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スマートウォッチがヒットしない理由

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サムスンのスマートウォッチGalaxyGearが明日から発売だそうですが、連携できるのがGalaxyシリーズだけというのでは、そもそも掲げられている「Smart Freedam」の看板に偽りありで、おまけグッズ感が否めません。

スマートウォッチではSONYの三代目となるsmartwatch2は防水機能がついていたり、アンドロイドのスマートフォンやタブレットであれば連携がとれるのと、価格も15,000円程度と思われるので、GalaxyGearよりは人気がでそうですが、まだ日本での発売が決まっていません。しかしこちらのほうも大ヒットするという印象を受けないのが残念なところです。

理由を考えたのですが、たんに時計をスマート化、つまり時計をコンピュータ化したにすぎないからではないでしょうか。使用目的やデザイン、コンセプトであっと驚く新しさがありません。

その証拠に、どれを見ても時計のカタチを踏襲したものばかりで、なにが新しいか、どう日常を変えてくれるのかが視覚的にも伝わってきません。スマートウォッチとはなにかという肝心のコンセプトの創造に失敗しているからでしょう。それなら普通の時計のほうがはるかにアクセサリーとしてすぐれているように感じます。

メガネにコンピュータを装着するGoogleGlassについてもそうですが、ウエアラブル・コンピュータでは、技術がチャレンジする方向性やビジョンでしかなく、製品としてのコンセプトとはいえません。

なぜならコンピュータを身につけるというニーズなど誰も持っておらず、なにか新しい体験ができたときに、その体験が魅力溢れるものなら、結果として身につけるかもしれないというあたりまえが忘れ去られているからです。ニーズを創造するコンセプトや、そのコンセプトに基づいたデザインや機能、またそれで得られる体験がなければただの技術の見本市に過ぎません。

そう眺めると、現在のスマートウォッチは、iPhone登場前のノキアなどのスマートフォンなのかもしれません。あるいはiPod登場前のMP3オーディオプレイヤーなのでしょう。

それでは、最初に新しいものを積極的に受け入れる人たちの間では話題彷彿となっても、多くの人には受け入れられず、市場が広がらない、いわゆるキャズムの深い溝を飛び越えることはできません。

iPhoneはタッチパネルを使うことで、キーボードをなくして外観も変え、得られる体験も大きく変え、またコンセプトも変えて、スマートフォン市場を大きく広げました。アンドロイドもiPhoneのコンセプトを踏襲したに過ぎません。

それよりも面白そうなのが、いよいよNIKEからリストバンド型活動量計のNIKE+FUELBAND SEが日本でも発売になりそうです。こちらのほうが新しさを感じます。しかも身に付ける必然性を感じます。

Nike、新しいリストバンド型活動量計『Nike+ Fuelband SE』を発表 - 日本でも発売へ :

NIKE+FUELBANDも立派なスマートウォッチだと思いますが、サムスンやSONYのスマートウォッチとの違いは、「人生はスポーツだ」と世界観を描いて製品化していることです。

ジョブズのDNAを引き継いだナイキのイノベーションから学べること : アゴラ - ライブドアブログ :

近い製品としては、12月にドコモから腕時計スマートデバイス「ムーブバンド」が発売予定ですが、なにかインパクトが弱いところが気になります。

NTTドコモ、リストバンド型スマートデバイス「ムーブバンド」を発表!:

確かにサムスンやSONYのスマートウォッチも技術で言えばさまざまなイノベーションの塊だと思います。機能や仕様にはさまざまなアイデアが盛り込まれています。しかしその製品がいったいなにもので、私達のなにを変えてくれるのかという基本設計で物足らなさを感じてしまうのです。

「モノづくり」という発想が陥りやすい落し穴ではないでしょうか。

「コンピュータ化し、通信機能を持った時計」ではなく、これまで世の中になかった「スマートウォッチの再定義」をぜひ追求していただきたいものです。そう考えていくと、感動され、共感され、また日本の時計産業を大きく進化させるアイデアも生まれてくるのではないかと思います。

(この記事は2013年10月16日の「大西 宏のマーケティング・エッセンス」からの転載です)