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英「Wired 2013」から -米キックスターターの価値観、インドのSMS,イスラエルの活動家

2013年10月22日 23時44分 JST | 更新 2013年12月22日 19時12分 JST

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(インドのスタートアップ、innozのウェブサイト)

今月17日と18日、ロンドンで「Wired(ワイヤード)2013」というイベントがあった。「Wired」といえば、米国が本家となるテクノロジー系の月刊誌。その英国版が開催したイベントだった。(ちなみに、日本では年に4回、紙版で発行。ネットではさまざまな記事が常時読める。)

発想の奇抜さとテクノロジーを使って遊ぶ精神に満ちたイベントだった。テクノロジー業界の外の著名人も多数登壇した。

例えば、中国生まれのピアニスト、ラン・ランがこれまでの経歴を語り、壇上でアイパッドを使いながら、ミニ演奏。アイスランドのミュージシャン、ビョークがマルチメディアの作品「バイオフィリア」の制作秘話を披露。米映画「トルーマン・ショー」(ジム・キャリー主演)で、主人公を助けるという重要な役割を演じたナターシャ・マケルホーンがテクノロジーの楽しさを語っていた。

米国のソーシャルメディアに関心のある方なら見逃せない、バズフィードやキックスターターの創業者もやってきた。2005年、単独で世界一周最短記録(当時)を打ち立てたエレン・マッカーサーが世界のエネルギー循環を促進するために立ち上げた財団の活動を説明したときの迫力も忘れられない(敬称略)。

いくつかのプレゼンテーションについて、読売新聞オンラインの「欧州メディア・ウオッチ」に書いたので、ご拝読いただければ幸いである。(27)コンピューターは嘘を見抜けるか?―WIRED 2013

そのほかの印象深いプレゼンテーションを紹介してみたい。

■キックスターターの創業者のお金についての考え

クラウドファンディングのサイトとして著名な米キックスターター。創業者の一人ヤンシー・ストリクラーが壇上で英ワイヤード誌編集長デービッド・ローワンからの質問に答えた。

現在、約70人のスタッフが勤務。ビジネスの目的は、群集(クラウド)からお金を集め、ほかの人のビジョンが形になることを助けること。お金儲け自体が目的ではないという。

新たなビジネスを始めたい人、さらにビジネスを大きくしたい人が銀行に行くよりももっと簡単に資金を集められるようにした。創業から4年半で8億5000万ドルの資金を集めたという。来年念頭には「10億ドルに達するかもしれない」。

どのプロジェクトを取り上げるかについて、何かルールがあるのかと聞かれ、ストリクラーは「どんな市場でも、助けてくれる人が必要だ」とした上で、ルールとして、「チャリティー団体を対象としない」という。

「例えばある人がハイチを救うために募金を求めていて、私が詩を出版するために資金を募っていたとしよう。2つのプロジェクトが平行して並んでいたら、私がろくでもないやつに見えてしまう」。

また、「広告という文化は不健全なものだと思う」とも発言した。「誇大宣伝につながる」からだ。

キックスターターが目指すのは「共有、正直、他人を同列に扱うという原則がある空間を作ること」。

1日に350件ほどの問い合わせがあるので、この中から決めるのはかなり困難だという。

実際に希望の金額を集めることができるのは全体の約44%だという。それでも、「資金を募ってみて、誰もサポートしてくれなかったときでも、学べることがある」。自分で資金を集めようと思うかもしれないし、そのプロジェクトは捨てて、次に進もうと思えるかもしれないからだ。

これからキックスターターを使おうとしている人へのアドバイスとして、「ありのままの自分でいるように」、「正直であれ」。

■普通の携帯電話をスマホ並みに使う

インドの起業家ディーパック・ラビンドラン(Deepak Ravindran)は、スマートフォンではない普通の携帯電話でもスマホ並みのネット利用ができる仕組みを開発した。ラビンドランはInnoz社のCEOだ。

スマホの利用が広がっているといっても、インドでは携帯電話のほとんどは非スマホの旧来型のものだ。そこでラビンドランが考えたのは、SMS(ショートメッセジサービス:携帯電話同士で短いテキストによるメッセージを送受信する)を使ってさまざまな情報を取得できる「SMSGYAN」というサービス。多くの人が使える、シンプルなプラットフォームを考えた。

インドで人気があるスポーツの1つがクリケット。そこで、通信会社と協力し、クリケットのスコアをSMSで送れるサービスを開始した。

さらにサービスを拡大し、何かあったら警察に通報できるツール、ツイッター、エバーノート、人探し、英語の学習など、さまざまなアプリを提供するようになった(アップストア)。

2011年3月から開始されたSMSGYANの利用料は月に30ルピーで、これは約1ドルに相当するという。現在、1億2000万人が利用している。

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例えばどんな感じの画面になるのか?その例を画像で見ていただきたい。左側に「インド・デリーの天気」という問いが発せられる。右側にデリーの気温などの文字情報が出る。

■イスラエルの人権擁護活動家がメディアを発足させた

英ワイヤードのローワン編集長が数年前から雑誌に出てほしいと声をかけていたものの、「表に出たくない」として断ってきた人物が、今年初めてワイヤード誌に登場。今月の「ワイヤード2013」のステージに登壇した。

イスラエル人のオレン・ヤコボヴィッチ(Oren Yakobovich)は、保守系の家庭に40数年前に生まれた。母国に誇りを持ち、10代で軍隊に入った。

次第に昇進し、イスラエルの占領下にあるウェストバンク(ヨルダン川西岸地区)に配置された。そこで初めて、不当な暴力行為が発生している状況を目にした。

軍役を果たすことを拒絶したヤコボヴィッチは刑務所に入れられた。ただし、すでに上官だったので、刑務所の待遇は「食事のまずさをのぞけば、まるでホテルに滞在しているようだった」。

自分が目にした状況をイスラエル国民に知らせないと社会は変わらないと思い、動画を撮影するようになった。

人権擁護団体B'Tselemに所属し、ウェストバンク近辺に住む100を超える家族にカメラの使い方を教えた。

イスラエル人の入植者たちが、話しかけようとして近づいてきた男性を野球のバットで殴ったり、目隠しをされたデモ参加者が兵士に撃たれる様子を撮影した動画は、イスラエルの主要テレビ局で放送された。「イスラエル軍に対して説明責任を求める声が強くなり、ウェストバンクで暴力が減少した」。

2008年、友人たちと真実を伝える団体「Videre」を結成。最初からメディアを作ろうとしていたわけではないが、世界中で何が起きているかを伝えるために、いつしか動画コンテンツの制作者になっていた。

Videreでは、「ほかの人が隠したいことを見せる」、「市民にカメラを持たせる」が柱となる。スタッフだけでは人権侵害の様子を撮影することはできず、当事者である市民自身が撮影することが特徴だ。

撮影していることがばれないよう、車の鍵やライターなど、小型カメラを別のものに隠しての撮影だった。

動画は容量が大きく、これを電子的に送信する機材を持っている人が少ない。また、例えば送信を政府側が把握すれば、市民が危険にさらされる。

このため、Videreではスタッフ自らが市民を訪ね、動画をもらう形をとっているという。

世界中に、隠密行動をとる約400人の活動家たちがいる。1500時間分の動画があり、350の物語として編集されたコンテンツは世界中の120以上のメディアで放送された。放送時、Videreの名前は出ないようにしているという。

Videreが入手した動画の一部が、会場内で流された。もっとも私が衝撃的に感じたのは、ケニアでの「女性器切除(略称FGM)」(すべてを取り去るのではなく、一部を切除)の現状の動画だった。数人の女性のインタビューが出た。一人の女性は切除を拒否したため、父親に勘当された。もう一人の女性は経験済みで、FGMは停止されるべき、という。

最後が中年の女性のインタビュー。この女性は村の女性にFGMを施す役割を長い間続けてきた。どんな風に行うのかと聞かれ、女性性器の一部を伸ばし、削除すると説明。その後、切られた性器の一部は「もちろん、捨てますよ」と大笑いしながら、カメラに向かって答えていた。

アフリカ諸国の一部などで、FGMは大人の女性への通過儀礼として行われてきたが、欧米では女性虐待として非難の声が上がっている。

地域によって習慣やものの見方は異なるが、この映像を見ていて、むごいと思わない女性は少ないのではないかと感じた。 (続く)

(この記事は2013年10月22日の「小林恭子の英国メディア・ウオッチ」より転載しました。)