アート&カルチャー

『ドザえもん展』を開く理由とは? 作者は訴える「ユーモアを受け入れない社会にならないで」

タブーに挑戦する美術家、岡本光博さんにインタビューしました。

2017年12月01日 17時24分 JST | 更新 2017年12月03日 16時59分 JST

岡本光博さん提供
横浜寿町での屋外展示された際の「ドザえもん」(2017年夏、居原田遥さん撮影)

ぼく、ドザえもんです。

......と言いたくなるようなアートを扱う展覧会が開かれる。その名も「THE ドザえもん展 TOKYO 2017」。東京・神楽坂のギャラリーeitoeikoで12月2日から23日まで開催される。

国民的な知名度を誇るキャラクターによく似た物体が、うつぶせで水面に浮かんでいる。水死体のたとえとして使われる「土左衛門」という言葉をモチーフにした言葉遊びの作品だ。

 

■制作したのはタブーに挑戦する作品で知られる作家

岡本光博さん提供
ベニヤ板で覆われた「落米のおそれあり」

「ドザえもん」を制作したのは、京都在住の美術家、岡本光博さん(49)。社会問題や著作権など世間ではタブーとされる題材を積極的に扱うことで定評がある。

代表作は「偽造品の販売を肯定する」としてルイ・ヴィトン社から抗議を受けた「バッタもん」、カップ焼そば風の巨大オブジェを地表に埋めた「UFO(未確認墜落物体)」など。

11月には米軍ヘリ墜落を描いた「落米のおそれあり」は沖縄県・伊計島のアートイベントで描いたが、地元の反対でイベント開催前日のベニヤ板で覆われて公開を禁じられてしまった。

 

■「ドザえもん」が生まれたわけ

岡本光博さん提供
橋本修一氏によるCGをターポリンにインクジェットプリント(部分)

「もともと、ドザえもんは僕が1992年に大学の卒業制作として作った作品の一つです。『アートは人に考えさせられるような作品でもあるべき』『アートに日本語はそぐわない』という既成観念がありました。そこで、あえて見た瞬間に日本語で分かる作品をと考えた結果、思いついたのが『ドザえもん』でした。もともと僕は『ドラえもん』が大好きで子どものころから普通に読んでいました」

岡本さんは、京都市内の古民家を改造したギャラリー「KUNST ARZT」(クンスト・アルツト)で答えた。

「卒業後も、日本各地でドザえもんの展示を続けてきました。今回の制作のきっかけは、夏に六本木ヒルズに行った際に、等身大のドラえもん人形が大量に並んでいて、強い違和感を持った体験が大きいです。『ドラえもん』は子供のころから好きな作品ですが、作者の藤子・F・不二雄さんが亡くなられても、増殖を続けるコンテンツって何だろうと思いました。それこそ一種のゾンビじゃないですか。六本木ヒルズでの『ドラえもん展』と同じタイミングで『ドザえもん展』を開こうと思って企画しました」

岡本さんが意識した「THE ドラえもん展 TOKYO 2017」は、六本木ヒルズ・森アーツセンターギャラリーで11日1日から2018年1月8日まで開催中だ。村上隆さんや奈良美智さん、会田誠さんら日本を代表する現代アートの作家らが参加しているが、岡本さんには声がかからなかった。

「まあ、僕にはかからないでしょう。『ドラえもん展』には非常に才能の豊かな作家が参加しています。ただ、社会問題をえぐるような作品も描ける方も忖度なのか、全く毒のないドラえもん展出品予定作品にがっかりしたことも、『ドザえもん展』を開くモチベーションに繋がりましたね」

 

■「ユーモアを受け入れない社会にはなって欲しくない」

岡本光博さん提供
「ドザえもん」ライトボックス(アクリル板、LED)

岡本さんによると『ドザえもん』は"オリジナル"作品だが、それにしてもギリギリのネーミングとコンセプトだ。これまでの展示で抗議を受けた経験はないのだろうか。

「この作品に関しては、抗議を受けたことはありません。『ドラえもん』は今や国民的なコンテンツになって、ある種パブリックな存在になっています。それに対するユーモアすら受け入れられないような社会には、なって欲しくないと思っています」

もし法的な措置などを取る組織がいた場合には?と質問を投げかけた。「逃げも隠れもしない」という岡本さんは、落ち着いた様子で次のように答えた。

「金銭的な体力もないし、戦い続けるのは難しいでしょう。でも、もし作品に対して何かアクションがあった場合には、その過程も含めて展示するというのが『ドザえもん展』の基本コンセプトになっています」

今後が気になるところだが、岡本さんは最近うれしいことがあったと明かした。漫画の巨匠・手塚治虫さんの長女、手塚るみ子さんがTwitterで「ドザえもん」にエールを送ったのだ。

このツイートに、岡本さんは勇気づけられたという。

「藤子・F・不二雄さんの師匠でもある手塚治虫さんの長女がこうした発言をしてくれたのは、とても光栄です。襲うなんてとんでもないので、そっと触れていきたいですが、著作権やアートに対する理解のある姿勢には救われました」

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