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リスク管理で難しいこと-旅のハプニングが教えてくれたこと:研究員の眼

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この春、ある離島への旅でハプニングを経験した。その時の自身の行動を例に、リスク管理能力を自己採点すると同時に、リスク管理の難しさについて考える。

【旅でのハプニング】

帰路にそのハプニングは起こった。空港に向かう途中で急変した天候のために、飛行機が空港に着陸できず引き返していった。離島の空港に代替機などあるわけもなく、私が搭乗を予定していた折り返しの出発便も欠航となった。

島を出発する飛行機は1日数便しかなく、1便あたりの座席数も観光バス程度と少ない。欠航が決まった時点で、島を出発する飛行機の予約状況を確認したが、その後2週間は全便満席だった。そして、手にしたキャンセル待ち番号は決して期待できる番号ではなかった。

飛行機以外で島から出る手段は、週に2便のフェリーのみ。不幸にも前日出航したところで、3日間は島から出られないことを覚悟した。

この時ほど、生活の根幹を成すのは衣食住であることを思い知らされたことはない。

島ではクレジットカードは使えない上、銀行ATMもない。素泊まりでも3泊分とフェリー代合わせて4万円程度必要なのに、手持ちの現金は夫婦合わせて5万円足らず。荷物は既に発送済みで、替えの衣類も無い。

最低限の衣食住をどう確保するかばかり考えていた。

実は、島を訪れたのは今回が初めてでない。アクセス手段や支払い方法が限られることに不安を覚え、初めて島を訪れるときに、郵便貯金の口座を開いた。島の唯一の金融機関が、ゆうちょ銀行(当時は郵便局)だからだ。

しかし残念なことに、幾度と訪れ、その都度支障ない旅を繰り返すうちに不安は消え、今回はゆうちょ銀行のキャッシュカードを持参していなかったのだ。

【行動の振り返り】

リスクの予防策とその実効性の観点から振り返る。予防策は大きく『リスクの特定』、『リスク対策の検討』、『リスク対策の実行』の3工程に分類できる。

『リスクの特定』はどのようなリスクに晒されているのか認識し、その影響度や発生確率を評価することである。現金が枯渇するリスクを認識していた点では「良」としたいが、甘めに評価しても「可」が限界だろう。

その理由は、ゆうちょATMは大手都市銀行を含む多くの提携金融機関のキャッシュカードが使えるからだ。その事実を知っていれば影響度が小さく、対策を講じる必要は無かったし、衣食住の確保に悩む必要も無かった。つまり、評価が不十分だったのだ。

『リスク対策の検討』は文言どおり、そのリスクに対する対応策を検討することだ。今回の例では郵便貯金の口座の開設に相当する。現金が枯渇するリスクへの具体的対策を講じていたという点で「良」とする。

本来は対策が不要だったのだから「良」はおかしいと考える人もいるだろうが、それは『リスク対策の検討』ではなく『リスクの特定』の失敗が原因だ。

一番の問題は『リスク対策の実行』である。これまで、特段問題が無かったことを理由にゆうちょ銀行のキャッシュカードを持参していなかったのだから、どれほど甘めに評価しても「不可」は免れない。

しかし、「危機は忘れた頃にやってくる」や「喉元過ぎれば熱さ忘れる」といった言葉があるように、平穏な日々が続くとリスク対策を軽んずる傾向は、私個人に限った話ではないだろう。

今回の旅で、『リスク対策の実行』の難しさを思い知らされた。

リスク予防策の実効性を維持するには、狼少年だと罵られることを恐れずリスクを訴え続ける勇気と、狼少年の戯言と決め付け無視しない受容力、この2つが相当程度求められるということだろう。

【おまけ】

危機発生時の対応について振り返る。危機発生時は冷静であるに越したことはないが、その時の私は冷静さを欠いていた。冷静さという点では「不可」だが、自画自賛したい点がある。優先順位(衣食住の確保が最優先)が明確だったことだ。

危機発生時の対応を事前に検討することは重要だが、今後起こるすべての危機を網羅することは現実的には不可能だ。

また、危機発生時に、全てにおいて完璧な妙案(対処法)は期待できない。取捨選択を迫られるだろうが、ここで要諦を間違えては大変だ。

危機時においても冷静に対処できる人であれば、危機発生後に優先順位を判断すればいいが、私のように冷静さに自信がないならば、常日頃から優先順位を明確にしておくと良い。

危機時に誤った判断をする可能性が、少しは減るはずだ。

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(2016年6月13日「研究員の眼」より転載)
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金融研究部 准主任研究員
高岡 和佳子