「『カルピス』には約100年間注ぎ足してきた"秘伝の原液"がある」 日本初の乳酸菌飲料の伝統と新たな挑戦から「カラダカルピス」が生まれた。

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日本初の乳酸菌飲料として、「カルピス」が売り出されたのは1919年「七夕」のこと。甘ずっぱい風味と爽やかなのどごしは、大正の時流に乗って瞬く間に大ブレイク。今なお定番ドリンクとして、幅広い世代に親しまれている。

だが、そもそも「カルピス」はどのようにして生まれたのか? 約100年愛されるカルピスの謎と歴史について、アサヒ飲料株式会社マーケティング本部で課長補佐を務める荒川浩一さんに聞いた。

■日本初の乳酸菌飲料のルーツはあの国の遊牧民だった

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アサヒ飲料株式会社マーケティング本部課長補佐、荒川浩一さん。

――「カルピス」は日本初の「乳酸菌飲料」だそうですが、どのような流れで誕生したのでしょうか。

歴史は明治末期にまでさかのぼります。ルーツとなっているのは、のちに「カルピス」の生みの親となる三島海雲(かいうん)が訪れた内モンゴル。長旅で体調を崩していた彼が現地の遊牧民にふるまわれたのが、乳を乳酸菌で発酵させた「酸乳」と呼ばれる飲み物でした。そのおいしさと健康効果に衝撃を受けた三島が現地で製法を学び、帰国後に研究を重ねて誕生したのが「カルピス」です。

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発売当時の「カルピス」と、生みの親 三島海雲。

――基本的な作り方は創業当初からずっと変わっていない?

はい。現在も大正時代から続いている「カルピス菌」の原液を注ぎ足して作り続けています。うなぎ屋さんの「秘伝のタレ」のようなものですね。「カルピス菌」が失われてしまえばその時点で終わり。「カルピス」は二度と作れなくなります。原液は「カルピス」の命ですね。

――太平洋戦争も挟んでの約100年間、守り続けるのは大変だったのでは?

戦時中は空襲の危機から原液を守るため、一時疎開させていたと聞いています。

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戦後(1946年)に再建された東京工場と「カルピス」初荷トラック(1949年)。

ひとたび失われてしまうと、「カルピス」は存続できなくなってしまいますから、当時の社員の判断は的確だったと思います。また、万が一の事態に備えて保管している「カルピス菌」のありかは現在も社内のトップシークレットで、場所を知っているのは全社員の1%以下。上層部と現場の管理者のみといわれています。もちろん僕も知りません。むしろ教えてほしい(笑)。

■「カルピス」由来の乳酸菌研究によって長年かけて辿り着いた「体脂肪を減らす乳酸菌」と世界初の技術

――秘伝の原液に象徴される伝統を守り続ける一方で、研究開発にも積極的ですね。

薄めずすぐに飲める「カルピスウォーター」をはじめ、果汁フレーバーや炭酸タイプ、カロリーゼロタイプなど、長い歴史の中で時代のニーズに応じて、さまざまな「カルピス」が生み出されてきました。乳酸菌の研究も長年続けており、その最新の成果のひとつが、今年4月に誕生した「カラダカルピス」です。

「カラダカルピス」誕生のきっかけは今から約10年前。現代のライフスタイルに合った「体脂肪を減らす乳酸菌」に着目し、膨大な微生物ライブラリーの中から乳酸菌の選抜を進めた結果、CP1563株という乳酸菌が最も体脂肪低減に効果が高いことがわかりました。

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乳酸菌CP1563株の活用技術は、研究員の試行錯誤により生まれたものです。というのも、この乳酸菌をそのまま飲んでも、効果が思ったほど高くなかったんです。じゃあどうするか? と試行錯誤の末に辿り着いたのが、乳酸菌を凍結・乾燥した後に「丸ごと砕く」というステップを入れることでした。

乳酸菌を機械で細かく粉砕すると、中の成分が出てくるんですね。その結果、体脂肪低減に関わる成分が体内に吸収されやすくなり、体の脂肪がエネルギーに変換されます。実はこれ、世界初の技術なんです。

また「カラダカルピス」は脂肪の吸収抑制ではなく、すでについている脂肪を減らす機能なので、食事中に限らず体脂肪対策ができます。

パッケージのデザインは、「カルピス」の象徴である水玉模様をモチーフにしつつ、縦に青い線を入れることで、新しい「カルピス」の商品が出たと感じさせることや、大人も手に取れる印象になることを意識しました。

■これからは体の健康、心の健康、どちらも同じく価値がある

――およそ100年の歴史を踏まえつつ、これからの時代に求められる「カルピス」はどのようなものだと思われますか?

これからの時代は日頃の体調管理をベースとした健康意識がますます高まってくると考えています。その意味では乳酸菌と酵母、発酵という自然製法をベースにしながら、健康価値を大切にした商品を作るスタイルは、この先も大事に守っていきたい。

calpis時代のニーズに合わせて、さまざまな研究開発がなされてきた。その最新成果が「カラダカルピス」だ。

一方で、心の健康にも体の健康と同じくらい価値があります。飲んだときにリラックスできるようなおいしさももちろん大切にしていきたい。その両面をこれからも追求していきたいですね。

(取材・文:阿部花恵 / 撮影:西田香織)