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コロンビア、左翼ゲリラと和平合意--半世紀に及ぶ内戦の行方は国民投票の結果次第

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南米コロンビアで、歴史的な瞬間が訪れた。

コロンビア政府と左翼ゲリラ組織である「コロンビア革命軍」(Fuerzas Armadas Revolucionarias de Colombia/以下FARC)は今月24日、半世紀以上に及んだ内戦の終結に向けた和平交渉について最終合意に達したと発表した。4年にわたって交渉を続けてきた両者は、キューバの首都ハバナで共同声明を発表。調停役を務めたキューバ代表によって、「コロンビア政府とFARCは、内戦の終結と安定して持続的な平和の構築に関する、最終的で完全、かつ決定的な最終合意に到達したことを宣言する。」と読み上げられた。
 
 
コロンビア内戦は、アメリカ大陸における大規模な紛争としては最後のものとなっていた。この内戦では推定22万人が死亡、数万人が行方不明になったほか、500万人もの人々が避難民になったと言われている。
 
 
 
キューバ革命を見本とした左翼ゲリラ組織

1959年にキューバ革命が起こると、それに影響を受けて中南米諸国では反政府左翼ゲリラ組織の結成が相次いだ。FARCもその内の一つであり、結成は1964年。キューバ革命を見本として、農地改革や富の再分配を目指して武装闘争を展開した。

台頭初期の勢力はわずかだったものの、その後麻薬組織と協力関係を築く事で勢力を拡大。最盛期には約2万人を擁し、国土の3分の1を支配していた。アメリカへのコカインの密輸で数百万ドル規模を稼いでいるとも言われており、また身代金を目的にした誘拐にも多数関与した。

しかしながら、2002年に就任したアルバロ・ウリベ元大統領は力によるFARCの掃討を掲げ、アメリカの支援を受けてFARCの掃討を本格化。複数の幹部の死亡や戦闘員の多数離脱などによって組織は弱体化し、現在のFARC構成員は7000人まで減少したと考えられている。
 

 
コロンビア政府によるFARCへの譲歩か

200ページにわたる合意文書には、停戦実施、FARCの政治参加、人権侵害の容疑者や戦争犯罪者に対する裁判などについてが盛り込まれたが、これにはコロンビア政府によるFARCへの譲歩も伺える。
FARCは推定7000人の戦闘員を、ジャングルなどの野営地から国連によって設営されている武装解除キャンプへと移動させる。武装解除したゲリラ兵には月給200ドルが支給されると共に、今後政府の職業訓練事業に参加し、社会復帰への道を歩み始めることになる。

今後FARCは政党として活動することになり、助成金も受け取ることになる。また、2026年までの期間、FARCの設立する政党には10席の議席を確保することが合意文書には盛り込まれている

紛争中に行われた人権侵害や戦争犯罪を裁くための特別裁判所の設立も予定されており、大量殺戮や拷問、レイプといった凶悪罪には最大で20年の懲役が課される。一方で、比較的軽度な犯罪に関しては恩赦が与えられる事になっており、和平合意を促進させるためのFARC側への配慮が見られる。
 
 
 
内戦の最終解決に向けた大きな課題--国民は納得するのか?

今回の和平合意が政治的な合法性を持つか否かは、10月2日に予定されている国民投票の結果次第だ。コロンビアのサントス大統領はテレビ演説にて、「長い戦闘を終わらせる歴史的な合意を支持するかは、全てのコロンビア人の手にかかっている。」と国民に対して呼びかけ、和平合意に対して賛成票を投じるよう求めた。

国民投票における賛成票が有権者全体の13%以上を構成した上で、過半数の人々が賛成票を投じれば今回の和平合意は発効となる。しかしながら、現地の世論調査会社によると、今年6月時点では74%の人々が賛成票を投じるとみられている一方で、多くの人々が投票の棄権を行うとも考えられており、その割合が65%に到達する恐れも出ている。これでは国民投票の正当性が確保されるとは言えず、サントス政権にとっては大きな問題となるだろう。

この背景の一つとしては、和平合意の内容に対する国民の疑念や反感が挙げられる。近年では「麻薬を手掛けているテロ集団と化した」とまで批判を受けているFARCに対して、コロンビア政府が大きく譲歩している点などはその理由だろう。加えて、停滞するコロンビア経済とそれに伴う食糧価格の高騰、また高い犯罪率などに対して大した打開策を打ち出せていないサントス政権に対する国民からの不人気も、この一因を担っているかもしれない。今年2月の時点では、国民の64%がサントス政権を支持していなかった。

また、コロンビア元大統領2人が10月の国民投票で反対票を投じる意向を表しており、当然の事ながらFARCや今回の和平合意に否定的な見方を取るその他の一部の国民も、反対票を投じることが予想される。その上、野党は軍事的なFARCの壊滅こそが、内戦の唯一の解決策であると主張しており、コロンビア内戦の最終的な解決に向けて、楽観視することは出来ないだろう。

記事執筆者:原貫太
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(政治解説メディアPlatnews「コロンビア、左翼ゲリラと和平合意--半世紀に及ぶ内戦の行方は国民投票の結果次第」より転載)