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サイボウズ式:サイボウズのPC標準機はどれもメモリ32GB積んでるって、正直ムダじゃないですか?

2017年05月26日 23時31分 JST

エンジニアの間で話題になったこちらのツイート。

山本泰宇(@ymmt2005)さんは現在サイボウズの執行役員で、元CTO(最高技術責任者)。さらにはリードプログラマとしての活躍を経て、現在は運用本部長として情報システム(以下、情シス)部のマネジメントにも携わっています。

バリバリコードを書いていたのに、今は社内のPC環境を整えたりしている。そんな変わった経歴をもつ山本に、サイボウズの情シスのあり方を聞きました。

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ymmt:システム企画は従業員の困りごとを解決するため、社外製品の検討や自社サービスのカスタマイズを行う部署。シスアドはActiveDirectoryやWindowsServerのサーバー管理、営業管理システムCiscoの統合管理を行います。サービスデスクは社員PCの故障や問い合わせなどの相談を受け付けるヘルプデスク業務を行ってます。

仁田坂:なるほど、わりと仕事ありそうですね......。情シスの人って何しているんだろう。ずっとTwitterしているんじゃないかと思っていました。

ymmt:オープンな会社ですので、誰が何をやっているかは大体わかります。うちのオフィスの人間、全然ツイートしてないんですよね。業務中はわたしが一番つぶやいてるかもしれない......。

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山本泰宇(やまもと ひろたか)。プログラマとしてサイボウズに入社、「Garoon」開発に携わる。クラウドサービスcybozu.comの開発責任者としてプロジェクトを率いた際には運用の大切さを実感。運用本部を新設し、現在は本部長として主に情報システム部の運用マネジメントを行う。約2年かけてPCの標準化や社内各所のセキュリティ向上、拠点の引っ越しに合わせたネットワーク敷設、情報システムの刷新を行ってきた。サイボウズにあるすべてのPCを32GBメモリにしてしまった張本人

バックオフィスのPCにこそ、メモリを32GB支給すべき

仁田坂:「サイボウズのPCがメモリ32GB積んでる」という冒頭のツイートは、3万インプレッションにも達したとか。それだけこの考え方が注目を集めているんだと思います。世の中には「バックオフィスのPCにメモリは要らない」と考えている人が多いですよね。

ymmt:そうですね。一昔前まで開発者がリッチなPCをもつことはあっても、一般事務的な部署はがまんしなさいという風潮があったと思います。かつては、自分でメモリを買い足したりする社員もいたんです。

仁田坂:ぼくもサラリーマンだったときには、申請が面倒くさくて自分で勝手にメモリ増設していましたね......。

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仁田坂淳史、技術評論社『WEB+DBPRESS』の編集、mixiのWebメディアFindjob!Startupの立上げを経て起業。株式会社ZINEの代表取締役編集長としてメディアの運営・エンジニアインタビューなどを手がける。メモリは多ければ多いほどいい、という持論を持っているが、零細ベンチャー経営者のためコストには敏感

ymmt:でも昔と違い、今はPCコストを取り巻く状況と感覚が変わってきています。たとえばエンジニアに10万円のPC、事務などバックオフィスには6万円の安いPCを支給するとします。そうすると逆に情シス側の管理の手間がかかってしまいます。保守交換用に2種類のPCを用意しておかなければいけませんからね。

仁田坂:10万円と6万円のPCで2種類の在庫をもつより、必要十分なスペックを1種類で揃え大量調達するほうが効率的なんですね。

ymmt:そうなんです。コンパイルなどの作業でエンジニアに32GBのメモリが必要なら、一括調達する。マシンの値段に加えて、情シス側の人件費などのコストも抑えられます。

仁田坂:うーん合理的!

ymmt:導入してみたら、バックオフィスからもうれしい声が挙がってきました。数100MBあるExcelファイルなどを開く際、32GBメモリを積むことでサクサク仕事が進むようになったとか。結果的にバックオフィスの生産性向上につながりました。

メモリだけじゃない。SSD512GBもノートPCも全員に支給

仁田坂:サイボウズ、うらやましいなあ。だいぶ懐が深いことがわかりました。PCの他に社員から要求される物品はありますか?

ymmt:椅子や机を個別に支給することは情シスとしてはさすがにないです。が、SSDを交換してくれという要望が相次いだときには、本来の2~3年交換ルールを無視してすぐに大量交換しました。512GBのSSDに

仁田坂:512GBのSSD!

ymmt:開発者がストレスためること自体、開発効率を下げます。SSDの交換によって、生産効率が上がりますし、福利厚生レベルのオーバースペック具合といえるかもしれません。

エンジニアをリファラル採用するケースが増えてきましたが、自社エンジニアはある意味、広告宣伝塔。満足度を上げられれば、優秀な他社のエンジニアを快く誘ってもらえます。自慢したくなるほどの環境を用意することが重要なんですね。

仁田坂:うーん、視座が高いですね。

ymmt:そうですね。それから、デスクトップPCを使っているエンジニア全員に、ノートPCを別途支給しています。

仁田坂:実質2台支給しているんですね。

ymmt:ノートPCもあることで場所を選ばず働けるようになりました。ノートPCを持っている人だけが議事録を取るといういびつさもなくなり、社内ハッカソンをしやすくなりましたね。

それから当社はキーボードやマウスも自分の好きなものを買っていいので、みんな好きに買って好きに使っていますね。

仁田坂:KinesisとかHHKB2でも......?

ymmt生産効率が上がるので大歓迎です。

仁田坂:すごーい!

副業・在宅勤務OK。「どこでも働ける」会社でどうやってPCを管理するか?

仁田坂:情シスの最近の傾向ってどういうものがありますか?たとえば今、副業を推進されている企業も多くなってきましたが、サイボウズも推進していますよね。副業のPC管理なんかが気になります。

ymmt:私物PCの管理は最近のホットトピックですね。当社は副業や他会社とのかけ持ちがOKなんです。サイボウズの名前を使う場合(著書執筆など)は申請が必要ですが、基本的には「許可なしでOK」

仁田坂:え、全員ですか?

ymmt:全員です。で、副業をやる場合、会社のPCを使うか、個人用PCを使うか、別会社のPCを使うかが問題になります。私物や他社のPCで自社セキュリティを遵守して安全に使用できるかという問題が出てくるわけですね。

仁田坂:難しい問題ですね......。

ymmt:それから当社は「どこでも働けるようにすること」を会社として推進しているので、全従業員にノートPCを配っているんですけど、なかには「在宅勤務中心で会社には週に1回か2回しか来ないから、家にも会社PCをもう一台置きたい」と言う人が出てきます。

仁田坂:え......?もしかして......?

ymmt支給しますよね

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サイボウズの運用本部でSREチームを率いる山本。先日「SRE なにしていますか? 忙しいですか?」も発表している

ymmt:ルール上は「ノートPCを1台配っているから、それを家に持って帰ってやってよ!」と言いたいところですが、通勤の時に重たいし、紛失のリスクもある。そうなると個別判断するしかないんです。働き方は1人1人違いますから、ルールでは100%カバーできないんですよね

仁田坂:情シスってもっとガチガチのルールでやってるんだと思っていました。随分と柔軟な対応ですね。ハードウェアが充実したら副業だけでなく在宅でも働きやすそう。

ほかにも在宅勤務を推進するうえで大切な部分ありますよね。たとえばリモートアクセスとか。

ymmt:IPSecでセキュアに自社PCへ接続して仕事ができる環境を整えています。たとえば「今日は1日会議も何もない。開発に集中したい。通勤で使う2時間のムダを生産活動に充てられたら効率が上がるのに」というのは開発者によくある話。

リモートアクセス環境を整え、在宅勤務しやすくすることで開発者の開発効率は大きく異なると思います。

仁田坂:うーんお見事。

在宅勤務で仕事に影響が出てもいい

仁田坂:他社の例ですが、月5日程度ならエンジニアを監視していなくても業務効率に影響しないという理由で、「在宅勤務は月5日まで」と規定されているケースを見かけます。

サイボウズはかなり早くから在宅勤務に取り組まれていましたが、どのような評価方法で人事査定をされているのでしょうか?

ymmt:当社特有かもしれませんが「市場価値」を重視し、査定しています。

「この人、転職するといくらになるだろう?」というのを想定してきっちり給料を算出しているので、他社で同じ働き方をした時にいくらもらえるか合意できてさえいれば、働き方は自由に選んでいいと考えています。

サイボウズの給料は「あなたが転職したらいくら?」で決めています

仁田坂:「月5日まで」みたいな制限もないんですか?

ymmt:ないんです。それどころか、当社の場合は「業務に影響が出てもいい」とさえ考えています。ガチガチに監視するよりも、自分がやりたい働き方をしたとき、市場でいくらもらえるかを考えてほしいんです。

仁田坂:たとえば「週3日しか働かない」など、あえて働く時間を減らす人もいたら?

ymmt:もちろん給料は減りますが「それはそれでいいし、影響が出ても構わないよね」とお互いに合意を形成してから実施しています。在宅勤務も同様。「パフォーマンスが落ちてもいい」という合意の上、行っています。

仁田坂:在宅勤務でパフォーマンスが落ちないエンジニアの方もいらっしゃいますよね。

ymmt:もちろんパフォーマンスが落ちなければ、評価は変わりません。当社の場合、社内のいたるところにビデオ会議用のコミュニケーションシステム(CiscoJabber)があって、スマートフォンやPCから会社の会議室にいつでも接続できるようになっています。

仁田坂:そこはパフォーマンスが落ちないよう、仕組みでカバーするんですね。

ymmt:たとえば、この前うちの部署のスタッフが持病で入院してしまい、退院後しばらく在宅勤務することになりましたが、会議にはビデオできちんと参加しました。

大きい会議室で前方にビデオ会議設備があると、後方の声が相手には伝わらなくて会議についていけなくなってしまうことがあります。こういう問題を解消するため、天井マイクを一面に張り、どこで話しても、全部クリアに相手に聞こえるようにしました。

仁田坂:いちいちやることがすごい。

ymmt:遠方の参加者に疎外感を感じさせないように、音響設備にもかなり気を使っています。在宅勤務に必要なのは、やっぱり設備。文化や制度、設備が整えば、別にどこで働いていても同じという意識になってくるんですね。

評価する上司・会社側の意識が変わると、変なマイナス的評価もつかなくなるので、今よりももっと在宅勤務が普及すると思います

エンジニアを監視しない

仁田坂:「エンジニアはサボる」「監視しなければならない」という性悪説を前提とすると、書いた行数やGitHubの芝生の生え具合で管理しなきゃいけないですよね。

実際リファクタリングが得意なエンジニアはそれでは評価されにくくなってしまいます。相手に委ねる状態で管理できているというのが素晴らしいなと思います。

ymmt:私自身はサボり癖がとても強いんです。基本、業務時間中にろくに業務なんかしてないという......(笑)。

仁田坂:なるほど......Twitterやってますもんね。それなのに他人に寛容なのはなぜですか?

ymmtむしろ自分がダメだから寛容なんです(笑)

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MySQLもNginxもとことん直す。妥協しないSRE求む!

仁田坂:なんと!

ymmt「怠惰(Laziness)」「短気(Impatience)」「傲慢(Hubris)」、この3つは「プログラマの三大美徳」と呼ばれていますが、「とにかくサボりたい、楽したい」というプログラマは、手作業で徹夜作業を頑張ったりせず、なるべく自動化するために頑張る。最低限のことで最大の効果を上げるいいプログラマだとされています。

仁田坂:性悪説・性善説で判断するのではなく、エンジニアマインドが根底にあるんですね。

ymmt:性悪説と性善説って、片方に立っちゃうとすごくいびつですよね。性善説だと事故が起こった場合に大炎上するし、性悪説だと今度はガチガチで自由がまったくない。

仁田坂:バランス感が大事と。

ymmt:非常に重要な業務を行う場合のオペレーション端末では、USB使用禁止でログを取るようPC側にシステムが仕込まれています。「できないようにする」ことで、「悪いことをしないように見ていますよ」というポーズを取るんですね。

仁田坂:そのポーズは結構重要かもしれませんね。ポーズがあるだけで悪いことができないようにする。

ymmt:その上で多様な働き方をお金かけてしっかりサポートし、必要なPC等を全部支給する。「アメと鞭」みたいなもので、両方合わせて使うことでバランスがとれると思います。

「CTOから情シス」のキャリア選択はエンジニアとしてアリ

仁田坂:ymmtさん、もともとCTOでしたよね。今は情シスとしてお仕事されているそうですが、もともと仕組みづくりが好きだったんですか?

ymmt:そうですね。プログラミングよりもプロジェクトマネジメントなど、幅広い分野の仕事に興味を持っていました。「会社の仕組み」を意識して仕事に取り組む中で、情報システムを改善したいという思いは人一倍強かったです。

仁田坂:技術力の無駄づかいじゃないですか? CTOだったのに。

ymmt:もともとCTOだったからこそ、分かることって多いですよ。組織を見ていたから「あっ、ここもっと効率化できそうだな」と。もっとエンジニアが情シスになってもいいと思っています

仁田坂:新しいですね。エンジニアのキャリアとして顧問ブーム、人事ブームの次に情シスブームがくるかもしれませんねー。

「PCはいつでも交換OK」は社員への信用の証。チャレンジしたい

仁田坂:最後に! 今後取り入れてみたいと思った他社の情シス事例、あったりしますか?

ymmt:当社には「PCは2年交換」というルールがありますが、メルカリさんはPC交換ルールを「いつでも」としていると聞き、「踏み切ったな」と感じました。

実際は当社も、言われたら替えてあげているんですよ。業務上必要だからだろうという信用がありますから。でも、「いつでも」と謳うのは、すごいことだと思います。「社員への信用の証」を感じますね。当社でもいずれチャレンジしていきたいです。

仁田坂:メルカリの事例を踏まえ、サイボウズの情報システム部の課題は何でしょうか。

ymmt:クラウドサービス運用がビジネスの根幹だとすると、そこを十分に支援しきれていないことが課題です。kintoneなどを開発しているグローバル開発本部と比較すると自動化できていないんです。「プログラマの三大美徳」が情報システム部に浸透していないんですね。そういう意味で、もっとハッカーっぽい組織にしていきたいと思っています。

仁田坂:元CTOならではの視点から、徹夜で頑張らなくても生産性を高め、みんなが幸せになるようなシステムを作っていくymmtさんの思いが伝わりました。Twitterやってるのとか聞いてすみませんでした。

ymmt:そうです。ちゃんと仕事してるんです(笑)。

文:仁田坂 淳史(ZINE)/写真:橋本美花

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本記事は、2017年5月24日のサイボウズ式掲載記事サイボウズのPC標準機はどれもメモリ32GB積んでるって、正直ムダじゃないですか?より転載しました。

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