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『アフター・アース』 - 宿輪純一のシネマ経済学(2)

2013年07月12日 18時06分 JST | 更新 2013年09月10日 18時12分 JST

衝撃的な名作『シックス・センス』(1999年)の監督であるインド系アメリカ人のM・ナイト・シャマランによるSF映画。

ウィル・スミスとジェイデン・スミスが『幸せのちから』(2006年)以来の親子共演。やや親ばか的な面を感じられるのは筆者だけであろうか(笑)。ウィル・スミスは1968年生まれの45歳。裕福な家庭に育ったせいか、屈託のない人懐っこい笑顔は人をひきつけ、比類を見ない。ちなみに、ジェイディンは1998年生まれの15歳。

2025年、人類は地球の自然環境を汚染し破壊してしまい、惑星ノヴァ・プライムに移住した。この西暦2025以降を「After Earth(AE)」という設定となっている。ちなみに2025年と言ったらあと12年後であり、意外と近いか。

その1000年が経過した未来。ある宇宙遠征任務からの帰路につく兵士サイファ(ウィル)と息子のキタイ(ジェイディン)を乗せた宇宙船にトラブルが発生して機体が破損、緊急シグナルを搭載した尾翼部がなんと"地球"へと落下。それを追って地球に宇宙船が不時着するが、ほかのクルーたちは死亡してしまい、サイファも重傷を負う。大自然に足を踏み入れたが、地球の生態系が凶暴な動物たちを生み出して進化していた。兵器として人類を抹殺する巨大生物「アーサ」も登場しキタイと対決する。この「アーサ」は視覚も嗅覚もないが、人の"恐怖心"を察知して攻撃するのである。まさに肉体面も、精神面もサバイバルな状況が展開される。

このように「地球が汚染されて宇宙へ移民する」という設定の映画は多い。さらに、特に恐怖心など"意識"が怪獣に影響を与える設定は名作『禁断の惑星』(1956年)に似ている。この"意識"の問題もとても興味深いが、どうしても「自然環境を汚染し破壊して」という環境問題のほうが筆者は気になる。

人にも、生き方として目先のことしか考えない人もいるが、先のことを考えられる人もいる。経済政策にも、短期的な政策と長期的な政策がある。環境問題の対応はまさに長期的な政策で、まさに人間の"賢さ"が出る政策と考えている。実際、最近の経済政策は、というか、政治の世界は、自分自身で構造改革を進めるような自己努力の長期的な政策よりも、現状維持型の"甘い"他力本願的な短期政策が増えてきているような気がする。国民もそのような政策を好むようになってきたようである。「良薬、口に苦し」型の経済政策は、最近は流行らないのである。アベノミクスにしても、短期的な政策の財政出動や金融緩和はできるが、長期的な成長戦略ははっきりしない。短期的な経済政策もいいが、どれだけ長期的な政策をとれるかが、経済運営の"賢さ"だと考える。

今年の夏は異常に暑い。筆者が小さいころは気温が30度に行っただけで大騒ぎであった。いわゆる地球が温暖化しているのであろう。温暖化は「二酸化炭素(CO2)」などの排出が原因といわれている。京都議定書という名称にも残っているように、日本は温暖化の対策にも前向きであった。しかし、東日本大震災が発生し、原子力発電所が停止したため、化石燃料を使う火力発電に頼らざるを得ない状況である。その結果、それまで以上の大量の二酸化炭素が排出されていて、温暖化をさらに進行させてしまう可能性もある。

映画では、地球が汚染されても新しい惑星を見つけて移住するが、現実はそんなに簡単なものではない。環境問題を論じた映画ではアル・ゴアの『不都合な真実』(2006年)という名作もあった。

しかも、最近では、日本の気候は亜熱帯となったように、激しい雨が降り、土砂崩れなども発生している。暑いとさらにエアコンを使い電力を消費することになる。環境問題は「今そこにある危機」になりそうである。

筆者の書籍紹介

ローマの休日とユーロの謎―シネマ経済学入門』(東洋経済新報社)

不朽の名作『ローマの休日』がなければユーロは誕生しなかった?  『スターウォーズ』は現在の通貨理論を超えている?  『007 ゴールドフィンガー』に出てくる経済学の基本的な法則とは?  『バック・トゥ・ザ・フューチャ―』が教えてくれる最も大事な経営資源とは? 拝金主義を否定していた『ニュー・シネマ・パラダイス』?  『マンマ・ミーア!』は行動経済学の教科書? 『タイタニック』で景気の先行きが分かる?  『セックス・アンド・ザ・シティ』が提起する都市の経済問題とは?

『ローマの休日』から最新作まで、さまざまな映画85本を題材にとりながら、経済・金融・経営・人生などのさまざまなトピックをやさしく解説した、新しい「シネマ経済学」入門。映画と経済の第一線の専門家だから出来た新しい解説。「シネマ経済学」は人気講義で、テレビでも解説。

映画を観てから読んでも面白いし、本書を読んでから映画を観ればその映画がもっと好きになる。古典的な名作から最近の話題作まで解説し、老若男女を問わず楽しめる1冊。