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被災したすべての子どもたちに未来を。スポーツ選手が「夢先生」として教壇に立つ「笑顔の教室」

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日本スポーツ振興センター
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東日本大震災から間もなく4年が経とうとしている。復興庁が設置され、今に至るまで数多くの支援プロジェクトが実施されてきた。その中でも、被災したすべての子どもたちを応援するために企画されたのが「スポーツこころのプロジェクト」だ。

このプロジェクトは、日本体育協会、日本オリンピック委員会、日本サッカー協会、日本トップリーグ連携機構の4団体で実行されている。震災後1週間後には、この企画が考えられ、5年の継続を目標に活動が続けられている。この目標年数には、2011年当時に1年生だった子どもが5年生になるまでは必ず続けるという決意を込めた、と「スポーツこころのプロジェクト」運営本部の手嶋秀人さんは語る。

活動のメインは「スポーツ笑顔の教室」だ。これは、青森・岩手・宮城・福島・茨城・千葉の6県55市町村の小学校で、さまざまな競技の選手たちが「夢先生」となって授業を行うものだ。プロフェッショナルとして活躍するスポーツ選手と直に触れあうことで、子どもたちが笑顔や元気、自信を取り戻し、自身の力や可能性について気付いてほしいという狙いがある。

「スポーツ笑顔の教室」は一緒にスポーツを楽しむ時間と、「夢先生」の体験談を聞く時間の2部構成でなされており、これまでに50競技220人を超える選手が授業を担当してきた。毎年500クラスにのぼる数を継続的に実施しているが、その支援はサッカーくじのtotoからの助成金を中心に、大学生のボランティアや1口1万円からの個人からの寄付など、多岐にわたる。

今回は、「夢先生」として活動をしているブラインドサッカーの選手、加藤健人さんにお話を伺った。

障がいを乗り越えたからこそ伝えられる何かがある

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ブラインドサッカー選手である加藤健人選手が「夢先生」になったきっかけは、同じく視覚に障がいを持つアスリートである、フリークライマーの小林幸一郎選手からの紹介だという。

「夢先生は、被災地の子どもたちに明日を生きるための希望の種を見つけてもらい、この先の人生を、強く、しなやかに、なるべく笑顔で生きていってほしいという思いを持って、子どもたちに接している、という話を聞きました。僕はスポーツ選手であり障がい者であるという2つの側面から、子どもたちに夢や希望をもってもらうヒントをうまく伝えられたらいいなと思い、自ら申し出ました」

加藤選手は高校3年生のときに目の病気が発覚し、次第に視力を失っていった。障害によって、自分の可能性に絶望した時に、両親から勧められたのがブラインドサッカーだったそうだ。実際に見学に行くと、アイマスクをつけた選手たちが本当にサッカーをやっていたので、とても驚いたと当時を振り返る。パスやドリブルといった一般的なものは、触覚を頼りにこなせたが、音でボールの位置を把握して、足元に止めるには鍛錬を要した。

練習を重ねるうちに、絶望を乗り越えただけではなく、新たな夢もできたという。それがブラインドサッカーの日本代表になることだった。

「北京パラリンピックのアジア予選で、その夢は叶いました。今は日本代表として初のパラリンピックに出場すること、そしてメダルを取ることが、僕の夢です」

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「僕が最も大事にしている人生のモットーは、『はじめなければ、はじまらない』ということです。視覚障がい者になって、最初は何もできないと思っていたけれど、ブラインドサッカーも日常生活も、やってみたらできることがたくさんありました。やってみる前にできるかできないかを考えてしまい、チャレンジすることをあきらめたくなった経験は、誰にでもあると思います。ですが、自分からはじめてみなければ、何事もはじまらない。一見、困難なことでも、まずやってみて、工夫を凝らしていけばできるようになるということを、障がいを通じて学ぶことができたと思っています」

子どもたちに伝えたい2つのこと

4年という歳月の中で、立ち直りつつあるものもあるかもしれない。しかし自分たちが住んでいる街が被災した経験を持つ子どもたちの傷の深さは計り知れない。しかし、本来「被災地」という地名はない。震災によって受けた痛みや抱える問題は人それぞれ異なる。加藤選手は、「被災者」という枠にはめることへ疑問を投げかける。なぜなら、彼自身が障がい者でもあり、スポーツ選手でもあるからだ。そんな加藤選手の言葉は強く響く。

「どんなピンチに見舞われても、もしかしたらチャンスが転がってくるかもしれない。僕は常に、そう考えています。僕自身、視覚障がい者になったことで、どんな境遇でも夢や目標に向かって努力すること、仲間と協力し合うことの大切さやありがたさに気づくことができました。授業の中では、視力を失った時の深い絶望について必ず話しています。“自ら行動を起こすこと”と“マイナスとプラスに変える気持ちを持つこと”で希望を持つことができることを伝えたい。東北の子どもたちにも未来をつかんでほしい。僕は夢先生として、子どもたちにそのきっかけの一つを与えられたらと思っています」

では、夢を叶えるためにはどうすればいいのだろうか? 加藤選手は重ねる。

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「『信』という字は、『人』と『言』で成り立っています。自分を信じてもらえることと、仲間を信じること。それを成すためには、しっかり言葉で伝えることが大事なのだと、僕は考えています。また、『口』と『プラス』で、『叶』という字になります。つまり夢を叶えるためには、周りにいる人がその人にとってプラスになる言葉をかけてあげることが必要です。僕は周りからプラスの言葉をたくさんもらっています。子どもたちにも、自分の周囲にいる人たちにプラスになる言葉をたくさんかけてあげられる人になってもらえたらと思います」

どうしようもなく抗いがたい困難は、子どもたちはもちろん大人からをも希望の芽を詰むことがあるだろう。しかし、そんな悲しみから立ち直ることは決して不可能なことではない。どんなに辛く悲しい経験をしたとしても、夢は叶えることができるのだ。

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