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日本が世界の科学技術イノベーション活動で貢献していくために〜アジアの科学技術イノベーション(STI)のコミュニティづくり〜

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■既存のコミュニティをつなげることの必要性


個人としても国としても、グローバル化が進む世界でよりよい社会をつくっていくために貢献していこうと思えば、多様なバックグラウンドを持った人たちによって構成されるネットワーク(コミュニティ)が不可欠だと、海外に身をおくと強く感じます。

研究者という点では、とくに自然科学系研究者は、世界中に自主的な勉強会組織を作っていますが、地域、分野を超えた大規模な活動は未だ乏しく、また主催者が異動等で代わると自然消滅することもしばしばです。

ビジネス業界においても同様であり、諸外国地域にR&Dセンター/部門を置く日系企業も多く、企業自身の世界戦略を考える上でも重要な研究者コミュニティとなっていますが、それぞれが横断するまでには至っていません。

一方、政府や政府関係機関を見ると、科学技術振興機構(JST)や日本学術振興会(JSPS)、また、とくにライフサイエンス系に限れば日本医療研究開発機構(AMED)が国際的なネットワークを形成しています。経済活動についても、日本貿易振興機構(JETRO)などが世界各地に事務所を持っています。

このように、世界中で政府関係機関のネットワークが形成されていますが、現場研究者、ビジネスパーソン、地域住民を含めたコミュニティ形成は乏しいのが現状です。

また、学術領域では自然科学と人文・社会科学のあいだの交流は乏しいですし、さらにビジネス界や政府関係機関を横断しようとすると、縦割り社会のシステムが根付いた日本人社会では形成されにくいのが現状です。

ましてや将来のグローバル化を見据えた海外での形成となると、ますます困難となります。

■コミュニティ形成を促す土壌を作る


そのようななかで、近年、アジアの科学技術イノベーション(STI)への関心が、研究者・ビジネス・政策コミュニティで非常に高まっています。

まずシンガポールや中国をはじめとしたアジア諸国・地域の経済成長とともに、研究開発(R&D)やイノベーション、科学技術教育の行方に注目が集まるようになりました。また、政府も日本のSTIの国際化を促進し、アジアのSTIの活力を取り込むため、各種政策を打ち出しています。そして、日本から飛び出して、中国やシンガポールなどで科学技術研究を行う研究者も増えてきました。

しかし、この存在感の増すアジアのSTIを対象に、その動向や課題について分野を越えて情報交換するコミュニティや、日米欧のSTIとの関係を議論するための場はありませんでした。

そこで、世界で活躍する日本人研究者の連絡会・海外日本人研究者ネットワーク(1)は科学技術振興機構(JST)北京事務所と共催で、関係コミュニティの発展、そして横断に貢献するための土壌として、「Japan Forum for Asian Science and Technology(JFAST)―アジアの科学技術イノベーションのための交流会―」(2)を立ち上げました。

このコミュニティ形成を促す土壌形成にために、まずは、発展著しいバイオ産業やエレクトロニクス産業を含めたハイテク産業を取り上げ、中国やシンガポールなどの最新動向を理解しながら今後の日本の課題を考えていきます。

私たちがアジアの、さらに、世界のSTI活動でこれからも貢献していくために、複数のネットワークをつないでいくコミュニティ形成を促す土壌を作ることは、非常に重要ではないでしょうか。

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(画像:アジアの最先端のSTI拠点や製品たち(すべて編集協力者が現地で撮影)
左から時計回りに、「シンガポール・バイオポリス」「シンガポールの学術研究拠点(ワン・ノース)内の社屋」「中国ドローン大手の製品ラインナップ」「香港科技園」)

■STI活動にとってネットワークをつないでいくことの重要性


アメリカはボストンにあるハーバード大学やマサチューセッツ工科大学では、科学技術系研究者が発明、開発したものを、速やかに経営大学院でどうビジネスにつながるかを議論し、それに関わる政策を政策系大学院などで研究し、特許出願後に世界にいち早く排出するコミュニティ横断システムが出来上がっています(3)。

私たちが100年後も世界のSTI活動で貢献していくために、ノーベル賞多数排出する日本の発明を、日本企業が速やかに商品化し、政府の後押しで世界展開する仕組みが早急に求められています。たとえば、先日ノーベル賞を受賞した「オートファジー」も、多くのネットワークをつないでいけば、このシステムに基づいたがん細胞を死滅させる治療薬を作り、特許を取得後に早急に世界展開していくことが可能になるかもしれません。

一方で、すでにシンガポールなどではこのような各種コミュニティ形成、横断は非常に速やかです。

海外で研究を行ってきた研究者が、日本にこのような仕組みを根付かそうとしても、現状ではなかなか進まず歯がゆい思いをするでしょう。そこで各分野の垣根を取り払ったコミュニティ形成を促し、知のネットワークを張り巡らせることができるならば、海外からも日本人のまとまった現場の声が届き、大きな力となるはずです。

■まとめ


これからの100年を作り上げるために、そして私たちがアジアや世界の未来に貢献していくために、垣根を越えた大きな横断コミュニティを、日本を含むアジアで作る必要があると信じています。

編者:北原 秀治(きたはら しゅうじ)
日本政策学校 第2期生、オーガナイザー
博士(医学)。ハーバード大学医学部マサチューセッツ総合病院博士研究員。専門は解剖組織学、癌研究。日本政策学校、ハーバード松下村塾(通称ボーゲル塾)で政治を学びながら、「政治と科学こそ融合すべき」を信念に活動中。現在シンクタンクを立ち上げ、Web等を手伝ってくださる方募集しています。

編集協力:今井美沙(いまい みさ)
順天堂大学大学院医学研究科先導的がん医療開発研究センター助教。博士(生命科学)。
東京大学にて博士号を取得後、フィンランドへ。その後、アメリカでの研究生活も経て、現在は基礎と臨床を結び研究の推進を目指す研究コーディネーターとして活躍中。

参考:
(1) 海外日本人研究者ネットワーク(UJA)
http://uja-info.org
(2) Japan Forum for Asian Science and Technology(JFAST)https://docs.google.com/forms/d/e/1FAIpQLSd0Tz-q8LZV_iZs0Ejff-RErqBk_ryjDGjgg6Cu7vPygI37JQ/viewform?c=0&w=1
(3) Harvard Business School (Technology and Innovation)
http://www.hbs.edu/faculty/topics/Pages/technology-and-innovation.aspx