これらの出版物がテロ組織とかかわっているとの中傷キャンペーンが長期間流された。脅迫には職員への嫌がらせや脅迫、印刷所や卸業者に圧力をかけるほか、法令を使って発行を遅らせたり、はては編集者を犯罪容疑で起訴さえしたりする。投獄された報道機関の職員は数十人に上る。雑誌発行人のうち3人が刑事訴追され、欠席裁判でそれぞれ3年以上の刑を下されている。犯罪容疑の証拠として示されたのは、政府の政策を批判した記事である。

少数のエチオピア人有名ジャーナリストたちがおかれた悲惨な状況は、世界的によく知られるようになった。しかし首都アジスアベバや地方では、それ以外にも数十人が治安当局者による組織的な人権侵害にさらされている。

ジャーナリストへの脅迫にはパターンがあると、ヒューマン・ライツ・ウォッチは指摘する。政府を批判する記事を書いたジャーナリストはまず、治安当局者や与党幹部から電話やSMS、訪問で脅迫される。こうした脅迫を数百回受けた人もいた。それでも報道を続けたり、自己検閲しない場合には、脅迫がきつくなり、最終的に逮捕される場合が多い。ジャーナリストを被告とする刑事裁判では、裁判所の独立性はほとんどない、あるいはまったくないといって過言でない。被告は不公平な裁判で有罪判決を受け、長期刑を宣告される。多くはテロ関連の容疑だ。

「犯罪のでっち上げや嫌がらせを通して、独立した意見を押さえつけるエチオピア政府。ジャーナリストの投獄では世界最悪級の政府となった」と、前出のレフコウ局長代理は述べた。「政府は不当に投獄されている人びとをただちに釈放し、法改正を通じて報道の自由を守るべきだ。」

エチオピアではテレビ・ラジオ局のほとんどに政府の息がかかっている。政府の立場から外れた報道は滅多になく、政策を宣伝し、国はうまく発展していると喧伝することが多い。ラジオへの統制は政治的にきわめて重要だ。エチオピアでは人口の8割以上が地方に住み、今もラジオがニュースや情報を得る主要なメディアだからだ。政治的な出来事を報道する民間ラジオ局は数局存在するものの、報道は地元当局の編集と承認を受ける必要がある。承認された内容から逸れた内容を扱った報道局は、嫌がらせや身柄拘束を受ける。亡命を余儀なくされる場合も多い。

政府は、外国に本拠を置く亡命ラジオ・テレビ局の放送も妨害し、ウェブサイトを閲覧できないようする措置を頻繁に行っている。放送局の職員は頻繁に脅迫や嫌がらせを受けている。外国メディアの取材源や取材対象者も同様に脅迫されている。視聴者すら逮捕されることもある。

政府は行政手続や規制を使って、目立たずに効果的な方法を駆使している。ジャーナリスト協会の結成の動きを潰す、民間出版物の発行許可や許可の更新を遅らせる、わずかに存在する定期刊行物を発行・販売する会社に圧力を掛ける、国営メディアへの就職に与党の党員となることを条件とするなどだ。

ソーシャル・メディアへの規制もかなり厳しい。亡命エチオピア人によるブログやウェブサイトには、エチオピア国内で閲覧できないものも多い。2014年4月、当局はブロガー集団「ゾーン9」の6人を逮捕し、反テロ法と刑法違反で起訴した。かれらは社会や政治のほか、若いエチオピア人が興味を持つ出来事にコメントを行っていた。裁判は、他のメディア関係者に対するものと同様に、適正手続きに関するさまざまな懸念に満ちていた。2015年1月14日、裁判は16回目の延期となり、6人の拘束は260日を超えた。ゾーン9のブロガーたちの逮捕と起訴は、エチオピアの表現の自由について恐ろしい影響をもたらしている。その影響は、政府に批判的なブロガーやネット活動家のあいだで顕著だ。

メディア弾圧の強化は、5月総選挙に関する報道の動向に影響を与えるのは明らかだと、ヒューマン・ライツ・ウォッチは述べた。

「エチオピア政府には、報道の自由を5月総選挙前に改善するために必要な、重要な改革を行う時間がまだある」と、レフコウ局長代理は述べる。「抑圧的な法律を改正し、獄中のジャーナリストを釈放するのに大した時間も費用もかからない。必要なのは唯一改革への意志である。 」

(2015年1月22日「ヒューマン・ライツ・ウォッチ」より転載)