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DNAから分かること分からないこと

2014年03月17日 15時27分 JST | 更新 2014年05月16日 18時12分 JST

遺伝子検査が珍しくなくなりました。親から子へと受け継がれる遺伝子の本体であるDNAについて、今の多くの大人たちは学校で教わりませんでしたが、最近の子どもたちは、中学理科の時間でメンデルの法則などと共に学習しています。

ただし、本質的な学習は高校の生物の範疇となっていて、保健でも学習しません。それゆえ、遺伝子検査を受ける可能性のある時代になっても、私たちの側で積極的に学ぼうとしない限り、十分な予備知識を得ることはできないことになります。

■4文字が30億個

DNAは、糖、リン酸、塩基の三つの部分からなる単位がずらっと並んだ糸のような構造をしています。糖やリン酸は1種類ですが、塩基はA、T、C、Gの4種類があります。

遺伝子検査で調べているのは、4種類の塩基の並び(塩基配列といいます)です。ヒトの塩基の並びは全体では30億個にもなります。膨大な数ですが、コンピューターの処理能力が向上し、既に全部解読されています。検査では、その一部を調べます。

塩基の並びは、並んだ三つをひとまとまりとして読んでいきます。このひとまとまりをコドンといい、一つのコドンが一つのアミノ酸を意味しています。書かれているアミノ酸は全部で20種類あります。また、なかには「ここからスタートですよ、ここで一区切りですよ」と開始や終了の位置を示すコドンもあります。

よくDNAは設計図という言われ方をしますが、ただアミノ酸の繋ぎ方が示されているだけなのです。アミノ酸はタンパク質の材料ですから、結局、DNAは、体の中で必要なタンパク質の材料とその材料をくっつける順番だけ示していることになります。

■自然に形が出来る

これだけの情報しか書いていないのに、ヒトの体がつくられ、生命機能を維持するわけですから、不思議ですよね。実はこれにはアミノ酸の持つ性質や構造が大いに関係しています。

アミノ酸は、種類ごとに異なるR基と全種類共通のアミノ基、カルボキシル基の三つの部分からなります。アミノ酸同士が繋がれるのは、互いのアミノ基とカルボキシル基が結合するからです。

DNAの塩基配列に従って順番に繋がったアミノ酸は、R基の持つ構造や性質などにより、繋がったまま自然と位置を変え、立体的な構造をとるようになります。

例えば繋がった時、電気的にプラスを帯びやすいものとマイナスを帯びやすいものが近くにあると引き寄せられます。プラス同士やマイナス同士の場合は反発して遠ざかろうとします。その時、別のアミノ酸の大きなR基があれば、うまく避けるような位置に落ち着きます。

また、周りに水分が多い所では、水になじみにくいR基を持ったアミノ酸は内側に折りたたまれようとします。

つまり、並んだ後のことを見越して、最初から最終形を意図したアミノ酸の並びになっているのです。

コラーゲンの場合は、糸のように直線構造をとるアミノ酸配列になっています。糸が織り重なって布になるように、糸状のコラーゲンも弾力のある皮膚をつくっていきます。

また、消化酵素の場合は、アミノ酸同士が適当な距離を保ち、何かがスポッと入り込める空間を持てる配列になっています。この形のおかげで、空間にぴったりはまる物が来た時だけ働くことができるのです。

■バリエーションが重要

さて、DNAの全配列が解読されたと言っても、具体的にどのタイミングで何の働きをするタンパク質なのかまで、すべて分かっているわけではありません。

また、塩基の並びにはバリエーションがあって、並びが少々異なっていても同じ形で同じ働きをするタンパク質がつくられます。誰もがこの少々異なる部分を持っていて、異なり方にはいくつかのパターンがあることが分かりました。さらに統計解析により、このパターンと疾患に関連性があることや薬の効きやすさに違いがあることも明らかになってきました。遺伝子検査では主にこのパターンを調べています。

しかし、疾患になりやすいパターンを持っていたとしても、すぐに病気に結び付くものではなく、生活環境や生活習慣も関与するので、遺伝子検査の結果をどこまでどのように利用するかが課題となります。

一方で、薬の構造とアミノ酸の配列には大いに関係がありますので、副作用を軽減するためには、異なり方のパターンを調べる必要があります。

今後ますます私たちの生活に遺伝子情報が密接に関係してきます。その活用方法は医療関係者だけでなく、社会全体で考えていかなければなりません。

吉田のりまき
薬剤師。科学の本の読み聞かせの会「ほんとほんと」主宰

(2014年2月号の「ロハス・メディカル」より転載)