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サイボウズ式:「ニコ動」会議システムが日本語と英語の架け橋に? ユーザベース、グローバル会議の秘密

2015年07月01日 23時00分 JST | 更新 2016年06月28日 18時12分 JST

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東京オフィスで実施されるプレゼンテーション。海外オフィスともリアルタイムに共有される

英語の社内公用語化──。グローバル展開を狙う企業なら考える選択肢の1つですが、必ずしも社内のコミュニケーションを円滑にするとは限りません。共有する情報量が爆発的に増える事業拡大期には、コミュニケーションが滞り、一体感の醸成が難しくなりがちです。

「世界一の経済メディアをつくる」をミッションに、香港・上海・シンガポールに拠点を置き、グローバル展開を加速するユーザベース。同社はすでにその課題に直面し、解決策を模索しています。多様化の中で一体感を醸成するという課題に対して見つけた答えとは? 東京/シンガポール・オフィスの両メンバーに「海外メンバーとワンチーム」になる秘訣を聞きました。

9人中国籍は7カ国、ほぼ全員が他国籍のユーザベース海外オフィス

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こちらの3人に取材をしました。長澤順平さん(写真左):社内コンサルタント。現在上海オフィス勤務。社内の生産性効率をあげるため、各チームが抱えている問題や業務過程における非効率の改善を担当。カルチャーチームに所属。 村樫祐美さん(写真中央):人事マネージャー。新卒、中途採用を担当。現在名古屋で働いており、社内初のリモート勤務を実現。毎週火・水・木曜日は東京オフィスに出社する。カルチャーチームにも所属。 Guanjia Ng(グアンジャ・ン)さん:シンガポールオフィスにて新規顧客開拓に従事。マレーシア人。以前はPwCで監査業務を担当。2014年1月にユーザベースに入社し、東京オフィスで「SPEEDA」の仕様策定業務を経験。

細谷:各拠点にはどのような国籍のひとがいて、どうようなチーム編成が行われているのか教えてもらえますか。

Guan:現在、東京、上海、香港、シンガポールの4拠点で事業展開をしています。どの拠点もさまざまな国から集まった人たちが働いており、多様な環境といえます。

細谷:どれほど多様なのでしょうか。

Guan:シンガポールオフィスには9人のメンバーがいます。国籍でみると7カ国ほど。セールスとアナリストの2チームがあり、私はセールスに属しています。

ユーザベースは強い起業家文化を持っているので、セールスもプロダクト開発に携わります。プロダクト開発は東京オフィスで実施しているので、密なコミュニケーションが求められます。例えば、東南アジアの企業情報を日本のクライアントに届ける場合などがよくあります。

細谷:東京オフィスとは何語でやりとりを?

Guan:東京オフィスとは英語です。コミュニケーションで「言葉の壁」を感じることはありますが、会社全体でコミュニケーションを円滑にする取り組みが進んでおり、ストレスは感じません。

海外オフィスのメンバーがチームに入る場合、英語が得意ではない日本人メンバーとのコミュニケーションを円滑にするために、必ず英語が堪能な日本人メンバーもチームに入ります。

日本語、英語が混ざり合い、ニコ動ライクなコメントで進む全体会議

細谷:具体的には何をしているのですか?

Guan:ユーザベースでは社員全員が参加する「みんなの会」という会議が毎週開催されます。ここでも同時通訳・翻訳をするなど、海外メンバーが一体感を持つための工夫がなされています。

村樫:みんなの会の目的は日本と海外の情報共有で、海外オフィスを含め全社員が参加します。もともとは全員が英語でスライドを作り、英語で発表するスタイルでした。しかし、英語が苦手な人が英語で発表をするのは、円滑なコミュニケーションを妨げることが分かりました。

そこで、みんなの会の進め方を変更しました。具体的には、英語が得意な人が同時通訳・翻訳を担当し、コミュニケーションを円滑化するというものです。

細谷:確かにコミュニケーションはスムーズになりそうです。

村樫: ええ。今でもスライドは英語で作成しますが、英語が苦手な人は日本語で発表します。そこに、同時通訳で日本語を英語に変換し、海外オフィスのメンバーがリアルタイムで理解できるようにしました。

発表者のスライドに「ニコニコ動画」のような文字列が流れる仕組みも導入し、この文字列も同時翻訳しています。この仕組みのいいところは、言葉の壁を極力小さくできるところだと思います。例えば、東京オフィスの発表で海外メンバーから一言コメントが流れた場合、即座に日本語に翻訳します。海外メンバーが発表するときには、日本語の一言コメントが英語に同時翻訳されるんです。

※動画は「ニコニコメソッドプレゼンを全社会議に取り入れてみたら会議が面白くなった - UZABASE Tech Blog

」を参照

「7つのルール」以外の規則を作らないための情報共有

細谷:なぜ同時通訳・翻訳を選んだのですか?

長澤: ユーザベースでは、唯一の規則「7つのルール」以外には、極力ルールを作らないようにしています。その中でビジネスを高速に推進していくためには、個々人が会社の状況を深く理解している必要があります。みんなの会は、その情報共有に重要な意義を持ちます。

ですが、NewsPicksなどの新事業立上およびグローバルな拠点展開によって、みんなの会で共有すべき情報量が爆発的に増えた結果、全員が英語を話すスタイルでは共有が間に合わない状態になってしまいました。

細谷:英語が苦手なひとにとってスムーズなコミュニケーションは難しそうですね。

長澤:はい。そこで同時通訳・翻訳を取り入れようとなりました。結果、全員が英語を話すスタイルに比べてコミュニケーションが円滑になり、情報共有がしやすくなりました。

同時通訳・翻訳は、英語が堪能な社内のメンバー3~4人が担当しています。基本は日本語と英語ですが、最近は試験的に中国語への通訳・翻訳もしています。スラングを同時通訳・翻訳するのは至難の業ですが、スラングを訳すのが得意というメンバーがおり、対応してくれています。

細谷:言葉の壁を最小化する取り組みを、Guanさんはどう感じていますか?

Guan:お互いを理解するには、発話者同士が同じ言葉を話すことが理想だと思います。しかし現実的には難しいです。みんなの会の同時通訳・翻訳は、コミュニケーションの円滑化にうまく機能していると思います。

ただ、オンライン上のコミュニケーションだけでは、自分の意思を100%伝えられないと思います。空気感や感情など、その場でしか読み取れない情報もあり、ミスコミュニケーションも発生しがちになります。空気感や感情が言葉とともに伝わって初めて、相手に行動をとってもらうことができるのです。

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シンガポールオフィスの多国籍チーム。写真中央がGuanさん

他国拠点の「空気感」が感じられない。その時どうしたか?

細谷:では、この問題はどのようにしたら解決できるのでしょうか。

Guan:お互いを知ることが1つの解決策だと思います。ユーザベースでは年2回、社員全員が東京オフィスに集まる機会があります。「新規アイデアミーティング」と「Year End Party」の2つです。

細谷:この2つはどのような集まりなのでしょうか。

村樫:新規アイデアミーティングは「世界一の経済メディアになる」というミッションを実現するために、「SPEEDA」と「NewsPicks」に続く第三のプロダクトを発案する場です。これは設立1年目から続いていて、もともと東京オフィスだけでやっていましたが、2014年からは海外オフィスが加わり、全拠点のメンバーが参加するようになりました。

社員が混合チームを組み、3ヶ月ほどかけて新規プロダクト、社内の課題解決、ミッションなどについてアイデアを競います。1位のアイデアには資金を出し、事業化していくことも目的としています。

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情報共有を目的に毎週開催される「みんなの会」

細谷:チームを組んで競うことで、メンバー同士の一体感は強まりそうですね。

村樫:Year End Partyは、その年の振り返りと来年の目標を確認する場であり、海外メンバーと家族を東京オフィスに招待して、社員全員が関係者含めお互いに感謝しあう場でもあります。「7つのルール」に即して、その年に最も会社に貢献した人を表彰しています。

長澤:Year End Partyはお互いに感謝を伝えたり、仕事の成果を表彰したりする場ですが、仕事内容によって業務の成果が見えやすい人と、見えにくい人がいるのも事実です。特に海外オフィスはなかなか状況が見えづらいので、Year End Partyでは、仕事内容によらず、7つのルールをもとに、会社へ貢献した人を投票によって選ぶことに注力します。

細谷:Year End Partyでの印象深いエピソードはありますか。

長澤:うれしかったのは、2014年のYear End Partyの表彰式で、初めて海外メンバーが選ばれたことです。選ばれた本人も「しっかり見てもらっていることが分かりうれしかった」と言っていました。表彰されたのはシンガポールオフィスのメンバーで、7つのルールの1つ「渦中の友を助ける」部門で選ばれました。

「離れた場所の同僚が側にいる」をテクノロジーで解決

細谷:見てもらえている感覚は、親近感や一体感の醸成につながりそうです。今後はどんな施策をなされるのでしょうか。

村樫:今後は、物理的には離れた環境にいる同僚が、あたかもそばにいるかのような環境をつくることが重要だと考えています。難しく聞こえますが、テクノロジーを使えば解決できると思います。

私は名古屋でリモートワークをしています。コミュニケーションはSkypeやGoogleハングアウトでできますが、東京オフィスの空気感が分からないのが課題だと考えています。例えば話かけていいのかダメなのかが分からないなど。これは、海外メンバーが東京オフィスに感じていることと同じ感覚だと思います。

長澤:会社が多様化する中で一体感を醸成するには、文化や価値観の共有を促進することが重要です。そのためには、たとえ離れた拠点間であってもメンバー同士がカジュアルにコミュニケーションをしなくてはなりません。例えば、離れたオフィスのメンバー同士が時間をあわせ、Skypeを介して一緒にご飯を食べることも効果的だろうと思っています。

細谷:文化や価値観を共有する前に重要な「個人として好きになる」ことにもつながりそうですね。

長澤:イベントや会議以外でも気軽に話ができる空間作りにも注力しています。カジュアルに話をする空間を設け、多様化の中の一体化をしっかり醸成できる環境を整える必要があると思います。

社内が多様化することは、さまざま文化・価値観を持った人といるということ。物事に対する認識も異なる中で、従業員全員が一体となって目標を達成するには、みなが同じ視点・視野を持つことが必要です。そのためには情報共有が重要です。

細谷:同時通訳・翻訳で会議における言葉の壁を最小にし、社員同士が直接会って話す機会を設け、一体感を醸成しているんですね。今後はテクノロジーを活用して、多様化の中で一体感を強めるための取り組みを検討中とのこと。今後も楽しみです。

(サイボウズ式2015年6月11日の掲載記事「ニコ動ライクな弾幕で円滑会議? ユーザベース社内活性化の秘密」より転載しました)