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タンザニア:児童婚で傷つく少女たち。婚姻年齢を18歳以上にすべき

2014年11月10日 15時17分 JST
2014 Marcus Bleasdale/VII for Human Rights Watch

タンザニアの憲法草案は、残念ながら婚姻最低年齢を定めていない。結婚法で婚姻適齢を満18歳以上と定め、児童婚に対しより強力な保護策を採用することで、タンザニア政府は児童婚廃絶へのリーダーシップを発揮すべきだ。
―ブレンダ・アキア、女性の権利局の調査フェローで本報告書の執筆者

(ナイロビ)― タンザニアにおける児童婚は教育機会を奪い、少女たちを重大な危険に直面させるものだ、とヒューマン・ライツ・ウォッチは本日発表の報告書内で述べた。政府は男女とも婚姻最低年齢を満18歳以上と定め、児童婚の廃絶と少女や女性の生活改善に向け、第一歩を踏み出すべきだ。

報告書「逃げ道がない:タンザニアの児童婚と人権侵害」(全75ページ)は、児童婚が女子教育を制限し、少女たちを夫婦間レイプや女性性器切除 (FGM)、そしてリプロダクティブヘルス(性・生殖と健康)上のリスクといった搾取・暴力にさらしているか現状を調査し、取りまとめたもの。本報告書ではタンザニアの子どもの権利保護制度の抜け穴、児童婚被害者のための保護策の不在、救済措置を求める際の障壁、ならびに児童婚と闘うための現行法および政府行動計画の欠陥などを、詳しく検証している。

ヒューマン・ライツ・ウォッチ女性の権利局の調査フェローで本報告書を執筆したブレンダ・アキアは、「タンザニアの憲法草案は、残念ながら婚姻最低年齢を定めていない」と指摘する。「結婚法で婚姻適齢を満18歳以上と定め、児童婚に対しより強力な保護策を採用することで、タンザニア政府は児童婚廃絶へのリーダーシップを発揮すべきだ。」

本報告書は、タンザニア12県に住む少女と女性135人、ならびに政府関係者や地元活動家、国際機関関係者への聞き取り調査を基にしている。

タンザニアの結婚法(1971年)は、保護者の同意を前提に婚姻適齢を男子が満18歳以上、女子が満15歳以上とそれぞれ定めている。新憲法の起草を担当する制憲議会は2014年10月に最終草案を発表したが、男女統一の婚姻最低年齢が含まれておらず、児童婚廃絶をめぐる絶好の機会を逃したかたちだ。

タンザニア法改正委員会の勧告に従って政府は結婚法の再考を計画しており、憲法の再考過程について結論が出た後に、公聴会に向け政府白書をまとめることになっている。

近ごろは児童婚が減少しつつあるとはいえ、その率はまだ極めて高い。政府の統計によると、タンザニア女性10人のうち4人は18歳未満で結婚している。

アニタ(19歳)は、中学校2年生だった16歳の時に父親に強制されて結婚した。「私を学校に通わせるお金がない、と父は言いました。その時すでに持参金として牛を20頭受けとっていたのです。」

家事労働者として働いていた先の虐待と搾取から逃れて、ジュディスが結婚したのは14歳のとき。「勤め先の使用人だった男の子が結婚しないかというので、同意したんです。雇用主の虐待から逃れるにはそれしかないと分かっていたから。」

少女たちは持参金目的で家族が結婚を強制したと証言する。家族は娘の教育機会を尊重しておらず、少女たちが当時妊娠していないか、または将来妊娠して一家に不名誉をもたらすことを恐れていたのが、その理由だという。結婚を貧困や暴力、ネグレクト、児童労働から逃れる方法と考えていた少女たちもいた。

男女格差があり、あいまいな政府の教育政策が、早すぎる結婚や女子の教育・機会の深刻な障害に繋がっている。タンザニアの学校の多くは、妊娠検査を義務化。既婚、あるいは婚前交渉・妊娠など「道徳に反する」行為を犯した生徒を退学・除籍処分にすることを、政府も学校側に認めているのが現状だ。

中学校への進学を決定するために一斉に行われる小学校卒業試験も、少女たちを児童婚に向かわせる一因となっている。

サリア・J(19歳)は、この試験に落ちて15歳で強制的に結婚させられた。「私が家で家事手伝いをしていただけだったので、父が結婚相手を探してきたんです。」

前出のアキア調査フェローは、「義務化された妊娠検査と妊娠・結婚した少女を学校から除籍することは、諸権利、とくに教育へのそれの重大な侵害だ」と指摘する。「政府は男女差別的な規制を白紙に戻し、妊娠・結婚している少女や若い母親が継続して教育を受けられるようにすべきだ。」

児童婚は少女と女性を、より大きな性的および性に基づく暴力への危険にさらす。結婚を拒否、またはそれに抵抗しようとした少女たちは家族から身体的・心理的暴力を受けたり、勘当されたと話す。結婚を避けられなかった少女たちも夫から殴られてレイプされ、家庭や暮らしについての決定を何もさせてもらえなかったと証言した。

また、聞き取り調査に応じた少女の多数が、夫の経済的支援も全くなしに子どもを育てているという。義理の家族から暴力や虐待を受けていた少女たちもいる。マサイ族とゴゴ族の少女たちは、結婚準備として女性性器切除を強制されていた。

政府は婚姻適齢を満18歳以上と定めることを含め、結婚・離婚法の包括的な改正に動くべきだ。そして家庭内暴力禁止法を制定して、結婚生活における暴力を犯罪と定め、児童婚廃絶と問題の対処に向け、国家行動計画を策定すべきだろう。

また学校での妊娠検査に終止符を打ち、妊娠および結婚している生徒の在籍を許可すべきだ。加えて、小学校卒業試験の結果にかかわらず、全員が中学校へ進学できるよう、可能な措置をすべてとるべきだ。

前出のアキア調査フェローは、「児童婚は多大な悪影響を少女と女性に及ぼしている」と述べる。「タンザニア政府はこれを廃絶し、被害者がこころから必要としている心理的・社会的・経済的支援を提供するために、速やかで長期的な対策を練らなければならない。

証言の抜粋(文中の氏名はすべて仮名)

小学校卒業試験に受かって、中学校に進学できるはずでした。でもおじが言ったんです。「学校にやる金はない。女の子の教育に金なんてかけられない」って。だから結婚しました。

―14歳で結婚したケイト・M(2014年4月、カハマ県)

家庭使用人として厳しい日々を送っていました。虐待や恥ずかしめを日常的に受けて。この苦しみから抜け出すには結婚しかないと思ったんです。それで結婚相手をみつけました。

―17歳で結婚したナンシー・J(2014年3月、ムワンザ市)

義理の母にすごく虐待されていました。自分の子どもたちとのんびりしている間に、私が家事のほとんどをやっていたんです。食事をさせてもらえないこともよくあったし、殴られたりののしられたりも。義理の母から逃げられるなら、結婚の方がましだと思いました。

―15歳で結婚したティナ・J(2014年4月、リンディ県農村)

「お前は買われたんだ。お前の父親にたくさん支払ったから、お前は俺のものだ。どこか好きなところに行けると思っているのか?」

―16歳で結婚したドーラ・Pが身体的・心理的虐待に抗議したときに夫が放った言葉(2014年4月、カハマ県)

性交渉を強要されたけれど、抵抗しませんでした。両親からすべて夫の言う通りにするようにと言われていたから。家庭内の問題は口外するなとも言われていたので、夫のことも誰にも言いませんでした。

―14歳で結婚したペニーナ・K(2014年4月、カハマ県)

かつて夫から毎日のように殴られていました。ある日夫が帰ってきて、騒がしい音をたてながら、私を燃やしてしまうと脅したんです。理由を聞くと、「お前の父親は貧しいから俺の金を受け取った」と言いました。それから脚を開くよう命じられましたが拒否しました。夫は家の外から焼けた炭をもってくると、無理矢理私の脚を開いて、局部に炭を入れたんです。何もできませんでした。泣くこと以外は。

―15歳で結婚したパトリシア・J(2014年4月、チェンバ県)。パトリシアの夫は彼女の父に持参金として7万タンザニアシリング(44米ドル)を支払った。パトリシアは最終的にこの結婚生活を逃れて、現在は友人のところに身を寄せている。

何も許されていなかったんです。私が家庭で決められることなど何もなかった。

―14歳で結婚したナタリー・F(2014年3月、キシャプ県)。ナタリーは27歳の男性と結婚した。

(2014年10月29日「Human Rights Watch」より転載)