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猪野元健 Headshot

「意外と動く」ハシビロコウの人気上昇中、上野動物園のグッズ販売はパンダに次ぐ

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「動かない鳥」と呼ばれる大きなくちばしのハシビロコウが人気です。動物園では国内初の繁殖を目指して研究が進められています。

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アフリカ原産のハシビロコウ。怪鳥とも呼ばれている=東京・上野動物園、猪野元健撮影

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ハシビロコウ舎前は平日でもにぎわっていた

5羽のハシビロコウを飼育している上野動物園(東京都台東区)。ハシビロコウ舎の周りには、平日でも多くの人が集まります。

体長1・2メートル、体重5~6キロ。くちばしは20センチほどあり、体に対して大きい印象です。目つきが鋭く、どっしり構えているように見えます。独特の存在感から、「大物っていう感じがしますね」と神奈川県川崎市から来た女性(34)は言います。「かたかた」とくちばしを鳴らしたり、ゆっくりと歩いたりする姿に「意外と動くんだ」と驚くお客さんの声も聞こえてきます。

飼育舎内の池の前でハシビロコウを観察してみました。ほとんど動かずに5分ほどたったころ、近くを泳いでいたえさ用のコイ(十数センチ)を目にも止まらぬ速さでつかまえました。

上野動物園でハシビロコウの飼育を担当してきた動物相談室の葛西宣宏さんは「動かないイメージがあるのは、えさを待ちぶせして食べるタイプの動物だからではないでしょうか。動物園では、ふだんからよく動いていますよ」と話します。
 
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「動かない」とされるハシビロコウが......

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猛スピードで池に頭を突っ込む

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水中から顔を出すと、えさのコイをくわえていた

ゾウやキリンのように有名ではありませんが、ハシビロコウの人気は高まっています。「ツイッターでの反響が違う」と話すのは、上野動物園の教育普及係の担当者です。7月にハシビロコウが羽を広げて口を開けている写真を紹介すると、4万件以上の反応がありました。8月や9月のツイートでもハシビロコウは抜群の人気でした。

園内のギフトショップでは、Tシャツやぬいぐるみ、マスキングテープなど約20種類のハシビロコウグッズを扱います。新商品がすぐに売り切れになることもあります。ギフトショップの吉川絵梨さんは「数年前から人気が出始め、動物別ではパンダの次によく売れています。見た目が特徴的という点が大きいのでは。ぬいぐるみの後頭部の羽をさわって『ここがいいのよね』と言って買う人もいますよ」と話します。

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人気のハシビロコウのぬいぐるみの頭の毛をさわる上野動物園ギフトショップの吉川さん

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周りより長い後頭部の毛は「冠羽(かんう)」と呼ばれる

ハシビロコウの2013年時点の飼育数は世界でも40羽程度です。日本は16年現在、約15羽と飼育数が多く、伊豆シャボテン公園(静岡県伊東市)には推定46歳以上で世界最長寿といわれるハシビロコウもいます。しかし、葛西さんは「わかっていないことが多く、繁殖も海外の一部の動物園でしか成功していない」と話します。

国内初の繁殖を目指し、各施設で研究が進められています。その一つ、高知県立のいち動物公園(高知県香南市)の飼育員・小松美和さんは6月、繁殖に成功したベルギーの動物園を視察しました。オスとメスを同居させ、直接えさを食べさせないなど人になつきやすいハシビロコウをあえて手をかけずに世話をしていました。

のいち動物公園でも同居を目標にしていますが、まだ実現していません。ハシビロコウは攻撃的な性格で、2羽を同じスペースで飼育するとけんかすることがあるためです。「お互いをよく知ることで、同居しやすくなる」と期待する小松さん。現在は、網越しの「お見合い」を続け、同居のタイミングを検討しています。ベルギーの動物園にならって直接えさを食べさせる回数も減らしました。

のいち動物公園と一緒に研究している岐阜大学動物繁殖学研究室の楠田哲士准教授は、ハシビロコウのふんから繁殖にかかわる生理の変化を調べています。楠田さんは「お見合い後、めすの性ホルモンが変化したことが確認されました。季節の移り変わりなどを含め、体の中で起きていることも継続的に調べて、ハシビロコウの同居に役立ちそうな情報を集めていきたい」と話しています。

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ハシビロコウのふんのホルモン量を測定する岐阜大学動物繁殖学研究室の楠田哲士准教授の研究室(楠田さん提供)

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乾燥させたハシビロコウのふん。楠田准教授はふんを通じて繁殖にかかわる生理の変化を研究している(楠田さん提供)

【ハシビロコウ】コウノトリ目ハシビロコウ科。アフリカ東部から中央部の湿地などの限られた地域に生息しています。野生での生息数は5千~8千羽とも言われ、国際自然保護連合は絶滅危惧種に指定しています。国内で飼育しているのは、上野動物園、千葉市動物公園、伊豆シャボテン公園、掛川花鳥園(静岡県)、めっちゃさわれる動物園(滋賀県)、神戸どうぶつ王国(兵庫県)、高知県立のいち動物公園。

小学生向けの日刊紙「朝日小学生新聞」9月6日付に掲載した記事を再構成しました。媒体について詳しくはジュニア朝日のウェブサイト(https://asagaku.com/)へ。