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グーグルに対抗できるのはスバルかもしれない

2013年10月04日 00時59分 JST | 更新 2013年12月03日 19時12分 JST

スバルでお馴染みの富士重工の元気さが目立っています。6月に発表されたスバル初のハイブリッド車「スバルXVハイブリッド」がヒットし、納車まで5ヶ月待ちという状況で、生産台数を9月から前月比2倍の月2000台に引き上げています。

富士重工HV、月産倍増2000台 : ニュース : @CARS : YOMIURI ONLINE(読売新聞) :

北米では、この10月から販売が開始されるそうですが、北米市場では9月の自動車販売で日本を含めアジア勢が、前月までの反動で売上を落としたなかで、富士重工は15%増で、ますます勢いづいてきそうです。

日本の「ビッグスリー」減速 米自動車9月販売 前月急増で逼迫 (1/3ページ) - SankeiBiz(サンケイビズ) :

富士重工の安全運転支援システム「アイサイト」が米国道路安全保険協会(IIHS)で最高の評価を得たというニュースがありましたが、さらに富士重工は、「アイサイト」の次世代モデルを昨日発表していました。前方の動きをカラー識別して、赤信号やブレーキランプの点滅を認識するほか、高速道路で走行車線でのはみ出しを防ぐ機能が加えられ、また衝突を回避できる速度差を従来の時速30キロ以下から同50キロ以下にまで高めたといいます。

富士重アイサイトにIIHSが最高評価、開発責任者「インパクトの大きい結果」 | レスポンス :

富士重工が安全運転支援システム「アイサイト」を進化+(1/2ページ) - MSN産経ニュース :

さて、そこで興味を引くのは、一方ではグーグルがすでに幾度かの実験を成功させ、また世界の自動車メーカーが取り組み始めた「自動走行技術」があり、一方では富士重工のように「事故防止の技術」をコツコツと積み重ねていく開発のアプローチは対極にあるように感じますが、この先どうなっていくのかが楽しみです。

グーグルが自動運転システムを開発中であると発表したのは2010年で、世界中を驚かせました。おそらく世界の自動車メーカーを震撼させたのではないでしょうか。なぜなら、自動車をロボット化し、そのOSもまた情報システムもグーグルが握るという意図が見え透いているからです。

グーグルが、地図情報を進化させ、さらに自動車を動かすOSの標準ともなれば、グーグルが自動車産業の上に君臨することになり、アンドロイドのスマートフォンが物語るように、自動車もクラウドが支配する時代がやってくれば、グーグルの支配のもとに、自動車メーカーはそのもとで動くたんなるハードをつくるだけの存在になりかねません。

グーグルは、地図や通信といった事業との相乗効果が追求でき、自動車メーカーから巨額のライセンス費を得ることができます。

「グーグルは今後10年間、自動運転車から利益を得るだろう」--米アナリスト - CNET Japan :

自動車メーカーが自動運転車の開発に力を入れ始めたのも当然の動きと言えます。

メルセデス、自動走行車の実験に成功 - WSJ.com :

自動運転車、日産が2020年までに発売 開発競争激化 :

グーグルはいきなり自動運転システムの最終のゴールともいえる無人走行にチャレンジし、自動車メーカーもそれにキャッチアップしようと技術開発をはじめた、また政府も後押しをしはじめたということですが、富士重工の「アイサイト」は下のレベルから積み上げ、実際のビジネスに乗せながら進化させていこうという対照的な発想です。

冷静に現実を考えると、もし自動運転に委ねていた車が事故が起こった際に一体誰が責任を取るのかという問題にとどまらず、「実験で得られる状況」と「実際にドライバーが遭遇する現実」では複雑さが異なり、ほんとうにいざという時にただしい操作が行われるのかという不安も残っています。車を制御しているOSが暴走したときにはどうするのでしょう。スマホなら再起動すればいいのですが、走行中の車では一瞬に恐怖のドライブになってしまいます。

自動運転車、夢を現実に 開発競争過熱も法整備に課題+(1/3ページ) - MSN産経ニュース :

そう考えると、グーグルや日産、またメルセデスが行っているように夢に向かって実験を重ねるというのと、商用化してさまざまなケースを積み重ねはじめていくという富士重工の開発戦略もいずれもがあるのだろう、おそらく現実のビジネスを積み重ねていったほうがゴールに辿り着くには早いかもしれないとも感じてしまうのです。

思い起こすのは液晶の歴史です。今は日本の液晶業界は冴えませんが、液晶をほんとうに実用化し進化させたのは日本の技術です。壁掛けテレビという高邁な理想を追いかけるのではなく、まずは電卓や時計といった液晶の技術からすればレベルの低いところから商用化に成功したことが、後に技術の進化の道を切り開いたのです。

もしかすると、自動走行システムでグーグルに対抗できる、あるいはもしかするとグーグルと技術で棲み分け、補完しあう存在となる道を富士重工がまっさきに歩んでいるのかもしれません。

(この記事は2013年10月3日の「大西 宏のマーケティング・エッセンス」からの転載です)