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最下位・富山に苦しみながらも勝利。夢のJ1初昇格についに王手をかけた松本山雅(元川悦子)

2014年10月28日 18時52分 JST | 更新 2014年10月28日 18時52分 JST
時事通信社

「僕がヴァンフォーレ甲府にいた頃、(松本)山雅さんとはよく練習試合をさせてもらいましたが、地域リーグのクラブにも関わらず沢山の方が応援に駆けつけてくれた。当時のチャレンジがあるから松本の強さがある。その後、反町(康治=監督)さんが来て、勝つためにチームを導いてくれて、J1昇格一歩手前の所に来ている。そういうチームだからこそ、松本にはJ1に行って欲しい。厳しい中で打ち勝つだけの体力もあると思います」

10月26日の2014年J2第38節・松本山雅対カターレ富山戦。敗戦の将・安間貴義監督は、自身が甲府を率いていた2009年に湘南ベルマーレと熾烈なJ1昇格争いを演じた当時の指揮官である反町監督と松本山雅の現在に最大級の賛辞を送った。その富山を下した山雅は長年の夢だった悲願のJ1昇格にいよいよ王手をかけた。

5試合未勝利で終わった9月とは打って変わり、10月に入ってからは横浜FCと大分トリニータに連勝し、京都サンガに引き分けと順調に勝ち点を重ねてきた山雅。しかし26日の相手・富山は一筋縄ではいかない相手だった。彼らは目下、ダントツの最下位に沈んでいて、J3自動降格の危機に瀕している。崖っぷちに立たされているだけに、ここ一番の力は出るはず。加えてメンバーも安間監督の甲府時代の秘蔵っ子である池端陽介、大西容平に加え、年代別代表歴のある白崎凌兵、宮吉拓実、苔口卓也といった個人能力の面々がいる。山雅は下位チームに苦戦するジンクスがある。気合を入れてのぞむ必要があった。

アルウィンが春先のような強風に見舞われたこともあり、前半の山雅はかなりの苦戦を強いられた。加藤善之GMが試合後「選手たちには目に見えない重圧がかかっているのか、動きが非常に硬かった」とコメントしていたが、この日の山雅は前線の山本大貴の所でボールが収まらず、中盤の喜山康平がミスパスを連発するなど、流れがつかめなかった。相手は5−3−2の守備的布陣で自陣に人数をかけて守りを固め、スピードのある苔口のカウンターでゴールを狙ってくる。その苔口を喜山が止め切れなかったり、彼と連動して前に出てきた宮吉、白崎のマークが遅れたりと、どうもドタバタ感が拭えない。前半は決定機らしい決定機が全く作れないまま終了した。

この戦いぶりを見て、反町監督はハーフタイムに選手たちに檄を飛ばしたという。「セカンドボールが拾えていないと監督から激しい口調で言われた」と岩間雄大も反省しきりだった。指揮官の喝がきいたのか、後半の山雅は風下に回ったにも関わらずアグレッシブさが出てきた。得意のリスタートのチャンスも増え、後半17分に岩上祐三の右サイドのFKを大久保裕樹がヘッドで合わせ待望の先制点を手に入れる。これも犬飼智也の相手マークがつくことを想定し、うまい具合にフリースペースを作ったところに大久保が入りこんだ形だった。

「今季、山雅に来て長いこと怪我で試合に出られず苦しんだけど、町の人たちに心から温かい言葉をかけてもらい応援してくれた。松本は僕にとっての『パワースポット』。こうやってシーズン終盤になってチームに貢献できるのは本当に嬉しい。今まで4回J1に上がってますけど、その経験を大事な所で活かしたい」と大久保は嬉しそうに語っていた。市立船橋高校時代はユース代表でも活躍した逸材はサンフレッチェ広島、京都、栃木SC、徳島ヴォルティスを渡り歩いてきて、本人が言うとおり2003年、2005年、2007年、2013年と4回もJ1に上がっている。この経験はJ1で2度優勝している田中隼磨とは違った意味で貴重だ。こういう選手が重要局面で表舞台に出てきてチームを支えてくれるのが、今季の山雅の好循環の表れなのだろう。彼には引き続き、調子を上げてもらいたい。

そして決勝点になったのは、後半26分の飯田真輝の倒れこみながらの左足ゴール。岩上のFKからクリアボールを押し込んだ形だったが、岩上も「イーちゃんのあの得点には驚いた」と笑顔で話していた。2012年J2開幕の東京ヴェルディ戦に先発出場している唯一のプレーヤーであるキャプテンの一撃で、チームはさらに盛り上がった。

最後の富山の猛攻で1点を失ったのは痛かったが、「それでも勝ち切れたのは進歩」と反町監督は語っていた。結局、今回も2得点はセットプレーだったが、9月は相手の対策で封じられたセットプレーで再びゴールが奪えるようになったのは心強い。岩上も「自分も少し蹴り方を変えて工夫をつけている。周りがそれにうまく合わせてくれている」と手ごたえを口にした。そういう前進がチームの大きな勢いになっている。このまま一気に11月1日のアビスパ福岡戦で勝利して、目標を達成したいところだ。

奇しくも3年前の2011年、JFLからJ2昇格を決めたのも同じ九州の地だった。宮崎と福岡の違いはあれど、ゲンのいい場所ではないだろうか。そこで大願成就といきたいものだ。

(2014年10月27日「元川 悦子コラム」より転載)

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元川 悦子
もとかわえつこ1967年、長野県生まれ。夕刊紙記者などを経て、94年からフリーのサッカーライターに。Jリーグ、日本代表から海外まで幅広くフォロー。ワールドカップは94年アメリカ大会から4回連続で現地取材した。中村俊輔らシドニー世代も10年以上見続けている。そして最近は「日本代表ウォッチャー」として練習から試合まで欠かさず取材している。著書に「U-22」(小学館)「初めてでも楽しめる欧州サッカーの旅」(NHK出版)ほか。

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