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日本人はなぜサムライと愚か者が極端に分かれてしまうのか

2015年07月12日 20時44分 JST | 更新 2015年07月12日 20時44分 JST
YOSHIKAZU TSUNO via Getty Images
(FILES) This file photo taken on January 6, 2012 shows former Olympus president Michael Woodford speaking before the press in Tokyo. A single Japanese shareholder of scandal-hit Olympus has sued 14 board members who sacked whistle-blowing British former chief executive Michael Woodford, lawyers said on January 18, 2011. The shareholder, an anonymous man living in western Japan, filed the lawsuit on January 18, 2012, demanding the executives pay Olympus 1.34 billion yen (17.5 million USD) for costs resulting from Woodford's firing, one of his lawyers said. AFP PHOTO / Yoshikazu TSUNO / FILES (Photo credit should read YOSHIKAZU TSUNO/AFP/Getty Images)

最近、半導体、電機メーカーとそれに関連する私達への風当たりが強い。また、元の当事者、いわば業界の先輩にあたる方々が自信喪失で、「もう日本でやっても無駄ではないか、もう諦めたらどうか」と言われることも少なくない。

私は幸運にも企業・大学と立場は変わっても、フラッシュメモリ、SSD、半導体ストレージという、市場が成長し日本がいまだに強い分野に携わることができています。

正直言って、日本の電機業界を取り巻く自信喪失や沈滞ムードが理解できません。

個別のやり方が悪かったから負けただけで、日本のせいでも、ましてや日本人が駄目だから負けたわけではないのではないか。

この釈然としない「空気」の原因は何だろうかと、最近は電機メーカーが敗れていった様を描いた本を読んでいます。

 サムライと愚か者 暗闘オリンパス事件(山口義正)

 切り捨てSONY リストラ部屋は何を奪ったか(清武英利)

 会社が消えた日 三洋電機10万人のそれから(大西康之)

 グーグルで必要なことは、みんなソニーが教えてくれた(辻野晃一郎)

 パナソニック人事抗争史(岩瀬達哉)

それぞれとても読み応えがある力作で、とても考えさせられる内容ばかりでした。

ただ、負けた原因の多くが組織や経営の問題であるように描かれており、「なぜ日本では半導体や電機が負けるのか」釈然としませんでした。むしろ一度成功した企業が硬直化し、変化に対応できなくなっていったのではないか。

こうした企業の経営が悪化する原因は、外部環境の問題というよりも、人事の失敗や企業風土の劣化など。

個別の原因があるでしょうし、失敗をただ一つの理由で説明することは乱暴すぎるでしょう。

共通の問題はないのかと探そうとしながら本を読み進めるうちに、「サムライと愚か者」の中に「これだ」と思える部分がありました。

それは、この本の題名にもなっている言葉、不正を暴いた結果、解任されたオリンパスのウッドフォード社長が著者に語った言葉です。

「日本人はなぜサムライと愚か者がこうして極端に分かれてしまうのか?」

不正が明らかになる時というのは、内部で重要な仕事をしている人からの通報が多いのでしょう。自分には何のメリットもないのに、会社を立て直したいという思いから危険を顧みずに不正を追求する「サムライ」たち。

一方、遵法精神に欠け不正を働く経営者や、不正が露見することを揉み消そうとする関係者や社員という「愚か者」。

日本の企業で大きな不祥事が起こる場合は、特定の個人の罪というよりも、出資している金融機関、不正を見過ごす監査法人や監督官庁、そして大企業の不正はなかなか報道しようとしないメディアなど、多くの関係者の連帯責任の場合が多いでしょう。

つまり、右肩上がりで成長している時は連携によってうまく働いていたエコシステムが、問題を起こした時には、かえって問題の解決を妨げて先延ばしし、取り返しがつかないほど問題を大きくしてしまうこともある。

産官学の様々なプレーヤーが「連携して成功することと」と「癒着して悪化すること」は紙一重なのかもしれません。

日本の強みが場合によっては弱みとして露呈してしまうのではないか、と考えさせられました。

こうした問題は電機メーカーに特有というわけではないでしょう。

同じく清武英利さん書かれた「しんがり 山一證券最後の12人」には、無謀な融資を行い、山一證券を自主廃業に追い込んだ「愚か者」と、破綻後に幹部まで逃げ出す中、最後まで会社に踏みとどまり、真相究明と顧客への清算業務を続けた「サムライ」の社員たちが描かれています。

難しいのは、場合によっては、サムライが愚か者に変わったり、その逆の場合もあるでしょう。

人は弱いもので、立場が「愚か者」を作ってしまうのかもしれません。「自分は絶対に愚か者にならない」と言える人がどれだけいるでしょうか。

こうした失敗は何度も何度も繰り返されます。過去の事例を学び続ける中で、少しでも同じ過ちを繰り返さないよう、自戒し続けることくらいしかできないのかもしれません。

今でも同じような事例がたくさんあります。例えば総工費が当初の1300億円から2500億円にまで膨れ上がった国立競技場。オリンピックが決まる前、当事者意識もリアリティも希薄なまま、コストを精査せずに「アピールが必要だし、いってしまえ」と決めたのではないでしょうか。ありがち、と言ってしまうと無責任ですが、そんな雰囲気も多少は理解できます。

詳しい事情を知っているわけではありませんが、それでも「ヤバイ」と気付いた時、何度も立ち戻るチャンスがあったのではないか。その時に、「今更戻れない、強行突破だ」となってしまっているとしたら、傷口を広げるだけでしょう。

上記の本の中にも、立ち戻るには遅すぎることはないのに、それができずに会社を潰すことになってしまった「愚か者」が描かれています。

サムライと愚か者が元々いるわけではなく、人生では立場によって、サムライにも愚か者にもなってしまう可能性がある。愚か者に落ち込むトラップ(罠)にはまらないよう、自分を振り返り続ける、罠にはまりそうになった時にアドバイスしてくれる人を持つことが大切なのでしょうね。

(2015年7月12日「竹内研究室の日記」より転載)