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マスメディア報道の空白域をビッグデータで可視化する

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前々回前回の記事では「東日本大震災ビッグデータワークショップ」にて、早野龍五さんと取り組んだ「放射性ヨウ素拡散シミュレーションのマッシュアップ」について説明しました。今回の記事では、震災発生直後における"マスメディア報道の空白域"を可視化する試み「東日本大震災マスメディア・カバレッジ・マップ」について紹介します。

まず、この7月2日に放送されたNHK「震災の記憶をどう伝えるか」をご覧になったかたから頂いた感想ツイートを紹介します。2011年3月12日未明に発生した「長野県北部地震」についての情報を発信しているアカウントです。このツイートでは「東日本大震災アーカイブ」に含まれる証言や写真資料に、空白域があることが指摘されています。

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「2011年3月12日 新潟長野県境地震」Twitterアカウント

その後のやり取りのなかで、私は「東日本大震災マスメディア・カバレッジ・マップ」を紹介しました。これは、東日本大震災ビッグデータワークショップで提供された以下のデータを活用し、TV報道の「空白域」を可視化するプロジェクトです。

  1. NHK総合テレビ大震災発災直後から24時間の放送音声書き起こし (提供:NHK)
  2. 東日本大震災直後のテレビ放送テキスト要約データ (提供:JCC株式会社)

さらにこのプロジェクトでは、マスメディア報道とソーシャルメディア上の災害状況報告を比較するために、以下のデータを用いています。

  1. 2011年3月11日から1週間のツイート (提供: Twitter Japan 株式会社)
  2. 2011年3月11日から24時間の「減災リポート」(提供:株式会社ウェザーニューズ)

システム開発に際して、NHK放送技術研究所の山田一郎さん、NHK放送文化研究所の村上圭子さん、そして知人のpcaffeineさんにご協力いただいています。その他、詳細についてはドキュメントをご覧ください。

以下に「東日本大震災マスメディア・カバレッジ・マップ」を起動した状態のスクリーンショットを示します。

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東日本大震災マスメディア・カバレッジ・マップ

このシステムは、TV放送内容の書き起こしデータに含まれる「地名」や「施設名」を抜き出し、報道された場所を推測して、緯度経度・時間情報をもとにGoogle Earthにマッピングします。これによって、TV報道内で言及された/されなかった場所が可視化されます。

上記のスクリーンショットは、NHKが震災発生後24時間に報道した場所を表示したところです。報道された場所は赤い光で表されており、アイコンをクリックすることによって、報道された内容が表示されます。報道された回数が増えるに従い、アイコンの直径が大きくなります。

次に、東北地方沿岸のスクリーンショットを以下に示します。上はNHK報道のみを表示した状態で、下はソーシャルメディアによる災害状況報告を重層表示した状態です。ソーシャルメディア上の災害状況報告はピンク色の円で表されています。

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NHK報道とソーシャルメディア上の災害状況報告の比較

この上下の画像同士を比べてみると、NHK報道が沿岸部に集中していること、そして隙間や内陸部を埋めるように、ソーシャルメディア上の災害状況報告が分布していることがわかります。また前述した「長野県北部地震」についての報道や災害状況報告も確認できます。

次に、茨城県〜千葉県沿岸にかけてのスクリーンショットを示します。こちらも先ほどのスクリーンショット同様、上はNHK報道のみを表示した状態、下はソーシャルメディアによる災害状況報告を重層表示した状態です。

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茨城県〜千葉県沿岸のようす

上の画像からは、NHKの放送内ではこの地域についての言及が少なく、報道空白域が生じていることがわかります。しかし下の画像からは、NHK報道の空白域である茨城県神栖市において大きな被害が生じており、ソーシャルメディア上で多数の災害状況報告が発信されていたことを確認できます。

ここまでに紹介した例から、

  1. 東日本大震災発生直後のマスメディア報道には空白域が生じていたこと
  2. その空隙をソーシャルメディア上の災害状況報告が補完していたこと

が示されます。

当時のNHKには、各地の被害状況を集約する手段や、報道された/されていない地域を把握する手段がなかったようです。そのことによって、こうした報道空白域が生じたものと推測されます。その結果、報道空白域となった地域に対する認知度が低くなり、救援が遅れるなどの不利益が生じていた可能性があります。

このあたり、マスメディア報道の功罪が問われるところです。また、次なる災害に向けて、マスメディアとソーシャルメディアを連携し、報道空白域を補完する手段を用意する必要があると考えられます。私たちの手法は、その一つのモデルとなり得るものと考えており、現在、実用化に向けて歩を進めています。進捗状況についてはこのブログ等で報告していきます。

なお、ここまでの事例で取り上げたソーシャルメディア上の災害状況報告は「減災リポート」(ウェザーニューズ提供)によるものです。全国に居住する400万人の「ウェザーリポーター」は、災害状況を伝えるという使命感のもと、身の回りの災害状況をレポートしてきました。震災発生後の混乱期に、こうした日々の積み重ねが活かされたと言えます。

今後は、私たちが作成したようなシステムを構築するだけではなく、この「ウェザーリポーター」のように「使命感を持って災害状況を報告する」ことができるソーシャルメディアユーザをどう育てるのか。あるいは情報発信にどういう指針を定めるのか。といった、社会的な実践が必要です。これは、これまでに述べた「記憶のコミュニティ」の形成とも通底するミッションです。

この「減災リポート」のデータは「東日本大震災アーカイブ」でも閲覧することができます。被災者証言や写真とともに閲覧することで、被災地の状況についてより深く知ることができるはずです。画面上部のチェックボックスをONにすると表示されますので、ぜひご覧いただきたいと思います。以下にいくつかの例を示します。

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「減災リポート」の例

最後にお知らせです。毎年開催されるデジタルクリエイター、エンジニアの祭典「Mashup Awards」のプレイベント「合宿型Mashup Camp Supported by Startup Weekend Japan」の審査員を務めることになりました。なお、Mashup Awardsでは過去に「東日本大震災アーカイブ」のほか、首都大・渡邉研の学生たちの作品が受賞しています。みなさまのご参加をお待ちしています。