地域の見守りを陰で支える女性たち。「ヤクルトレディ」の知られざる活動とは

2016年03月23日 00時30分 JST | 更新 2016年03月23日 00時30分 JST
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■地域コミュニティの役割の中で重要性を増す「見守り活動」

地域コミュニティの崩壊がいわれて、久しい。戦前まで日本では、地縁や血縁によって固く結びついた集落がその役割を担ってきた。しかし、戦後の経済成長が急激な人口の変動と移動を招き、人口分布が大きく変わることで、都市部、地方部のいずれにおいても、集落はその機能を十分に果たせなくなった。

集落に代わる地域コミュニティづくりは、待ったなしのところまできてしまった。なぜなら、すでに日本は世界でも類を見ないほどの少子高齢化社会に突入し、それを乗り切るためにも地域コミュニティの支えが欠かせないからだ。

私たちの身の回りの子どもをめぐる犯罪や事故、高齢者の孤独死などのなかには、地域の見守りや支え合いがあれば、防げたケースもあるはずだ。地域コミュニティに期待される役割は、とても大きい。

地域コミュニティが果たすべきさまざまな役割の中で、今後より重要性を増すのが、いわゆる「見守り活動」へのかかわりだろう。平成24年の改正介護保険法によって、高齢者が地域で自立した生活を営むことを可能とする地域包括ケアシステムの構築が、国および地方公共団体の責務として規定された。ここでは、医療、介護、予防、住まいといった項目と並んで、「見守り」などの生活支援が高齢者を支える重要な取り組みとして位置付けられている。

もっとも、行政がその責務を果たすにしても、充てられる予算や人手を考えれば、見守り活動の主体はやはりそれ以外のところが担わざるを得ないのが現状だ。住民同士がさりげなく気遣い合い、困ったときにはお互いに助けを求められるような地域コミュニティづくりが求められている。

■ 地域を見守り続けて40年。ヤクルトレディの取り組み

日本全国の地域コミュニティに深くかかわり、40年以上も前から地域の見守り活動に貢献し続けている企業がある。それがヤクルトだ。

看板商品の乳酸菌飲料「ヤクルト」は、スーパーマーケットやコンビニエンスストアなどの小売店での販売に加え、女性スタッフのヤクルトレディが個人へ宅配、販売を行っている。会社や住宅街で、制服に身を包んだ女性販売員の姿を目にしたことのある人も多いのではないだろうか。一方で、彼女たちが地域見守り活動に参画していることは意外と知られていない。

1972(昭和47)年、福島県郡山市のヤクルトレディが、自分の担当地域で誰にも看取られずに亡くなった独り暮らしのお年寄りの話に胸を痛め、同じように独り暮らしをしているお年寄りに自費で「ヤクルト」を届けた。

彼女の行動に、ヤクルト販売会社や地域の民生委員が共鳴し、やがて自治体までも動かし、「愛の訪問活動」として助け合いの輪は全国に広がっていく。

2015年3月現在、全国142の自治体と「愛の訪問活動」に関する協定を締結しており、4万5000人を超える高齢者に約3400人のヤクルトレディが定期的に商品を届けている。その際に会話などをして安否を確かめ、万が一、通常と異なる状況の時にはあらかじめ決められた方法により、関係先に連絡するなどのアクションを起こす。

訪問活動の中で、具合を悪くして倒れていたところに遭遇した、ガス漏れを発見したといった事例もある。日常的に訪問している彼女たちが、わずかな異変を察知し、細かく報告した成果と言える。

こうした見守り活動は、高齢者個人を対象にしたものばかりではない。「愛の訪問活動」とともに、「地域の見守り・防犯協力活動」も行っている。

不審者を発見したら通報する。犯罪への注意を促すチラシを配布する。センターに「子ども110番」のステッカーを掲げて子どもたちの避難場所にする。商品配達時に「安全パトロール」のステッカーをつけてパトロールする。こうした活動は地域の安全・安心への協力に主眼を置いている。

■ 少子高齢化時代の地域コミュニティづくりには、企業の力が欠かせない

増え続ける独り暮らしの高齢者の安全確保を目的として、センサー・機器などで見守り・安否確認サービスを行う企業を案内している自治体もある。いうまでもなく、テクノロジーの有効活用は必要だ。しかし、ただ生命の安全を確保するばかりでなく、QOLにまで目を向けるのならば、やはり人と人とのつながりによるセーフティネットに勝るものはない。

phto

ヤクルト本社は、ヤクルトレディによる家庭への宅配システムという独特のビジネスモデルが、今後ますます地域の課題解決にも貢献できると考えている。

地域住民、自治体に加え、その地域を回ってビジネスを行う企業の力をどう活かしていくかが、少子高齢化時代の地域コミュニティづくりのカギを握っているといえそうだ。