40代のツアー旅行ひとり参加がおすすめな理由 益田ミリさんに聞いてみた

「世界の美しいもの」を書き出してみることからはじめました。

「美しいものを見ておきたい。40歳になったとき、なぜか急き立てられるような気持ちになりました」

北欧のオーロラ。フランスのモン・サン・ミッシェル。リオのカーニバル......。世界にあるたくさんの「美しいもの」を見てみたい。

イラストレーターの益田ミリさんは、そう思い立って、世界中あちこちのツアー旅行にひとりで参加し、エッセイ『美しいものを見に行くツアーひとり参加』(幻冬舎)を描いた。

「一瞬だけ違う人生を生きられるような感覚がありました」と語る益田さんに、話を聞いた。

Kaori Sasagawa

40代も、何か新しいことがしたかった

――40歳を目前に控えて、「急き立てられるような気持ち」で「美しいものを見ておきたい」と思ったのはなにか理由が?

実は30代のとき、日本全国をひとり旅したことがあるんです。それまでひとりで旅行なんかしたことなかったんですが、日本には47都道府県あるんだし全部行ってみようと。のちに『47都道府県女ひとりで行ってみよう』という本になったんですが、私が旅行記を書くきっかけになりました。

そんな経験から、40代も自分なりの新しい旅がしたいなとは思っていたんですね。30代後半になり、「美しいもの、きれいなものを見ておきたい」という気持ちが自然に湧き上がってきて。それで、まずは自分が思う「世界の美しいもの」を書き出してみることからはじめました。

――何個ぐらい挙がってきましたか。

7、8個くらいだったかな。雑誌やテレビで見て、「きれいだなぁ、行ってみたいなぁ」と思った場所です。実際に行ったドイツのクリスマスマーケットや、フランスのモンサンミッシェルなどの他にも、カナダのプリンスエドワード島や、スイスの山などリストに入っていました。万里の長城も入ってたかな。いつか行ってみたいです。

ツアー旅行へのひとり参加がおすすめな理由

――自由度の高い個人旅行ではなく、「添乗員が同行するツアー旅行」への「ひとり参加」にしたのはなぜでしょう。

海外ひとり旅は不安という方って、結構、多いんじゃないでしょうか。実際、わたしもそうでした。かといって、自分が行きたい場に毎度つきあってくれる友達を探していたら、なかなか出発できません(笑)。「じゃあ、団体ツアーにひとり参加するってどうかな?」と。41歳のとき、思い切ってオーロラツアーに申し込んでみました。

――「ひとり参加」でも大丈夫でしたか?

やっぱり初めてのことだったので、行く前はドキドキしてたんですよ。みんなが盛り上がってる中で、私だけポツンとなっちゃったらどうしよう、と。

でも、ひとり参加の方って、案外いらっしゃって。浮く感じにはならなかったです。みんなで観光もするし、自由時間はひとりでふらっともできる。それがわかってからは気楽になりました。

『美しいものを見に行くツアーひとり参加』/益田ミリ

――団体ツアーといっても、いつも全員が一緒に行動するわけじゃないんですね。

そうそう。北欧のオーロラツアーでも、自由行動の日があったんです。トロムソという街に泊まったときは、ホテルが山のほうだったので、日中は、ひとりバスに乗って繁華街まで出てみました。団体ツアーですが、ひとり旅気分も味わえるんです。

エッセイでも書きましたが、雪の街を散策中、入ったチョコレートショップの店員さんとのやりとりなども楽しい思い出です。困ったことが起こったら、添乗員さんに連絡することができるという安心感もありました。

一瞬だけ、違う人生を生きられるのが旅の醍醐味

――その後もドイツのクリスマスマーケット、フランスのモン・サン・ミッシェル、リオのカーニバル、台湾の平渓天燈祭と、益田さんが「美しい」と感じる風景を訪れる旅は続きます。5つの旅のうち、3つが〝お祭り〟ですね。

あ、本当ですね。お祭りって、その時にだけ見られる「美しいもの」。憧れは強かったんだと思います。

とはいえ、人出も多いし、個人ではホテルも押さえにくいだろうし。そう考えると、お祭りこそ、団体ツアーが便利かもしれません。ブラジルのリオのカーニバルに、まさか自分が行けるなんて思いもしませんでしたから。

――リオのカーニバルは究極の祝祭という感じがしますよね。

夜の9時からスタートして、カーニバルは、なんと朝までつづいたんです。みんなで観光バスで朝帰り(笑)。さすがにクタクタになりましたが、「見られた」という清々しさがありました。

世界各国から旅行者が集まってきていているので、みなさん、カーニバルの楽しみ方もそれぞれでした。それを観察するのもおもしろかったです。一緒になって激しく踊っている人もいれば、お酒や食事を楽しみながら観ている人も。わたしたちのツアーは、旅行会社からおそろいの「はっぴ」を渡されて、みんなで着てました。祭りだし、ってことですかね?

ブラジルはもちろん初めてですし、食べ物が合うのかな、という心配はあったんですけど、わたしはどれも好きな味でした。特に果物。毎朝、ホテルでもりもり食べてました。

『美しいものを見に行くツアーひとり参加』/益田ミリ

――無理かな、ダメかも、と思っていたけど、意外と大丈夫な自分を発見できたんですね。

発見といえば、オーロラを見て、大自然の美しさに圧倒されて帰国しますよね。そうしたら、普段の夕焼けを、より美しく感じるようになりました。オーロラも美しかったけど、夕焼けだって美しいなぁ、と。

そういえば、20代の頃の旅行って、お土産もいろいろ買いたいから忙しかったけど、そういう部分は薄まった気がします。これも発見といえるでしょうか。

――40代ならではの旅がある?

ツアー旅行での移動中、バスの窓からヨーロッパの街の風景を見ていたとき、一瞬だけ違う人生を生きられるような感覚がありました。

もしも自分がこの街で暮らしているなら、あの店に入っているかもしれない。あの人と友達かもしれない。今の自分の人生を思いながら景色を見る感覚っていうのは、大人ならではの楽しみなのかもしれません。

(取材・文:阿部花恵 編集:笹川かおり)

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