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危険で不毛な、東アジアの核開発競争

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THOMAS PETER / REUTERS

プルトニウムは、第2次世界大戦下のアメリカで行われた核開発プロジェクトで、初めて生成および核分裂に成功した。その破壊力は終戦時に明らかになった ―― 長崎に投下された爆弾の1kgのプルトニウムは100万分の1秒のうちに核分裂し、直下の都市を破壊した。

現在フランスや日本を含む数カ国は、原子炉の使用済み核燃料からプルトニウムを分離し、正当な経済的目的もないまま兵器に転用できるこの危険な核物質を保有している。

日本は現在、プルトニウムを使いながら核兵器を持たない唯一の国で、現在約50トンを保有している。3月には、大部分が兵器に転用可能なプルトニウムを700ポンド(約317キロ)以上を、日本国内からアメリカのより安全な場所に移動させた。この量は、核爆弾約50発分に相当する。しかし、安倍晋三首相は同時に、新しい使用済み核燃料を“再処理”する施設のための予算を確保する法律を推し進めている。この施設の使用目的は、核燃料のために何百トンものプルトニウムを分離させることだ。

一方、中国の新しい五カ年計画では、再処理施設をフランスから購入する案が含まれている。この施設で日本と同様にプルトニウムを分離し、備蓄することになるだろう。韓国も、自国が日本と同様、プルトニウムを分離する権利を持つべきであると主張している

これらの計画と要求は問題だ。それは、オバマ大統領が2012年の核セキュリティ・サミットで次のように述べているからだ。

「私たちは、リンゴ1個ほどのわずかなプルトニウムで数十万人を殺傷できること、地球規模の危機を引き起こせることを知っています…まさに、この分離プルトニウムのような物質を、大量に保有することは絶対に許されないのです。テロリストの手に渡らないようにする必要があるためです」。


1993年1月5日東京の北東。1.7トンのプルトニウムを運ぶあかつき丸。フランスからの極秘出航は国際的な批難を巻き起こした。(AP Photo/Atsushi Tsukada)

第二次大戦中のアメリカで兵器の開発に取り組んだ核研究者たちは、「プルトニウムは平和利用されるだろう」との展望を持っていた。彼らはウラン238を、連鎖反応プルトニウムに変換するプルトニウム「増殖炉」を考案。核分裂によって何千年も文明の繁栄をもたらすと考えた。1960年代、この展望が世界的な核エネルギー体制を拡大した。1970年代以降、先進国は約1000億ドル(約10.9兆円)を費やし、増殖炉の商業化を試みた。

この取り組みは失敗した。今日、核によるテロリズムの蔓延と危険性が上昇していることを、我々は理解している。核兵器の材料となるプルトニウムが石油のような物資になりかねない。従来の増殖炉は、兵器に使用することができない低濃縮ウランを燃料としている。

しかし、増殖炉がなくても、フランスは分離プルトニウムを、従来型増殖炉の燃料に使用し続けている。日本も同じようなことをしようとしているが、あまり成功していない。

この方法で作られたプルトニウムとウランの混合酸化物燃料(MOX燃料)は、従来型増殖炉の一次燃料である低濃縮ウランの10倍の費用がかかる。しかしフランス政府はフランス電力(EDF)に対し、経営再建中の政府持ち株企業アレバがEDFの使用済み核燃料からプルトニウムを分離するための資金を引き続き供給することを強く求めている

一方、日本政府もまた電力企業に多くのプルトニウムを分離することを義務付けている。世界的に、ロシアやイギリスで失敗したプルトニウム計画を含め、長崎型核爆弾3万発に相当する250トンを超えるプルトニウムが、民間のプルトニウム計画によって保有されている。

フランス、ロシア、日本、中国と韓国で、分離プルトニウムに引き続き関心が向けられていることを、どう理由付けすべきか。フランスとロシアについては「制度整備の遅れ」というがもっともな答えだが、東アジアでは、プルトニウムの元来の使用法――核兵器――というのもまた、1つの要因になっている。

韓国では、北朝鮮の核実験後、自国もプルトニウムを分離する権利を持つべきだという要望がピークに達している。日本の安全保障の専門家も、北朝鮮や中国に対し潜在的な核抑止力を示すために、プルトニウム計画を正当化する論調を強めている。中国の核エネルギー体制は今も増殖炉に熱心であるが、中国がフランスから購入する計画のある再利用工場を使って、速やかにロシアやアメリカに匹敵する規模の核兵器保有を構築する可能性を懸念する分析専門家もいる。

東アジアの3カ国の各プルトニウム工場は、相手国の最悪の目的を想定することで増強され、地域の不安定化をさらに悪化させている。


中国と北朝鮮の間に架かる橋に登る太陽。北朝鮮がプルトニウム原子炉を再稼働させた直後の2月10日の様子。(JOHANNES EISELE/AFP/Getty Images)

アメリカがこれらの国々に指示を出すことはできない。しかし、韓国と日本にとってアメリカが最も重要な軍事同盟国であることと、平和的な核利用について両国と合意があることから、アメリカの影響力は大きい。

原子力の平和的利用に関する協力についての日米政府間の協定は、無期限に継続するものであるが、両国とも満期となる2018年で終了することもできる。3月17日、上院外交委員会の証人喚問でトーマス・カントリーマン国務次官補は、アメリカはこの力関係を利用して、日本のプルトニウム計画について議論を強要する計画であったことを示唆した。控えめに言っても、アメリカは日本がさらにプルトニウムを分離する前に分離済みプルトニウムの処理に力を注ぐよう要求すべきである。なにしろ、日本のトヨタは在庫を最小限にするための「ジャストインタイム生産」システムを発明したではないか。

米韓政府間での原子力の平和利用に関する協力協定改定に関する最近の交渉では、両国は韓国が提案した計画の「実現可能性」を10年にわたって共同研究をすることで、韓国が使用済み核燃料を再処理するための権利を求める問題を先送りした。

アメリカは、フランスが中国に再処理施設を売ることを拒否すると確信できない場合、その取引の一部として、少なくともその2つの国には核を備蓄することができないよう「ジャストインタイム」のプルトニウム分離に取り組むよう求めるべきだ。

しかし、最終的なゴールは、プルトニウム分離という、費用がかさみ、危険が高く無意味な産業を終わらせることであるべきだ。アメリカは1974年以降、その目的を追求してきた。この年、インドは商業利用の名目だった増殖炉開発プログラムからプルトニウムを使って核兵器計画を開始した。それ以来、ベルギー、ドイツ、スイスや他の国々は、自国の再処理計画を破棄し、イギリスもまたそうすることを決定した。

アメリカは引き続き、この目標に協力しない国には圧力をかけ続けなければならない。

この記事はハフポストUS版に掲載されたものを翻訳しました。

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