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アップルが法外なライセンス料を要求する根拠になった特許とは

2014年03月20日 17時13分 JST | 更新 2014年05月19日 18時12分 JST

アップルがサムスンに対してスマホ/タブレット1台あたり約40ドル(4,100円)という法外とも言えるライセンス料を要求して話題になっています(参照記事(GIGAZINE)、その元記事(FOSS Patents)(英語))。サムスンのスマホ販売台数を考えると、このライセンス料では年間1兆円を超えるライセンス料をアップルに支払う計算になってしまいます。

まず状況整理しておくと、アップル対サムスンの米国での裁判は主に北カリフォルニア連邦地裁で行なわれています(これ以外にITCに対する禁輸の訴え等があります)。北カリフォルニア連邦地裁での裁判は2件あり、そのうちの最初の裁判では、3月6日にサムスンに対して約9.3億ドル(960億円)という巨額な賠償金の支払が命じられています(一昨年末の最初の判決の後に賠償額の再算定が命じられていたのですが、結局あまり変わらない額になりました)。サムスンは控訴しています。

今回の話題は3月31日に公判が始まる2回目の裁判の方に関する話です。

1回目の裁判では特許とはいってもデザイン特許(日本でいう意匠権)が多額の損害賠償のほとんどの根拠となっていました。2回目の方ではデザイン特許ではなく、いわゆる日本で言う特許と同義の特許権5件が争われています。実はその一部については本ブログで既に解説しています(「これがアップル対サムスン裁判で問題になった特許です(その2(前半))」。なお、この過去記事では、前半として3件説明して、残りは後半でということになっていましたが、結局後半は書いてませんでしたね、どうもすみません。ということで本記事で、まとめてこの5件について簡単に解説します(当時は6件でしたが判事の命令により1件取り下げになっています)。

1.US5,946,647 (System and method for performing an action on a structure in computer-generated data)「コンピューター生成されたデータの構造上でアクションを実行すするためのシステムと方法」

これは、過去エントリーをご参照下さい。通称「データ・タッピング」特許、ドキュメント中の電話番号ぽいところをタップすると電話をかけられる等、特定の文字列をリンク化するアイデアです。

2.US6,847,959("Universal interface for retrieval of information in a computer system")「コンピュータ・システムで情報検索するための共通インターフェース」

これも過去エントリーをご参照下さい。フェデレーテッド・サーチ関係のアイデアです。

3.US8,046,721("Unlocking a device by performing gestures on an unlock image")「アンロック・イメージ上でのジェスチャーによるデバイスのアンロック」

スライド操作で画面ロック状態を解除するアイデアです。なお、過去エントリーでは日本での同等特許は拒絶査定確定と書きましたが、その後調べると、拒絶査定不服審判に成功し、特許5457679号として登録されていました。どうもすみません。

4.US7,761,414("Asynchronous data synchronization amongst devices")「デバイス間の非同期データ同期」

カレンダー等のデータの非同期型の同期処理と同時に編集などの同期型処理を同時に行なうというアイデアです。出願日が2007年とわりと新しいので新規性は大丈夫なのかという気もします。その辺はちょっと審査経過を見てみないとわかりません。

5.US8,074,172("Method, system, and graphical user interface for providing word recommendations")「単語の推奨を行なう方法、システム、及びGUI」

これは別の過去エントリーで既に解説しています。iOSデバイスのオートコンプリートの(昔の)実装ほぼそのまんまの特許です。

アップルは、これらのソフトウェア特許5件だけを根拠に1台あたり4,100円のライセンス料を要求しているわけです。

特許は後付けで見ると当たり前に見えることが多く、その価値を過小評価しがちであること、法廷戦術としてまずは大きめの金額を言っておくという点を考慮しても、この条件は、業界の相場、そして、アップルの過去の要求を大きく逸脱したものです。

FOSS Patentsの中の人である知財コンサルタントFlorian Mueller氏(どちらかというとアンチGoogle派でApple側を支持することが多い)も、このようなライセンス料率が一般化したならば、かなり保守的な見積もりを行なったとしても(特許権の固まりである)スマホ1台あたりの特許ライセンス料がおよそ2,000ドルになってしまうだろうとアップルを批判しています。アップルは気が触れたとしか思えないとまで言っています。

アップルとサムスンは両社CEOによる2月頭の話し合いにより解決しそうな雰囲気も一時はあったのですが、結局、ガチンコ勝負はまだ続きそうな気配です。

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(2014年3月14日「栗原潔のIT弁理士日記」より転載)

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