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シャープが液晶事業の分社化を検討 中国や台湾も出資者の候補に

2015年04月14日 22時30分 JST | 更新 2015年04月16日 01時31分 JST
Reuters

経営再建中のシャープが主力の液晶事業分社化の検討に動き出した。激しい設備投資競争に対抗できる巨額資金を外部から調達する狙いがある。政府系ファンドである産業革新機構だけでなく、中国や台湾の液晶メーカーも出資者の候補になりそうだが、シャープは過半数の株式を手放さない意向。液晶事業の経営権をめぐる駆け引きは難航が予想され、出資交渉は長期化の様相を呈している。

<分社化検討を表明>

シャープの高橋興三社長は9日、中国深セン市で記者団に、経営再建の一環として既存事業の分社化を検討していることを認めた。液晶、テレビ、白物家電、太陽電池など各事業について「ひとまとめで全社でやっていいのかという議論が昨年の早いうちからあった」という。

分社化で最大の効果が見込めるのは、液晶事業の資金調達だ。液晶メーカーは激しい設備投資競争を続けており、韓国勢や中国勢の投資額は年間数千億円にのぼる。しかし、過小資本のシャープの投資計画額は2013年度に235億円、14年度は320億円にとどまる見込み。

シャープの液晶技術はいまだ世界をリードしているが、数年で陳腐化する液晶の設備への投資を継続するためには、外部資金の活用がカギになる。国内勢として同社と競合しているジャパンディスプレイ(JDI)は石川県白山市の新工場建設に1700億円を投じると発表したが、その資金の大半は顧客である米アップルから引き出した。

<革新機構、経営権ねらう>

新たな外部資金の調達に向け、すでにシャープ内部では、産業革新機構の資本活用について検討が始まっている。JDIの35%の株式を握る同機構も、シャープが分社する液晶事業に関心を示す。高精細ディスプレーの市場では、日韓の競争が激しくなっているだけでなく、台湾勢、中国勢の猛烈な追い上げをみせていることに危機感を募らせている。

ある革新機構関係者は「日本の液晶が世界で勝ち残るために何をすべきかだ」と語る。同機構が描いているのは、シャープの液晶へ資本参加した上で、JDIと統合させるというシナリオだ。それにはシャープの液晶事業に過半数を出資して経営権を握ることが必須となる。

しかし、シャープにとって、連結売上高の3分の1を占める液晶は分社化しても、稼ぎ頭の主力事業に違いはなく、グループ外に切り離すことは「考えられない」(幹部)のが現状だ。革新機構との溝は深く、いまだに両者の交渉は進んでいない。

「今の時代、厳しい液晶に少額出資する人は世界のどこにもいない」(革新機構関係者)――。同機構にとってはシャープが液晶の経営権を手放さないことが障壁だ。一方で、ある主力取引銀行幹部は「シャープにとって、過半数を渡すのはむしろいいのではないか」と革新機構への支持を示唆する。

<小規模投資で当面乗り切る>

シャープ関係者は「液晶分社化と外部からの資本調達は同時に実施する必要はない」と話す。分社化後もしばらくは、既存設備や提携工場の活用によって当面の需要に対応。本格的な外部資本の活用は、時間をかけて複数と提携交渉を進めることで、自社に有利なポジションは維持する、というのが同社の考えだ。

液晶担当の方志教和専務によると、巨額の設備投資が必要なLTPS(低温ポリシリコン)液晶と異なり、シャープが注力するIGZO(酸化物半導体)液晶の増産は「古い既存工場のリフォーム程度の投資で実現できる」。このため、当面は小規模投資で乗り切ることができるというのがシャープの主張だ。

当面、主力の亀山第2工場(三重県亀山市)の「リフォーム」で設備投資額を抑え、一段の需要があれば、IGZO技術を供与して提携関係にある中国液晶メーカー「CECパンダ」が6月に稼働する南京工場を活用する方針。

<中国・台湾勢も関心>

方志専務は、CECパンダ以外の技術供与先も「現時点で話はしていないが、視野に入れている」としており、中国メーカーにIGZO技術を供与することで「仲間づくり」を進める考えを示唆している。

今後、液晶新会社の出資者の候補としては、資金の豊富な中国液晶メーカーも有力になりそうだ。中国の液晶メーカーは、京東方科技(BOE)、天馬微電子などLTPS液晶に積極投資しており、「シャープのLTPS技術は喉から手が出るほど欲しがっている」(業界関係者)。

シャープ本体への出資に関心を示している鴻海精密工業は、グループに液晶メーカー、群創光電(イノラックス)を持っており、資本参加でシャープの液晶との連携が可能になる。同じ台湾勢の友達光電(AUO)もLTPS液晶の投資に積極的で、高精細技術に関心が高い。

一方で、シャープが中国や台湾の液晶メーカーと接近すれば「技術流出に無関心ではいられない」(経産省幹部)という日本政府の存在も、今後の交渉を複雑にする。

ドイツ証券の中根康夫アナリストは「液晶の提携先が、中国になるのか、台湾なのか、それとも革新機構なのかはわからないが、シャープにとっては色々な先と交渉して、最もいい相手を選択するのがベスト。その見極めは1年くらいかかるだろう」と交渉の長期化を予測している。

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