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自動車と半導体のデジャヴ-TechNW2016キックオフセッション(2)

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銀座での小さなセッション「いまだからエレクトロニクス、変わるエレクトロニクス! テクノロジー × ビジネス - エレクトロニクスの新世界」開催後に開票を迎えた米大統領選の結果は、日本のみならず世界に動揺を引き起こしました。"Make America Great Again" ― アメリカを再び偉大に、という選挙スローガンのもと、多くの予測に反し、共和党ドナルド・トランプが勝利したからです。さらには韓国の朴大統領が任期満了前に辞任を表明しました。

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反グローバル化、自国第一主義、大衆の感情に訴える煽情的なポピュリズムを特徴とする11月9日の米国トランプ次期大統領の誕生は、今年6月24日イギリスのEU離脱とならんで世界に先行き不透明感をもたらしています。11月29日の韓国大統領の辞任表明は東アジアへの動揺に追い打ちをかけると同時に、日米間の連携に影を落としています。

トランプ次期大統領は選挙公約としてアメリカのTPP(環太平洋パートナーシップ協定)からの離脱を訴え、11月21日には離脱を明言しました。2017年1月20日のトランプ大統領就任が迫るなか、「アメリカ第一主義」による多国間貿易協定の崩壊が、参加国間の関税引き下げの流れを止め、経済の混乱をもたらすと憂慮する世界各国が緊張した状態です。

"Make America Great Again"、このスローガンは最初、1980年の大統領選で共和党ロナルド・レーガンが掲げたもの。以降、日本に対する自動車、半導体などへの輸入関税を引き上げる1980年代の日米貿易摩擦の時代につながりました。1981年には日本製の「自動車」が対米輸出の自主規制対象となり、1986年には「半導体」をめぐる日米半導体協定により日本市場が海外メーカーに開放されました。

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その結果、自動車と半導体は命運が分かれました。自動車は、アメリカそしてNAFTA(北米自由貿易協定)加盟国メキシコをはじめとする海外での工場建設、現地での従業員採用による現地化を伴って成長。日本の自動車メーカーの海外生産台数は1985年からの30年間で約20倍へと増加(日本自動車工業会調べ)。そしてトヨタは世界販売台数1015万台とトップの座を守り、トップ10社中4社を日系企業が占めています(出典: Response 2016年2月25日【池原照雄の単眼複眼】トヨタが4年連続首位、ホンダは7位に上昇...15年世界販売ランキング)。自動車産業は勝ち組として残りました。

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かたや半導体は、かつて産業のコメと呼ばれ世界市場の50%以上を席巻した状態から30年にわたる低迷期へ。WSTSの世界半導体市場統計(Historical Billing Report)で1986年と2015年を比較すると、日本のシェアは1986年の40%から2015年の9%に減退。

米IHS調べによると、2015年の世界半導体市場規模は3473億米ドル(前年比マイナス2.0%)と微減のなか、売上高トップ10社に日本企業として唯一入る東芝は13.7%と2ケタ減収、ランキングも下げています(参照:EE Times Japan 2016年4月5日 IHSが確定値を公表:2015年半導体メーカー売上高ランキング)。半導体産業はいわば負け組に甘んじてきました。

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このように、自動車は海外で現地化を進め、世界トップの競争力を維持しました。しかし半導体は、目の前のニーズに応えることに専念したことで、市場構造の変化を読み取れなかった、と日経ビジネス(2015年10月26日号)は指摘しています。数十年単位の超長期の開発や、事業の入れ替えによる会社の作り直しといった手間のかかる取り組みは、経営者が明確な意思を持ち、リスクを取らなければできない、という指摘は、誰もが納得するところでしょう。(引用:日経ビジネスONLINE 2016年1月29日「日米貿易摩擦で競争力を失った産業、増した産業 戦後70年の日本経済 経済摩擦と企業の競争力)田村 賢司)

さらにNews & Chips編集長 津田健二氏は、2016年4月15日Yahoo!個人記事「ニッポン半導体のシェアがついに8%に」で、「半導体産業は、世界では依然として伸びているのに日本だけが沈んでいる」「日本は得意な製造技術を捨て、得意でないファブライトやファブレスにシフトしてきたが、それは大きな失敗」と指摘しています。

しかし過去は過去。来年発足するトランプ政権のもと、アメリカのTPP脱退がNAFTA(北米自由貿易協定)脱退に波及すれば、メキシコで生産し米国に輸入されている自動車も大きな打撃を受けかねません。グローバル化が進み各国の経済が密接に絡み合う今、生産に必要な部品、製品などの供給網、サプライチェーンの再構築が起きると予想されます。

一方で秩序の再形成により、これまで停滞していた産業、企業が逆転劇を迎える可能性もあります。

これまでの勝ち組、負け組が、新しい経済情勢のなかでどう勝ち残るか。どこにイノベーションが起き、誰が大勝ちするか。自分がどこに立つかのサバイバル競争です。

本記事はコウタキ考の転載です。