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自分の土地なのに入れない…沖縄・高江の米軍ヘリ墜落で噴出した"矛盾"

2017年10月13日 19時33分 JST | 更新 2017年10月16日 15時35分 JST
JINHEE LEE
米軍ヘリが不時着・炎上した民間の牧草地=10月12日、沖縄県東村

10月11日午後5時20分ごろ、沖縄県北部の東村(ひがしそん)高江(たかえ)で、民間の牧草地に米軍のヘリコプターが不時着、炎上した。機体は大破した。けが人はいない。地元メディアによると、事故機に乗っていた米軍関係者ら7人は荷物を持って逃げ出し、別のヘリで現場を去ったという。在日米海兵隊によると、事故機は普天間飛行場第1海兵航空団のCH53大型輸送機で、定期訓練飛行中に機内で火災が発生して「緊急着陸」を余儀なくされたという。

事故現場は、県道70号に近く、民家からわずか300メートルほどの地点だ。周辺は、米軍北部訓練場の森と太平洋に囲まれている。訓練場には15カ所のヘリコプター着陸帯があり、離発着訓練などが日常的に行われている。

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「墜落」したように見える米軍ヘリの残骸=10月12日、沖縄県東村高江

事故現場の近くに住む住民は、炎上時について、「山火事とは明らかに異なる、見たことのない真っ黒な煙が上がっていった」「機械と燃料が燃えたような異様な臭いが漂っていて、気持ち悪かった」と話した。沖縄県によると、放射性物質などが飛散した恐れがあるという。米側と調整がつき次第、県環境部が調査を行うとしている。

12日午後、私は、太平洋を望む牧草地の真ん中に事故機の姿を確認した。炎上して真っ黒に焦た無残な鉄の塊は、やわらかい緑色のグラデーションが織りなす大自然の中で、不法投棄された異質な廃棄物のように見えた。

◾️米軍ヘリ炎上の現場は、花と水とパインの村

事故現場は、沖縄本島北部の東海岸に位置する。北部は「山原(やんばる)」と呼ばれ、沖縄本島で最も自然豊かな地域として知られている。那覇からの道のりはおよそ100キロで、沖縄自動車道を経由すると、約2時間で到着する。

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高江の事故現場に向かう途中の風景=10月12日午後、沖縄県東村

東村の人口は約1700人。村は、毎年3月開催のつつじ祭り、県最大の福地ダム、生産量日本一のパイナップルで有名だ。「花と水とパインの村」をキャッチフレーズにしている。近年は、豊かな自然を活用したエコツーリズム、農業や暮らしが体験ができるグリーンツーリズムなどの体験型観光にも力を入れる。東村の天然水はブランドとしての価値があり、沖縄県限定で同名の飲料水が販売されている。

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高江への道中にある東村の看板=10月12日、沖縄県東村

高江地区にはおよそ140人が暮らしている。地元の住民は高江の環境について、「のどかで空気が一番おいしい場所。海抜160メートルほどの高台で、マイナスイオンも非常に多い。それが自慢だ」と話した。

◾️自分の土地に入れない矛盾

事故現場から数百メートル離れた最寄りの民家に住む渡久地政久さん(78)は、周辺で日常的に米軍機が訓練を繰り返す様子について、次のように語った。

 自宅そばの基地(米軍北部訓練場)からヘリが低空で上がってきて、(自宅に隣接する)牧草地から海に出て旋回する。そんな訓練を繰り返している。夜遅いときは11時まで飛んでいる。低空で上がってくると、自宅のテレビ画面が振動でジラジラして見えない。

 米軍機は、自宅から2、3キロ離れた農場の近くでも発着する。ハウスで作業していると、すごい音で飛んできて通気口がガタガタ震える。

渡久地さんの所有する牧草地には、これまで2度以上、エンジントラブルを起こした米軍機が不時着した。その度に、米兵は、牧草地に近づこうとする渡久地さんを「ダメダメ、入るな」と制止したという。

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かつて米軍機が不時着した、自宅横の牧草地で話す渡久地さん=10月12日午後、沖縄県東村高江

米軍関連事故のたびに明らかになるのは、日米地位協定の壁だ。事故が日本で起きているにもかかわらず、土地所有者、捜査当局、報道関係者をはじめとした日本側の当事者が、現場への立ち入りを制限される。12日午後、事故現場で、日本当局が米側の便宜のために規制線を引き、日本関係者の自由な行き来を規制していた。

沖縄県の翁長雄志知事は12日正午すぎ、事故現場を視察後、「悲しい、悔しい、そして怒り」と感情をあらわにした。同日、岸田文雄自民党政調会長との会談では「日本国民として悲しい気持ちでいっぱいだ」と話した。日本なのに日本ではない。この矛盾が、米軍ヘリ炎上事故の起きた沖縄で、改めて露呈している。

Jinhee Lee
現場への立ち入りを制限され、規制線の外の民家の屋根から取材する報道関係者ら=10月12日、沖縄県東村高江