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対話の成功の鍵は “相手への好奇心”

11月21日は「世界ハロー・デー」

2017年11月20日 15時30分 JST | 更新 2017年11月20日 15時46分 JST

11月21日は「世界ハロー・デー」。この日に10人に挨拶することによって、世界の指導者たちに「紛争よりも対話を」とのメッセージを伝えようという日だそうです。My Eyes Tokyoはこの日を記念し、"対話"をテーマとしたトークセッションのもようをお送りいたします。

これまで300人以上、様々な背景を持つ人たちと"対話"を行ってきたMy Eyes Tokyo。人の話に耳を傾け、それらを記事としてまとめて世界に発信するという作業を10年以上繰り返してきました。それは一見すると非常に地味であるため、世間の注目はYouTuberやインスタグラマーに集中してしまう傾向があるかもしれません。

しかし私たちは、組織に守られずに自分の名前だけで何かを立ち上げ、 あらゆる困難にぶつかりながらも続けてきた人たちの話をお聞きすることで、自分たちの人生が豊かになっていくことを感じてきました。そのようなインタビュアーになるという選択肢も、ぜひ皆さんに加えていただけたらという思いで、同じくインタビュアーとして対話を重ねてこられた方をゲストに迎え、インタビューをテーマにしたトークセッション&ワークショップを行いました。

ゲスト:松尾美里さん

インタビュアー兼ライター。本の要約サイト「flier」を運営する株式会社フライヤーに勤務し、経営者や著者、専門家へのインタビューを行う一方、様々なメディアで執筆。これまで350以上の人にインタビュー。「"聞く姿勢"や"相手に興味を持って問いかける"ことを意識するだけで何かが変わる」ことを伝えたいと思い、 当イベントを共同企画。

*松尾さんについての詳細はこちらのインタビューをご覧ください。

*インタビュー@妙善寺(港区六本木)
*撮影:鈴木なみ

インタビューが役立つ場面

松尾:皆さん、こんばんは。松尾美里と申します。面白い生き方をしている人たちの話を聴きたい、そのお話を何か悩みを抱えている人、生き方を模索している人に伝えたい。そんな思いで私は2013年からライフワークとして、70名の方にインタビューをし、ブログを書くということをしていました。その後、インタビューを仕事にする機会を得て、経営者や著者、スタートアップ、専門家へのインタビューを行っています。世間での知名度に全く関係なく、たくさんの人たちが興味深い話を聞かせてくださいました。それが私の今の生きる力になっていると思います。
インタビュアーとして、常日頃考えているのは、「心豊かになれる"対話"っていったい何だろう?」ということ。現時点での私の考えは「人の思いや魅力を引き出していく相互作用」というイメージです。

徳橋(My Eyes Tokyo代表):そして松尾さんは、インタビューや対話が役立つ分野として、以下の分野を挙げられていますね。

徳橋:・・・ということは、今日いらしてくださった皆さんの背景は大体網羅されていると思いますが、例えば営業だといかがでしょうか?

(参加者の一人:「自分自身は"営業マンっぽくない"という印象を持たれることが多く、特にご年配の方々には"頼りない"と見られることがあった。しかし実際は、昔ながらの"売る営業"をする先輩に付いて営業に回った時は、成績は悪く、逆にお客様とコミュニケーションを図りながら少しずつ距離を縮めていく先輩に付いて営業に回った時は、成績が上がりトップセールスになった 」)

徳橋:ありがとうございます。最近では「"話す営業"よりも"聞く営業"の方が良い」と言われていますが、それを裏付けるエピソードだと思います。

心の中のモヤモヤを言語化することで「ありたい姿」が見える

徳橋:もうひとつ、松尾さんがされている"インタビューによるキャリアの棚卸"についてはいかがでしょうか?これについてのご説明もお願いします。

松尾:キャリアの節目にある人、自分のキャリアを見つめ直したい人を対象に、インタビューによってキャリアの棚卸を行う「キャリアインタビュー」をしています。この活動によって、相手に対する好奇心を持つことが、いかに相手との関係を構築する上で大事かということを感じました。就職活動や転職活動をされる方だと「自分は、本当は何をしたいのか?」を考えることがあると思います。そのとき、第三者からいろいろな質問をもらうことで、「私は本当は、もっと違う価値観を大事にしていたんだ」などと気づくことがあると思います。

徳橋:相手の心のなかのモヤモヤを、質問を重ねることで整理する感じでしょうか?

松尾:そうですね。投げかけられた質問に答える際は、質問者にも分かるように、その行動の理由や背景などを説明しますよね。それが自身の頭と心の整理になります。また、質問者から「それはこういうことですか?」「こういう見方もあるでしょうか?」といった質問が加わることで、「そうか、私がやりたいことは、これなんだ」と、内省を深めることができる。それが、私が先に申し上げた"相互作用"だと思います。

徳橋:「考えが整理された」というご感想は、私もインタビュー相手からよく言われます。私たちインタビュアーは、相手に対して「なぜ〜をしたんですか?」「なぜ〜という道を選ばれたんですか?」など、「なぜ?」を納得が行くまで繰り返し聞いていきます。もちろん質問が過ぎて、プライバシーの部分に触れそうになったら一旦引きますが、許される範囲内で質問を重ねていくと、ご自身でも気付かなかったことに気づくことがあります。
他には、インタビュアーが仮説を立てるという手法ですね。例えば「Aという行動があって、その数年後にBという行動をされていますね。もしかしてAがあったからBにつながったのでしょうか?」と聞くと「全く考えたことがなかったですが、言われてみると、そうかもしれませんね」となることがよくあります。

松尾:何かに対する答えや、自分でも気付かなかった自分の魅力というのは、すでにご自身の中にあるもの。それらになんとなく気づいていたとしても、ご自身だけで言語化することが難しいときがあります。それを、インタビュアーからの問いにお答えいただくなかで、一緒に見つけていくという感じです。

相手と一つの方向に向かうためなら 嫌われても構わない

徳橋:インタビューの際に心がけていることはありますか?

松尾:「今日お会いする人は、どんな人だろう」「どんな表情をしているだろう」と想像をふくらませることです。インタビュー前までは緊張するのですが、本番になるとその緊張は自然となくなることがほとんどです。インタビューは、男女や年齢を問わず"相手とのデート"に近いと考えています。インタビュイーはお忙しい中、貴重な時間をとってくださっている。その時間を少しでも楽しんでいただきたい、有意義なものと思っていただきたい、と思うんです。
そしてもうひとつ心がけているのは、インタビュー中の私自身の役割です。相手の人が私に話してくださったご自身の考えを、多くの人に伝えていくことが私の存在意義だと思っています。その人の言葉をより多くの人に伝えることで幸せになる人や、その言葉によって救われる人がいるのではないかと思っているんですよね。

徳橋:すみません、私はそこまで高尚な思いでインタビューをしたことがないんです・・・

松尾:(笑)インタビュー中に意識しようと思っているのは、「この人の言葉を伝えたい!」という熱い思いをもって相手の心に近づこうとする自分と、「私たちが今話していることは、いったいこの場において何を生み出しているんだろう?」と、関係性自体を俯瞰して客観的に見ているもう一人の両方をもつことです。なかなか難しいのですが・・・
あとは相手との関係の築き方ですね。もちろん良い関係を築きたいという思いは大事です。ただ、相手の言葉を引き出そうと思うあまり「この人に好かれたい! 」という考えを強くもちすぎるよりは、その気持ちを手放した方が、相手とフラットな関係でいられると思います。

徳橋:本当にその通りだと思います。それは私の場合、著名な若き女性起業家とのインタビューを経験して学びました。もちろん異性として見ていたわけではないですが(笑)その人の発想や行動力に敬意を表するあまり、ものすごく気負ってインタビューに臨み、見事に空回りしました。それは今でもトラウマです。

松尾:もちろん人間だから「相手に否定されたくない」と思うこともあります。私は特にそういう感情が強いタイプです。ですが例えば、相手が曖昧ことしかおっしゃらない場合、自分から「それはAということでしょうか?」などとぶつけたりします。すると相手は「いや、Aではなくて・・・」とおっしゃるときもあります。そのような場合、以前の私は「相手の考えをうまく汲み取れなかったな・・・」と気落ちしてしまいがちでした。
ですが、メディアのインタビューで求められるのは、良い記事を作るために相手と私が一つの方向に向かっていくこと。相手にその協力者になって、同じ方向を向いていただくためなら、私は嫌われても構わない、と思うことにしています。

徳橋:つまり、自分はインタビュー相手と読者の間に立っている人間であり、良いアウトプットを生むために存在しているのだから、別に自分なんてどうだって良い、ということではないですか?

松尾:そうですね。そう思えば私も本音で相手にぶつかれるし、相手も本音を話しやすくなる気がします。

徳橋:もしかしたら、相手に好かれようとしている気持ちを、その相手に見抜かれているのかもしれませんね。その気持ちを外した瞬間、相手が近づいてくると感じたのでしょうか?

松尾:そうですね。以前よりお話が聞きやすくなりました。

徳橋:好かれようと思う気持ちを捨てるのは、意識的にそうするのか、それとも自然と捨てられるようになるのか、どちらでしょうか?

松尾:ケースバイケースですね。日常での課題解決の場において、相手と話が噛み合っていないと思うことがあるなら、「好かれたい」と思う気持ちをいったん脇に置いて、相手と同じゴールをめざしていくことを優先したほうがいい、と思っています。

アゼルバイジャンに渡った日本人 – インタビュアーの原点

松尾:これまで私は350人以上の人たちにインタビューさせていただきましたが、なぜインタビューを続けているのかを考えるとき、思い出す人がいます。その人は、私がライフワークでインタビューしていたときに一度だけお会いした方です。当時、彼は紛争解決を目指してアゼルバイジャンに留学する直前でした。

徳橋:すごい人ですね。普通、アゼルバイジャンに留学しようなんて発想は出てこないですよね。

松尾:アゼルバイジャンなら、紛争解決に向けての対話の技術を学べるというのがその理由だそうです。彼は現地で初めての日本人留学生だったとのこと。「いつ頃から紛争解決に興味を持つようになったのですか?」と聞いたとき、彼は「子供の頃、図書館で戦争について書かれた本にものすごく惹かれて、よく読んでいた」とおっしゃいました。

なぜ惹かれたんだろう?

そう思いさらに聞いてみると、彼はお父様から暴力を振るわれていたそうなのです。でも学校は楽しかったから、なんとかやってこれた。そして図書館でなんとなく手に取った戦争の本を開いたら、彼が受けているものよりも凄まじい暴力が巻き起こっていました。そこで彼は、その被害に遭っている人たちを救う側になりたいと思うようになったそうです。

徳橋:その人はすごいですね・・・

松尾:「この話を、心が追い詰められている人たちに届ければ、何かが変わるだろう」と思いました。これが私のインタビュアーとしての原点ですね。それに彼は対話のプロを目指していましたから・・・

徳橋:それって、ハンパない対話のプロでしょう?一歩間違えれば本当に大変なことになるという・・・

松尾:そうですね。国と国とを背負うわけですから、それを思えば私がインタビュー相手から好かれるとか嫌われるなどというのは小さな問題だと思えるようになったんです。

徳橋:紛争解決を目指す若者に深い話をお聞きできるのは、「あなたにインタビューしますよ」とおっしゃったからではないかと思います。

松尾:なるほど、ただ「おしゃべりしましょう」ではなく、ということですね。

徳橋:そうですね。そして恐らく、そのようにしてインタビューに至った場合、最初の10分間でかなり深いところまで話を聞くことができると思います。そして記事になったとき、その人のご友人やお知り合いの人たちでさえも「こんなこと、知らなかった」とおっしゃるケースがよくあります。「インタビュアーで良かったな」と感じる瞬間ですね。
普通のおしゃべりは"遠浅の海"で、インタビューは"急に深くなる海"というというのが、私の印象です。だから私は、本音を言えばインタビューすることをいろんな人にお勧めしたいんですよね。

上を向いて歩こう

松尾:(途中に行った対話ワークショップを受けて)今日いらっしゃっている皆さんは、とても相づちが上手ですよね。

徳橋:そうですね。

松尾:皆さん、コミュニケーションに対して意欲的な人同士だから話しやすいということがあったと思うのですが、反対に「この人、コミュニケーションが取りにくいな・・・」と思うような相手でも、"アイコンタクト""相づち""うなずき"というテクニックを取り入れるだけで、距離が縮まるかもしれません。

徳橋:とにかく「あなたの話を聞いていますよ!」という態度を示すということですね。

松尾:そうですね。「人は悲しいから泣くんじゃない。泣いているから悲しくなるんだ」 という言葉を聞いたことがあります。実際にそうなんですよね。ずっと下を向いて歩いていると、知らず知らずマイナスな感情が湧き出てきます。「上を向いて歩こう』という歌の歌詞は本当にその通りだと思うし、笑うような気持ちではない時に、「笑おう」とするのは難しくても、"口角を上げる"ことなら意識次第で可能になると思います。

徳橋:それは演技とも違いますよね。相手のために口角を上げるように見えて、実は自分のためにそうするんですよね。

松尾:その方が、自分にとっても楽に相手と接することができると思います。"アイコンタクト""相づち""うなずき""口角を上げる"という技術から始まったとしても、「最初はなんとなく合わないかもと思ったけれど、意外にこの人は可愛いところがあるな」と思えば、技術ではなく本心から好感を持って接することができるようになると思います。

"会話"と"対話"

松尾:劇作家・演出家の平田オリザさんの著書で『わかりあえないことから』というものがあります。コミュニケーションや人と向き合うことにおいて模範にしている本ですが、その中に「"会話"と"対話"の違い」というのがあります。
平田さんによれば、"会話"は親しい人同士のおしゃべり。一方で"対話"は、少し距離がある人同士、もしくは親しいけど異なる意見を持つ人同士が、意見を擦り合わせて歩み寄るためのコミュニケーションです。

徳橋:先ほどお話いただいた、紛争解決を目指す人のコミュニケーションは"対話"でしたよね。

松尾:そうですね。意見が異なる者同士が歩み寄るための"対話"については、「へー!」とか「うーん」といった間投詞が増えれば増えるほど、良い対話につながる確率が高いと平田さんはおっしゃっています。

徳橋:それは、お互いが"発見し合う"からでしょうか?

松尾:なるほど、それかもしれないですね。気づきや発見があるからこそ、「へー!」となる。

徳橋:あと"会話"と"対話"の違いについて思ったのは、会話は二者が向かい合って言葉を交わしているのに対し、対話は二者が目標物に向き合い、それに向かって共に歩くということです。

松尾:そうかもしれませんね。

徳橋:私が普段のコミュニケーションでも、またインタビューでも心がけているのは、"目の前にいる人(人たち)に楽しい時間を過ごしていただきたい"という気持ちです。もちろんコミュニケーションの途中は紆余曲折があり「何でそんなことを聞くの?」と言われることもあるかもしれませんが・・・

松尾:でも"対話"は、1回失言したからそれで終わり、ではないと思います。もし「深いところまで聞きすぎたかな?」と思っても「いえ、差し支えのない範囲でお教えいただければ嬉しいです」などの言葉でいくらでも修復可能になりますから。

徳橋:そうですね。そしてこのイベントが私たち、そして皆さんにとって「"対話"の可能性が開かれる場」になれば嬉しいです。

最後に松尾さんにお聞きします。"対話"の成功の鍵は、いったい何でしょうか?

松尾:やはり"相手への好奇心を持つこと"だと思います。それは"相手そのものへの好奇心"と"相手の専門分野や活動内容"への好奇心の2種類があると思いますが、両方大事だと思いますし、どちらを対話の出発点にしても良いと思います。例えば相手の仕事内容から入り、「この人の、この仕事に対する情熱はどこから生まれてくるのだろうか?」という疑問が生まれるうちに、相手の人間そのものに興味を持つようになるのではないかと思います。

"好奇心"が私にとっての原点ですね。

松尾さん関連リンク

flier:www.flierinc.com/writer/19
教育xキャリアインタビュー:edu-serendipity.seesaa.net