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元アナウンサー菊間千乃さん、飲酒騒動乗り越え弁護士に その先は...

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NAGANO X KIKUMA
対談する菊間千乃さん(右)と長野智子・編集主幹=東京都千代田区 | Wataru Nakano
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「ワークライフバランスと女性のキャリア」をテーマに、アナウンサーから弁護士に転じた菊間千乃(ゆきの)さん(42)さんと、報道キャスターでハフィントンポスト日本版の長野智子・編集主幹が対談した。ともにフジテレビ出身の2人。後半では、飲酒騒動から退社、司法試験合格、さらに将来の目標について菊間さんは語った。

》【前編】『「女子アナ30歳定年説」は本当か 元アナウンサー菊間千乃さんと長野智子・編集主幹が語る』はこちら。

■飲酒騒動とバッシング…追い込まれた日々

菊間:ロースクール1年生の夏にあの飲酒騒動(2005年に起きた未成年のタレントとの飲酒による謹慎とバッシング)があって、秋からずっと謹慎していて、2年生の秋から番組に復帰したんです。3年生になったら徐々に仕事も増えてきて、このまま行ったら、仕事と勉強の両立は難しいなと思いました。

長野:かなり誤解が多い報道だったと、周りから聞いていました。なぜ何も喋らなかったの?

菊間:何も喋らなければ、週刊紙も書くことがなくなる。だから何も言わないほうがいいと会社に言われました。

長野:現実としては、飲ませたわけじゃなくて他のところで飲んでいたわけでしょう。

菊間:そうです。

長野:それで謹慎っていうのは理不尽だなとは思わなかった?

菊間:いろいろ思いましたけど…でも、彼(タレント)自身がそこで謹慎していたので、それは可哀想だなと思ったし、大人として、その場に一緒にいたことは事実なので。最初、会社に行ったら、私だけのせいになっていたので、すごくビックリした部分はありましたけど。

あのとき、アナウンサーの世界しかなかったら、「ここでダメだから終わりだ」と思って、なかなか立ち直れなかったかもしれませんね。ロースクールの恩師である久保利先生(久保利英明弁護士)が当時、電話してきてくれて、開口一番「大丈夫だから」と言って下さったんです。その言葉に本当に救われました。あ、ここに私の言い分を聞いてくれる人がいるんだと。

そして、私はこういういう弁護士になりたいってそのとき強烈に思いました。世間中がその人のことを非難しても、その人の言い分に耳を傾け、その人の横に立ってその人を弁護する。「大丈夫ですよ。私が付いていますから」と言えるような弁護士になりたいし、その言葉で人を勇気づけられるような人間になりたいと。

あのときは、謝っても許されないことってあるんだなと。自殺しようかと思うぐらい追い込まれていたので、久保利先生の言葉は心にしみました。そしていつか、そういう立場の人を弁護するために、今は自分自身がこの状況に追い込まれたんだと思うようにしました。

■退社を決断、「一度きりの人生、勝負してみるか」

菊間千乃さん

長野:その後、復帰して仕事も徐々に増えてきたのに、ついにアナウンサーを辞めると決断しますね。子供のころからなりたかったアナウンサーを辞めることは悩まなかった?

菊間:最初は悩みました。でも、アナウンサーとして会社で今後何ができるんだろうかと考えると、番組は変わっても同じことの繰り返しだろうなと思いました。ロースクール入学当初は、弁護士資格を取って会社に戻ろうと思っていたんです。しかし、そこで、いろんな先生から実務の話を聞いていたら、自分も法律という武器を使って戦ってみたいと思うようになりました。このままもし資格を取って会社に戻ったら、単に法律を知識として入れただけで終わってしまうかなと。謹慎期間も含めて、学校の先生方には、本当に言葉では言い尽くせないほど支えていただいたので、こういう先生方と同じ業界で働きたいという気持ちは日に日に強くなって生きました。

長野:年齢的には40代目前?

菊間:35歳で会社を辞めました。

長野:退社っていうと、生活の基盤を失うという恐怖心があると思いますが。

菊間:怖かったなんてもんじゃないくらい怖かったです。試験に落ちれば、職なし、フリーターですから。

ただ、そのときに40歳になった自分を想像しました。会社に残れば、フジテレビアナウンサーという肩書はいいし、マンションを買って結婚とかして生活は安定しているなと。ただ、このまま働きながら勉強を続けていても絶対に受からないという妙な確信はあったので、どこかで、なぜあのときに人生勝負に出なかったのかと後悔している自分がいるような気がしました。

アナウンサーの仕事にしても、自分が20代のときのようなやりがいを見いだして仕事を続けられていられるとは思えませんでした。だったら、一度きりの人生、勝負してみるかと。

長野:司法試験は2回目で合格したんですね。

菊間:はい。1回落ちた時は本当にどうなるんだろうって怖かったです。

長野:そうだと思う。やっぱり人生って今をどう生きているかが大切で、昔は華やかだったと言って生きるのは嫌だしね。

菊間:私も嫌だったんです。40歳を過ぎて、昔、見ていましたとか言われながら生きるのは。そこから20年、25年とか会社生活があるのに。

「今が一番楽しい」と、「自分は活き活きしている」と思いながらアナウンサーをやってきたから、それがずっと続かないのならそれは違うんだろうなと思いました。20代としてはすごくいい仕事だと思うんですが、一生やる仕事ではないと感じた。そこで、ちょうどシフトチェンジできて良かったかな。

■ジョブチェンジ、「扉が自然と開いていきます」

長野智子・編集主幹

長野:ひとつひとつの出来事に正面から向かい合って、出した答えが今につながっている感じだよね。40代になってご結婚もされて、おめでとうございます。

誰もがみな菊間さんみたいにはできないと思うんだけれども、40代の自分を想像してどうしようかと思っている30代の人や、ジョブチェンジしようかなと転身を考えている人にアドバイスするならどういうことがありますか?

菊間:目の前の問題から逃げずにとことん向き合うことですかね。例えば、私も退社という選択は、ロースクール入学時や謹慎時にもありました。でも、ああでもない、こうでもないって考えているときは動くときではないよ、自然にそういう流れが来るときがあるから無理して動く必要なんてないんだとある人に言われたんです。そうかと。

確かに退社するときは、実質1日で決めましたし、人生の大きな流れって、自分が無理しなくても自然と訪れるんだと思います。でも、その流れに乗るには、目の前の問題から逃げていちゃだめなんです。答えがでなくても、ずっとずっと考えていることが大事なんだと思います。考え続けていると、本当にびっくりするくらい、すっと目の前がクリアになる瞬間が訪れるというか、今が動くタイミングと思えるような瞬間があるんです。考えることは大事です。

「今の自分の何かが違う」「足りない」っていうことを考えている人と、考えてない人だったら、考えているだけで一歩先を行っていると思います。無理しなくても、焦らなくても、誰の人生にも自然とそういう転機は訪れてくると思うんです。

長野:ジョブチェンジとか生き方を変えることは、無理してこじ開けるものじゃないと。

菊間:扉が自然と開いていきます。ジョブチェンジって、なにか劇的な変化があって、雷に打たれたようにチェンジ、ってことではないと思うんですよ。扉がある日ふっと表れて、それが徐々に開いていくんですよ。みなさんその過程をつぶさには話さないから、扉が開く瞬間だけ見た人は、あの人には劇的な変化があったのね、と思う。でも、一人一人のジョブチェンジには、長い長い伏線があるんだと思いますよ。

私のジョブチェンジが、アナウンサーから弁護士と派手だから目立つだけで、キャリアチェンジだけで言えば100人いたら100通りのキャリアチェンジがあるんだと思います。私は何もないとか、私はダメなんだなんて思う必要はなくて、一人一人の人生に訪れる瞬間があるんじゃないかな。

長野:考えることによって、それまでと違う行動につながるかもしれないしね。

菊間:受かった今だから言えるのかもしれないですが、先がわからないからこそ人生は楽しいっていうふうに思った方が毎日楽しいし、生きているという実感がわきます。いまがそのタイミングだと思うのであれば、些末なことは考えずに動いちゃえばいい。後から出てくる問題は、大抵なんとかなるもんですし、何とかしなくては、となります。

会社を辞めるときに、司法試験に合格する保証なんてありませんでした。ロースクールの中で成績が良かったわけでもないですし。でも、今だと思えるタイミングが訪れたので、退社し、その後は愚直に目標に向かって邁進しただけです。成功するか失敗するかは自分次第だからこそ、まさに死ぬ気になって頑張れました。

■「50歳になったら違うことをしているような気がします」

長野:今の一番の目標は何ですか?

菊間:50歳になったら違うことをしているような気がします。

長野:ニュースキャスターとか。

菊間:いや。もっと違う何か。それが何かは分からないんですけど。既に、うっすら扉は見えてきているのかなと。

長野:本当ですか?せっかく苦労してなったのに。

菊間:去年、4カ月間ぐらい海外留学したんです。日本では弁護士は職業ですが、海外では弁護士は資格なんです。弁護士だけど企業のCEO(最高経営責任者)、弁護士だけど大統領という人がたくさんいて、法曹界にとどまるものでもないんだなという想いを強く持ちました。

長野:(アメリカ大統領の)オバマさんだって、(前アメリカ国務長官の)ヒラリーさんだって弁護士だもんね。

菊間:そうです。もっと弁護士資格を持った人が経済界をはじめ、ほかの社会に乗り出していくべきだという気がします。

40歳は人生のスタートライン。今まで培ってきたスキルや経験、知識、人脈などすべてをフル動員して、これからどう生きていくのか。自分で自分の可能性が楽しみだし、やはり先が分からないことにワクワクします。元々、私がこういう性格だったというよりは、この40年間にいろんなことを乗り越えてきた結果、そういう境地に至ったということでしょうか。

困難から逃げず、乗り越えてきたということが自分の自信になっています。これからの人生にも、きっとまた何か大きな転機は訪れると思います。いいことばかりではないでしょう。でも、過去の自分に励まされて、また次も、頑張って跳ね返して、乗り越えていけるんじゃないかと思っています。目の前の壁を乗り越え続ける人生なんだと思います。

菊間千乃(きくま・ゆきの) 弁護士。1972年生まれ。早稲田大学法学部を卒業後、アナウンサーとしてフジテレビに入社。「めざましテレビ」や「発掘!あるある大事典」などの多くの人気番組を担当。2005年に大宮法科大学院大学へ入学し仕事と勉強を両立。2007年にフジテレビを退社後、2010年に2度目の受験で新司法試験に合格。2011年より弁護士法人松尾綜合法律事務所に入所(第2東京弁護士会所属)。著書に「私が弁護士になるまで」(文藝春秋)がある。

(構成:中野渉)

》【前編】『「女子アナ30歳定年説」は本当か 元アナウンサー菊間千乃さんと長野智子・編集主幹が語る』はこちら。

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