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宮田拓弥 Headshot

全米で最も「洋服」を売っている小売はどこでしょうか?

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昨年、米国全体の小売全体に占めるECの割合がついに10%を超えました。4.75%となった日本の約二倍です。

今年6月に発表されたMary MeekerのInternet Trendのプレゼンによると、現在でも毎年15%程度と急成長を続けています。

日々人々の生活に浸透しつつあるECですが、従来は、ファッションなど嗜好性が高く、サイズの問題なども大きい衣料品の分野では難しいであろうと考えられていました。

ところがついに、米国の衣料品小売の分野で、百貨店チェーンのMacy'sを抜いて、EC最大手のAmazonがトップに躍り出るというニュースがありました。Amazonが最近ファッションに力を入れていることは理解していましたが、それでも全小売企業の中でトップになるというのは衝撃的です。

今回のポストでは、このニュース、そしてAmazonが最近活発に動いている「リアル店舗の出店」の流れから、これからの小売について考えてみたいと思います。

Amazonの衣料品売り上げは約3兆円に

今回のニュースは、Cowen&CoというNYの調査会社が出したレポートに基づいていますが、数字を整理すると以下のようになります。
  • Amazon
    • 衣料品売上規模  $28B(2017)
    • 成長率(YoY)  30%
    • リアル店舗数   0
  • Macy's
    • 衣料品売上規模  $22B(2017)
    • 成長率(YoY)  -4%
    • リアル店舗数   769
全米にくまなく店舗網を持つMacy'sの売上がじりじり下がっているのを尻目に、店舗を持たないAmazonが急成長しています。

この勢いは衰えることなく続くと考えられており、5年後の2021年には、Amazonの衣料品売り上げは$62Bというとてつもない規模にまで成長すると見られています。市場シェアは、現在の6.6%から16.2%まで拡大する見込みです。

先日のポスト(老舗百貨店 Neiman Marcusはどのようにして「ネット売上比率26%」を実現したのか?)でも書いた通り、リアル店舗を持つ小売企業もECに力を入れていますが、Amazonと比較するとその差は明らかです。Fortuneで紹介されていた、Amazonおよび小売大手のECの売上規模比較を見ると、どの老舗小売チェーンもEC化率という意味では結構頑張っているように見えます(一番頑張っているように見えるWalmartが3%しかなくて、NordstromやMacy'sという百貨店系がいずれも10%越えというのは興味深いです)。

Cowenのレポートによれば、消費者は、買い替えの商品、よく知っているブランドの商品などを、Amazonで買う傾向があるといいます。当初、ファッションがECに向かない理由とされたサイズや試着の問題が解決されたというわけではなく、比較的オンラインでも購入しやすいものだけでこれだけの規模に達しているということでしょう。

また、配送のスピード、カスタマーサービスなども、Amazonで洋服を買う理由となっているようです。

今年の3月にスポーツ用品小売大手のスポーツオーソリティが破綻した際のポストにも書きましたが、Amazonは独自アパレルブランドの展開にも力を入れています。

女性向けのLark & Roなどに加え、Franklin & Freeman、Society New Yorkなどすでに「7」つのブランドで、男性向けの靴、女性の服、子供服まで、取扱商品は2000まで増えているということです。

その他にも、LondonとNew Yorkには巨大な洋服撮影用スタジオを開設、3月からは生放送のショッピングチャンネルを毎日放送、とAmazonは今後も衣料品分野にはさらに力を入れていくようです。

さらに課題となっているサイズ問題にも様々な技術開発に取り組んでいるということで、若い女性が今年のトレンドのワンピースをAmazonで普通に買う、という時代もやってくるのかもしれません。

Amazonは「リアル」にもやってくる


最近Amazon関連でもう一つ驚いたニュースが、Amazonが食品スーパーへ参入するという話です。

Amazonは、2007年から「Amazon Fresh」というブランドで、野菜や牛乳などの生鮮食品を即日で届けるサービスを展開しています。現在でも展開している都市は17と、Amazonのサービスとしては比較的スローな展開でした。それが、今後二年間で20店舗のリアルな店舗を出店する計画だといいます。

どんなお店を出すのでしょうか?

まずはテストということで、いくかのタイプのお店を出していくようです。

一つは、「オンラインで購入した商品をピックアップできる」だけのお店だそうです。

日本と比べて物流事情の悪い米国では、オンラインで注文した商品を自宅で受け取るのが面倒という事情があります。スタートアップのCurbsideは、大手スーパーのTargetなどと提携し、オンラインで注文した商品を、スーパーの駐車場で受け取れるサービスを展開しています。「すぐ受け取りたい」でも「スーパーで並ぶのは嫌」という両方の要望を実現するサービスとして成長しているカテゴリーです。

最近、Walmartでも、下の写真のような「オンライン商品の受け取り用巨大マシン」のテストを始めたようです。Curbsideもオペーレションが問題になっているようなので、受け取りを自動化しようということでしょう。

Amazonのお店では、「車のナンバー認識」を導入するというような話もありますので、駐車場に入ってくるとユーザの車を認識して、ドライブスルーですぐさま購入した商品が受け取れる、そんなお店になるのかもしれません。トヨタも2020年までに全ての新車はネットワーク接続すると発表しましたし、スマホ、クルマ、お店が連携することで、将来的には店舗での商品の受け取りもかなりスムーズになりそうです。

もう一つは、従来のスーパーと同様に、棚があり商品を見たり触ったりすることができるお店だそうです。

詳細は全くわかりませんが、こちらはすでにテストを開始しているAmazonのリアル書店「Amazon Books」のような店舗になるのかもしれません。

実際にAmazon Booksに行った方は「意外と普通のお店だった」とおっしゃっていましたが、店の機能などは通常の店舗とは基本的に変わらないようです。

ただ、「品揃え」に特徴があり、オンラインでのレーティング、人気、予約の数などを反映して、ダイナミックに変えているということです。つまり本当に売れるものだけを並べているということだと思います。

オンラインでの膨大なデータというものをフル活用することで、一般的にマージンの低い食品スーパーを、儲かるモデルに変えるということを狙っているのかもしれません。

食品スーパーではありませんが、同じくオンライン専業でスタートしたBonobos(男性ファッション)、Warby Parker(メガネ)もリアル店舗戦略を推し進めています。Bonobosは100店舗、Warby Parkerは1,000店舗のリアル店舗の出店計画があるそうです。

ちなみにこちらもMary Meekerのレポートによると、Warby Parkerのリアル店舗は、Appleについで全米で二番目に単位面積あたりの売上高が高いそうです。

Amazonのリアル店舗は、まずは20店舗でテストということですが、将来的には2,000店舗まで増やす計画があるということで、オンラインの雄がどんなリアル店舗戦略を進めるのか今から楽しみです。

未来の小売:「作りながら届ける」も。


これから小売業はどこに向かっていくのでしょうか?

19世紀には百貨店、20世紀にはスーパーマーケットという小売の形態が生み出され、21世紀にはウェブの到来によりEコマース、そしてスマホはオンデマンドコマースという新しい形態を生み出しています。

「物が集まっている場所に買いに行く」時代から、「家に届く」そして、「すぐ届く」という時代になりました。

また、弊社の三浦が日経MJに寄稿しているように、「作りながら届ける」というプレイヤーも出始めています(配送トラックの中で、注文が来てからロボットがピザを焼く)。この場合、注文をした時点では、その商品はまだないということです。

「O2O」「オムニチャネル」など小売に関していろいろなキーワードがありますが、商品をいかに売るかという「チャネル」の議論だけをしていてもダメな時代になってきているということだと思います。

Eコマースが始まったばかりの頃は、まだチャネルの議論をしていれば良かったような気がしますが、スマホ、ロボット、3Dプリンタ、ビッグデータ、AIといった新しい技術の到来により、チャネルだけでなく、素材、調達、製造、店舗、配送という小売に関連する要素を一から考え直す時が来ているということだと思います。

来月、そんな小売のトレンドをまとめたレポートを出そうと考えています。