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元在住者が聞いた!3分でスッキリ分かるスコットランド独立住民投票の賛否!

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(Photo: jpewinfield

いよいよ明日、2014年9月18日はグレートブリテン(イギリス)にとって運命の日となるスコットランド独立住民投票日。僕は、2010年から2年間スコットランドに住んでいました。

現在のところ、独立賛成派(51%)が僅差で反対派(49%)に勝っており、投票日まで結果が全く予想できない展開となっています。僕もスコットランドの現状、実際の国民の反応などをこの目で見てみたく、先週末スコットランドの三大都市:エジンバラ・グラスゴー・アバディーンを訪問。交流のある地元の議員、メディア関係者、教授などと話をしてきました。

この記事では、中立的に、ファクトベースで賛成派と反対派の主張をまとめてみたいと思います。

スコットランド独立住民投票
まず、英国(グレートブリテンおよび北アイルランド連合王国)についてエピキュールの青木代表が先日の日経新聞で分かりやすい説明をされていたので抜粋させて頂きます。

連合王国とは、イングランド、スコットランド、ウェールズ、北アイルランドという4つの連合体だ。企業でいえば連合体という「持ち株会社」の下にイングランドをはじめとする4つの子会社がぶら下がっているようなものだ。

スコットランドの人口は約530万人。今回の住民投票は、その中の有権者(16歳以上のスコットランド在住者)約400万人により行なわれ、「スコットランドは独立国家になるべきか」という設問にYesかNoで解答。もしYesが過半数を占めた場合、スコットランドは2016年3月24日に独立します。

スコットランド独立運動と言えば、名作映画『ブレイブハート』。歴史上、数々の争いがあり、1970年代に発見された北海油田が独立運動を触発し、スコットランド出身のトニー・ブレア政権の下、1997年にウェストミンスター議会(英国の議会)とは独立したスコットランド議会が設置されました。2011年5月にスコットランド議会選挙でスコットランド国民党(SNP)が議会の過半数を占めて奇跡的に勝利。翌年2012年10月、SNP党首のアレックス・サーモンドとイギリス首相のデイビッド・キャメロンが今回の住民投票(referendum)に合意し、今に至っています。

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(連日スコットランド独立報道の大手新聞)

経済
独立賛成派:一人当たりの名目GDPだと、スコットランドは世界で14番目になります。1976年から2006年の過去30年間で、イギリスの経済成長率は平均2.3%、その一方でスコットランドは1.8%。同時期の同様の国の成長率は、アイルランド(5.4%)、アイスランド(3.4%)、ノルウェー(3.1%)、フィンランド(2.9%)。1980-81年から2011-12年の間、イギリスの年間純財政赤字は対GDP比3.2%、スコットランドは黒字で0.2%。権力の地方分権化。現在イギリスでは、税収の95%を英国政府であげています。ちなみに米国では、連邦政府があげる税収は60%です。

独立反対派:スコットランドは、国外よりもイギリス国内(64%)への輸出の方が多い。イギリスの中に留まることで、経済的リスクが低くなる。2008年の金融危機で、小国アイルランドの国内銀行はGDPの10倍に上る負債を抱えて破綻し、アイスランドはディフォルト。その一方でスコットランドのロイヤル・バンク・オブ・スコットランドは、英国政府からの730億ドルの財政援助を受けて最悪の事態は免れました。

通貨
独立賛成派:SNPはイギリスと通貨同盟を交渉し、ポンドを今まで通り使えるようにするそうです。2014年3月、英国議会はスコットランドがポンドを使うことを承諾。

独立反対派:2014年1月、オズボーン英国財務大臣は独立したスコットランドと通貨同盟を結ぶことはない、と表明。仮にユーロに移行した場合(独立運動を率いるアレックス・サーモンド自治政府首相はこれを否定)、それに対する莫大なコストがかかることでしょう。

ビジネス
独立賛成派:製造業での職を増やし、法人税を3%ほど引き下げる予定。中小企業支援を増やし、社員の国民保険制度手当の増加などのインセンティブを与える予定。

独立反対派:もし独立した場合、36%のスコットランドの企業は本社の移転を考える、と解答。ちなみに英金融大手ロイヤル・バンク・オブ・スコットランドとロイズTSBは、賛成多数なら本拠地をエジンバラからロンドンに移すと既に発表しています。

エネルギー
独立賛成派:北海油田の価値は1兆ポンドほど(1.6兆ドル)。最低でもあと150-240億バレル(30-40年)の石油が残っていると言われています。独立した場合、ここで得られる収入の90%以上はスコットランド政府に入ることに。ノルウェーのように石油ファンドを設立。まだ開発余地のある油田は残されており、今後の石油価格は右肩上がりになってくると予想。さらにスコットランドはヨーロッパの25%の風力発電、25%の潮力発電、10%の波力発電の可能性を持っていると言われています。

独立反対派:石油による税収は不安定。スコットランドを独立国と仮定した場合、2008-9年の115億ポンドの税収から、2012-13年は55億ポンドに減少。石油ファンドを設立してこうした変動の影響を軽減しようとしても、短期で使える資金が少なくなる、と。

EU
独立賛成派:イギリス(EU加盟国)の一部として独立するため、スコットランドがEUにそのまま加盟するのは必然的。

独立反対派:EUの欧州委員会委員長は、「独立国家スコットランドがEUに加盟するのは難しい、不可能に近い」と発言。

NHS
*NHS(国民保健サービス)は、イギリスの国営医療サービス事業のことで、患者は経済的能力にかかわらず、自己負担ほとんど無料で利用できます。
独立賛成派:SNPはNHSのための予算を確保することを保障済み。

独立反対派:独立により、30-100億ポンドの財政削減/増税が予想され、NHSはこのターゲットになる。スコットランド人の一人当たりの医療費は、イギリス人よりも平均して200ポンド高い。BBCへのリークで、スコットランドNHSは、4億ポンドの資金不足(コスト削減)に陥るかもしれない、と。

教育
独立賛成派:スコットランドの5つの大学が世界大学ランキングトップ200に入っている。

独立反対派:現在スコットランドの大学は、スコットランド出身かEU諸国出身であれば学費は無料。しかし、EUに加盟すれば(できれば)これも変わってくる。スコットランド最高峰のエジンバラ大学(世界ランキング17位)は、イングランドにキャンパスを移す予定もある。

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気になるQ&A
日本に対する影響:意外と知られていないのですが、明治期に発展途上だった日本に鉱山技術を教えたとされるのはスコットランドの技術者です。歴史上はイギリスとの関係として取り上げられますが、同国の鉱山技術が発展したのは主にスコットランド。スコットランドの首都エジンバラは、投資信託発祥の地としても知られています。欧州での16世紀以降の戦争で命を落とした人を持った家庭のために、継続的に少額を出し合い、生活を支える方法として生まれた仕組みです。イギリスを訪れる経営者やアナリストはロンドンはもちろんのこと、エジンバラを訪れることも必須と言われているほどで、事実エジンバラはロンドンに次ぐ資産運用の中心都市です。既存の日系企業の利幅は低いですが、今後の上向きに注目して日本株を買ってくれる投資家が多くエジンバラにはいます。

スポーツ:スコットランド出身のアスリートは、ロンドン五輪で65個のメダルの内13個を獲得。ソチ五輪のメダル獲得者の半分はスコットランド人だったそうです。しかし、最大の影響はテニス。2013年ウィンブルドン覇者のアンディ・マレー選手が独立したスコットランドでオリンピック出場は怪しいとの見方も。今回の投票の有権者は16歳以上なので、20歳くらいまでの人口約35万人の票はこの辺りが大きく絡んでくると思われます。

BBC(英国放送協会)はどうなる?: アレックス・サーモンド氏は、新しい放送局、Scottish Broadcasting Service(SBS)を設立し、BBCスコットランドを引き継ぐと表明。BBCのライセンスを利用するために3.2億ポンドを支払う予定。ちなみにアイルランドはこの形です。

豆知識
  • 2013年、Sunday Timesによる世論調査でスコットランド人に対し、「あなたが海外から初めて誰かに会うことを想像してみて下さい。独立投票のことなど考えずに、あなたは自分のことをスコットランド人(スコティッシュ)、それともイギリス人(ブリティッシュ)と答えるの、どちらが気持ちが良いですか?」と聞いたところ、63%がスコティッシュと答え、19%がブリティッシュと答えたそう。
  • ICMの調査によると、イングランドに住む人々の56%はスコットランドが独立することを悲しいと思っているそう。
  • スコットランドでは、既にイングランドで使われる紙幣とは違うデザインのお札(スコティッシュポンド)が広く出回っています。
  • 大手メディア・著名人(J.K.ローリング、スーザン・ボイル、デイビッド・ベッカムetc)の多くは独立反対派です。
  • スコットランドが産地のスコッチは、1秒間当たり40本が出荷されています。輸出先は現在約200ヶ国ですが、スコットランドが単独で配置している大使館の数は90ほど。EU諸国内では欧州27ヶ国へ無関税での輸出が可能になるが、これが不可能になる恐れも。
  • この独立運動を牽引しているアレックス・サーモンド氏は、実はまさかのイングランドのエセックス出身だったことが判明(笑)。ずっとスコットランドのリンリスゴー出身と言っていましたが、証拠は今まで無かったそう・・・

ここで僕の意見を述べるのは控えますが、どちらにせよ世界が注目する投票になることは間違いありませんね!

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