自殺しようとした妊娠中のネイティブアメリカンの女性、止めに来た警官が射殺

「私たちは主要なメディアで取り上げられなくなりました」

アメリカ・ワシントン州で妊娠しているネイティブアメリカンの女性が10月21日、生活安全と安否確認で訪れていた保安官代理に射殺された。

シアトル・タイムズによると、妊娠5カ月のシングルマザーだったレニー・デイヴィスさん(23歳)はその夜、マックルシュート族居留地で3人の子供のうち2人と過ごしていた。乳姉妹のダニエラ・バーガラさんによると、彼女には鬱の症状があったという。

キング郡保安官事務所のシンディ・ウェスト報道官はハフポストUS版の取材に「デイヴィスさんはボーイフレンドに、鬱で苦しいというテキストメッセージを送った」と述べた。

マックルシュート居留地は、キング郡保安官事務所が治安維持をすると取り決められている

「そのボーイフレンドは、パトロール中の保安官代理を呼び止めてメッセージを見せ、『彼女は銃を持っていて自殺しそうだからすぐに向かってほしい』と言いました」と、ウエスト報道官は言った。「彼女は腕を傷つけた写真もボーイフレンドに送っていたほか、『これで私が真剣だと分かるでしょう』とも言っていました」

その後に何が起きたかは今のところ不明だ。保安官代理が午後6時30分頃、デイヴィスさんの自宅に到着した。その時、保安官代理のひとりがデイヴィスさんを射殺した。

「とても動揺しています。警察は彼女の安全を確認しに行ったのですから」と、バーガラさんはシアトル・タイムズに語った。「彼女は明らかに体調を崩していたんです」

妊娠中のシングルマザー、レニー・デイヴィスさんが、安否確認のためにワシントンの居留地にある彼女の自宅に呼ばれた警官に殺害された。

保安官事務所は、デイヴィスさんとどういうやり取りがあったのか詳細を公表していないが、「デイヴィスさんが自殺する可能性があるとの通報を受けた」と、ハフポストUS版に声明を出した。

「保安官代理はドアをノックしたが、応答がなかった。子供たちが家の中を走り回っていたが、誰も玄関に出てこなかった。2人の保安官代理が中に入り、女性と子供の安否を確認した。女性は家の中で拳銃を手にしていた。警官は女性に発砲し、少なくとも一発が女性に命中した。救急隊が呼ばれたが、23歳の女性はその場で死亡が確認された。

2人の保安官代理は有給休暇中のため、捜査は中断している。声明によると、この2人の保安官代理は事情聴取に応じ、詳細を発表する予定だという。

バーガラさんによると、デイヴィスさんは「柔和な人」で、暴力を振るうことはなく、アウトドアが好きだったという。デイヴィスさんは以前、幼稚園でアシスタントとして働いていた。

青少年・刑事司法センター」の調査によると、1999年〜2011年にアメリカ国内で警官に殺害された人種の中で最も多いのはネイティブアメリカンだ。(人種と年齢の内訳では、20歳から24歳のアフリカ系アメリカ人が一番多く殺されている)。

インディアン・カントリー・トゥデイ紙のジャーナリスト、サイモン・モヤ・スミス氏は2015年、ニュースサイト「Mic」のインタビューで、「ネイティブアメリカンに対する警察の暴力事件は、ニュースに取り上げられなくなっています。黒人たちの抗議運動『黒人の命だって大切だ』に呼応した『ネイティブアメリカンの命も大切だ』の運動も同様です」と語った。

「私たちは主要なメディアで取り上げられなくなりました。インディアンのマスコットはよく登場するかもしれないが、警官の暴力は取りあげられません。たとえ取りあげられたとしても、ほんの少しです」

また、精神疾患を抱えた人々への警察の暴力が、アメリカで注目を浴び始めている。アメリカ大統領線の民主党候補ヒラリー・クリントン氏は、1回目のテレビ討論会でこの問題に触れた。それでも、警察による精神疾患患者の対処には、未だに多くの問題がある。

アメリカでは、警官は平均60時間の銃の訓練を受けるが、銃の乱用を防止する訓練はたったの8時間だ。また、危機介入訓練も8時間だけだ。

適切な訓練が不足していることで、悲劇が生まれる。ワシントン・ポストが2015年に行った警察による射殺を追跡した調査によると、警官による殺害の4件に1件は精神疾患を抱える人が関与している。ほとんどの場合、個人の健康状態に恐怖を感じ、助けを求める友人や親類、近隣住民によって警察が呼ばれている。

警察が普通と考えている戦術は、精神的に健康でない人が関与したとき、悲惨な事件となる。

例えば、叫び声を上げている人に銃を向けるのは「それが精神疾患を抱えた人である場合、火に油を注ぐようなものだ」と、アメリカ精神疾患患者家族会(NAMI)のロン・ホルバーグ氏はワシントン・ポストに語った。

NAMIは、親族が精神的に不安定なときに、警察を呼ぶ必要があると感じている人にガイドを提供している。できるだけ安全な状態を確保するために、警察にどのような情報を伝えるべきかアドバイスしている。

他には、刑務所廃止運動を進める団体「クリティカル・レジスタンス」が、警察を呼ぶ前にできることはたくさんあると市民に警告している。警察から暴力を受ける危険性が増大しているからだ。

ハフポストUS版より翻訳・加筆しました。

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