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折り紙の数学-折り紙を通じて幾何学の面白さを再認識してみませんか:研究員の眼

2017年07月14日 15時07分 JST

はじめに

皆さん、「折り紙」については、小さい頃に鶴や兜(かぶと)等を折って遊んだ経験があり、よくご存知のことと思う。また、この折り紙の技術がいろいろな分野で利用されて、最近脚光を浴びてきていることについてもご承知の方が多いと思われる。

具体的にいえば、例えば、「ミウラ折り」と呼ばれる折り方は、三浦公亮氏によって考案されたものであるが、人工衛星の大きなソーラーパネル配列を効果的に折り畳むために利用されている。

加えて、この折り方は、市販されている地図の折り畳み方法としても使用されている。さらに、折り紙の折り方は、エアバッグの折り畳みや医療用のステントグラフトの折り畳みにも応用されている。

一方で、折り紙に関しては、様々な数学的研究も行われてきている。今回は、この折り紙に関係する数学について、その一例を紹介したい。

折り紙と数学の関係

まずは、なぜ、折り紙と数学が関係があるのだろうか、と思う人も多いと思われる。

折り紙は、まさに紙を折るという作業であるが、どの部分でどのような方向にどのような形で折るのかによって、様々な図形が形作られていくことになる。これは、まさに幾何の作図を行っていることと同様のことになる。従って、幾何学的な原理の応用による各種の研究が進められてきている。

角の3等分問題や立方体の倍積問題

例えば、前回の研究員の眼で紹介した「ギリシアの3大作図問題」の1つである「角の3等分問題」については、「任意の角の3等分を定規とコンパスで行うことは不可能である」と述べた。ところが、この「角の3等分は折り紙では可能」となる。

さらには、「ギリシアの3大作図問題」の別の問題である「立方体の倍積問題」についても、「定規とコンパスで行うことは不可能であるが、折り紙においては可能」となる。

これらについては、阿部恒氏が、「『数学セミナー』(1980年7月号)でユークリッド幾何学では、作図不可能な問題である(任意の角の三等分)が折り紙の技法で可能なことを発表。

その後、同じギリシア三大作図不可能な問題である体積が二倍の立方体の一辺の長さの作図も折り紙の技法で可能であることを証明。」(「すごいぞ折り紙 入門編」著者紹介より)している。

折り紙による角の3等分の手法

ここでは、阿部恒氏の考え方に基づいて、角の3等分を作成する手法を概説する。

具体的には、下記の図に対応して、以下の手順に従うことで、角の3等分が得られる。

(1)折り紙を適当に折って、任意の角を作る。

(2)同じ間隔になるように2回折る。

(3)EがPA上の点E(=K)、AがGH上の点A(=L)になるように折る(I、Jはその結果としての折り目)。⇒ここがポイント

(4)KLの中点のMを通るように折ると、AM及びALが角の3等分を与える。

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上の図は、筆者の作図能力の限界により、必ずしもうまく描けていない部分もあるが、一応この方式に基づけば、角の3等分が導き出されることになる。

実際に折ってみると、この方式が角の3等分を作り出していることが容易に確認できるので、是非ご自身で試してほしい。少しは感動するのではないかと思われる。

なお、この方式が角の3等分を作り出すことの証明については、それほど難しくないので、高校入試の時等に勉強したことを思い出して各自で考えていただければと思っている。

定規とコンパスによる作図とは異なる折り紙による作図

前回の研究員の眼で述べたように、「定規とコンパスによって作図可能になる」のは、「座標平面で考えて、2次方程式を繰り返して解くことによって得られるような数に対応するものだけ」ということだった。

これに基づくと、角の3等分問題や立方体倍積問題は3 次方程式を解くことになるため、作図不可能ということになっていた。

ところが、折り紙を使うと、2次方程式だけでなく、3次方程式も解ける形になる。従って、角の3等分問題や立方体倍積問題が解けるということになる。

なお、体積2倍の立方体の作図手法については、ここでは説明しないが、例えば、先に述べた阿部恒氏の著書「すごいぞ折り紙 入門編 折り紙の発想で幾何を楽しむ」(日本評論社)の中で紹介されているので、興味のある方は参照してもらいたい。

また、3次方程式を折り紙で解く方式についても、折り紙と数学に関するいくつかの著書に説明されているので、そちらを参照してもらいたい。いずれも大変興味深いものなのだが、紙面の都合もあるので、ご容赦いただきたい。

その他の折り紙による作図

こうした折り紙の数学の研究においては、日本人が多大な貢献をしている。先に述べた阿部恒氏に加えて、例えば、芳賀和夫氏は「芳賀定理」と呼ばれる3等分点を得るときに有効な定理を発見している。

この芳賀定理などの方法により、正方形の一辺を3分の1、5分の1、7分の1(通常の折り方と組み合わせれば、正方形の1辺を1~10 の任意に等分)に正確に折ることが可能となる。

また、折り紙では、五角形、六角形のような正多角形を作ることや辺の比が黄金比になっている黄金長方形等を作ることも可能となる。

まとめ

折り紙は、紙を折って動植物や生活道具等を作る日本伝統の遊びの文化からスタートしている。今や「ORIGAMI」として、世界の研究者等の注目を浴び、その芸術的な側面が評価され、新たな折り方等も開発されてきている。

また、ここでその一例を紹介したように、その幾何学的性質から数学の一分野としても研究されているが、逆にこうした数学の研究の成果を用いることで新たな折り方の研究が進む形で折り紙自体も進歩してきている。

さらには、冒頭で述べたように各種の実用的な製品の製作においても幅広く利用されてきている。

人間が楽しむために考え出された折り紙が、その分析等を通じて、深い意味付け等が与えられ、新たな形でさらなる興味・関心を呼び起こすものに発展してきている。「折り紙って、本当にすごい」と少しは感じていただけたのではないか、と思う。

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(2017年7月3日「研究員の眼」より転載)

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