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ドイツと日本で、アメリカの地位は悲劇的局面に陥る

2014年07月24日 16時10分 JST | 更新 2014年09月22日 18時12分 JST
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ドイツと日本は、第2次世界大戦からの復興に長い時間がかかった。両国は軍事占領という屈辱に耐え、将来にわたって平和への脅威にはならないと保証することで、ようやく独立を回復したのだった。ドイツの新憲法は、軍事力を自衛と集団安全保障への参加のみに認めた。日本の憲法9条はさらに踏み込んだ。「国権の発動たる戦争と、武力による威嚇又は武力の行使は、国際紛争を解決する手段としては、永久にこれを放棄する」と定めた。

この戦後体制が、我々の目の前でほころびつつある。1940年代を生きた戦中派のドイツ人と日本人は次々と鬼籍に入っている。代わって、自国の利益を新たな方法で定義しようとする世代が台頭している。1989年の東西冷戦終結以降、ドイツや日本は自分たちの代わりにアメリカが戦ってくれることを当てにできなくなった。たしかに、アメリカが軍事介入すれば自国の利益に深刻な損害をもたらすかもしれない。イラク戦争の悲劇がそれを物語っている。

ドイツと日本がアメリカと距離を置く一連のお膳立ては整った。斬新な政治手法でも用いない限り、ひとたび問題が生じたら、長い時間をかけて構築された相互理解に重大な懸念が生まれることになる。ここ10~20年の間、ドイツと日本は根深い不信感を持ってアメリカを見ていたのだろう。しかし、アメリカとドイツまたは日本との同盟関係が現代社会において揺るぎないものだったからこそ、オバマ政権は、その関係が将来にわたって安泰だと無条件に考え、政治の基本原理を再検討することなく、重要な政策決定を国防総省や中央情報局(CIA)の思うままにさせてきた。

先般のドイツ発のニュースで明らかになったのは、杓子定規に事を進めることの恐ろしさだ。ドイツから見ていこう。冷戦時代、CIAは絶えず西ドイツ政府に潜入しようとする共産主義者と対峙することで存在意義を見出していた。しかしアメリカは、KGB時代に比べて明らかに劣化したとはいえロシアのスパイ活動の脅威に対処する意味でも、現在のドイツ政府を信頼すべきである。にもかかわらずCIAは基本原理を再検討することなく、旧態依然とした活動を続けている。

さらに悪いことに、ドイツのメルケル首相がベルリン駐在のアメリカ大使館で情報収集活動を行っていたCIA支局長の国外退去を命じたとき、オバマ政権は真剣に取り合おうとはしなかった。それどころか、メルケル首相が「インテリジェンス・コミュニティ」(政府内の複数の情報機関の活動を調整し、情報を一元化する組織)の行動原理を公然と非難したとき、不快感を表明したのである。オバマ政権はメルケル首相の意思表示を、二国間関係を劇的に再構築するための好機ととらえるべきだった。ドイツの世論調査によると、アメリカが信頼できる国と考えるドイツ国民は27%にすぎず、46%は侵略的な軍事力だと考えている。

日本では、集団的自衛権の解釈がさらに深刻な悪影響を及ぼしつつある。安倍晋三首相は復古主義的なナショナリストで、自ら総裁を務める与党・自民党に対し、戦後の日本国憲法が連合軍の占領政策によって不当に押しつけられたものと貶めるキャンペーンを主導している。安倍首相の最初の標的は憲法9条で、彼は当初、憲法で定められた国民投票を実施して9条を破棄しようと模索した。この戦略が世論と国会から大きな反発を受けると、安倍首相は方針を転換し、憲法改正を伴わない手段によって同じ成果を得ようとしている。

7月1日、安倍首相は閣議決定で憲法を「解釈変更」し、憲法が「永久に」放棄するとしてきた「武力による威嚇又は武力の行使」を認めると発表した。これは半世紀にわたる憲法解釈を覆したものだ。

こうした動きは、1960年以来の大規模な抗議運動を引き起こし、世論調査でも反対が急激に増えた。これを受けて、日本政府は9月に予定していた関連法案の審議を先送りし、より時間をかけて議論することを約束した。

もし安倍首相の目論見が成功すれば、彼の急進的な解釈改憲は、自民党が憲法改正案で掲げる、日本国憲法が保障する民主政治の基本原理、そして社会的権利を打破する先例となる。安倍首相が政治生命を賭けているとも言えるこの大博打に対し、今後数カ月は現代日本史上で最も重要な議論が展開されるだろう。

しかしここで、アメリカのヘーゲル国防長官が口を挟んできた。しかも議論を誤った方向に持って行ってしまった。国防総省の記者会見で、ヘーゲル長官は安倍政権の「大胆で歴史的で画期的な決定」への「強い支持」を表明したが、そこに重大な憲法上の問題が含まれていることは言及しなかった。

この発言は、日本のみならずアメリカも重大な転換を果たしたことを意味する。アメリカが半世紀にわたって支持してきた憲法秩序を否定したからだ。安倍政権のクーデター的な解釈改憲にお墨付きを与えた画期的な発言ではあったが、国防総省の記者会見という場でヘーゲル国防長官にアメリカの立場を表明させるべきではなかったし、この問題は大統領自らがホワイトハウスで表明すべきことであった。そしてアジアの自由民主主義の将来に与える致命的な影響について、国務省で協議した上で発表すべきだったと言える。

しかしケリー国務長官とオバマ大統領は、中東や他の地域での紛争に時間をとられすぎているため、アメリカの国家戦略に関わる大きな問題に集中できなかった。ドイツのCIAスパイ問題と同様、アメリカはドイツ、日本との戦後パートナシップ関係を見直すことなく、国家安全保障当局に任せきりにしている。

日独の動きはアメリカへの警鐘だ。オバマ政権は喫緊の課題の中から、本当の意味で国家の根幹に関わるものを切り分けるべきだ。アメリカが戦後続けてきた二国間関係を再考しなければ、独裁的な手法をとる日本、そしてアメリカと決定的な亀裂が生まれたドイツというリスクを抱えてしまう。その結果、20世紀で最も貴重な遺産が破壊されることになる。

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