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「ふるさと納税」による「税源流出30億円」に直面して

2017年02月21日 17時44分 JST | 更新 2017年02月21日 18時10分 JST
TkKurikawa via Getty Images
Tokyo Japan - May 22, 2015: Japanese kindergarden kids and teachers walk on street in Asakusa Tokyo Japan.

「ふるさと納税」による世田谷区の減収額が増大しています。昨年の影響額の大きさは、政令指定都市である横浜市・名古屋市・大阪市に続いて、世田谷区が全国の自治体で4位となりました。

2016年度(平成28年度)の影響を見ると、前年に区内で2万4345人がふるさと納税を利用して、43億6388万円の寄附をした結果、27億5553万円の控除額でした。控除額のうち、東京都の都税分が11億211万円で、世田谷区の区税分が16億5342万円です。つまり、区の歳入から16億円5342万円のマイナスが生じたことになります。

過熱する「返礼品競争」やテレビCM等で、ふるさと納税ブームは高まりつつあり、さらに影響額はふくらむと予想せざるをえません。2016年度(平成29年度)の新年度予算には、ふるさと納税による税源流出の影響額は30億円にまで達する見込みを立てています。他にも、ふるさと納税によって税収減に陥る自治体はありますが、国の地方交付税で75%補てんされます。ところが、東京23区は不交付団体なので、補てんはまったくなされずに税収の「純減」となります。

人気の『ふるさと納税』、自治体間格差最大70億円 : 読売新聞2017年2月9日

霜降り肉や地酒などの「返礼品」がもらえることで人気に火がついた寄付制度「ふるさと納税」により、自治体間で年間最大70億円もの「税収格差」が生まれたことが、地方自治ジャーナリスト・葉上太郎氏の調査で明らかになった。国指定の過疎自治体22市町村が「赤字」だったことも判明し、地方活性化という制度の趣旨との整合性が問われかねない実態が浮き彫りになっている。(中略)

「ふるさと納税」は、納税者が住民税の一定割合を、応援したい自治体に寄付できる制度。寄付先は生まれ育った「ふるさと」である必要はなく、複数の自治体に寄付をしてもいい。自己負担2000円を除いた寄付の全額が、翌年度の住民税などから控除されて手元に戻る。

 15年度の「納税」総額は1653億円で、08年度の制度開始時の20倍以上に達している。16年度は2600億円にのぼるとも予想されている。

2008年度(平成20年度)に創設されたふるさと納税制度は、生まれ育ったふるさとを応援したいという思いを届けることや、東日本大震災や熊本地震等の被災地に、他自治体の住民から寄付を橋渡しをする役割もはたしてきました。ふるさと納税制度の本来の趣旨と意義はあるものと考えています。

ただし、年間30億円の税財源の流出にまで膨らんだ規模は、すでに自治体財政を直撃し、限度を超えていると言わざるをえません。16億5千万なら園庭のある認可保育園5つ、30億円なら学校を1校改築するのに相当する金額となります。世田谷区は、この1年間で人口が約1万人増加し、未就学児童も増加し続けて「保育の充実・拡大」「子育て支援」に多額の投資をする一方で、高齢化社会を受けて特別養護老人ホームや高齢者施設、グループホーム等の需要にも応えています。 都市部特有の財政需要があり、このまま貴重な税財源が流出し続ければ、持続可能な公共サービスに支障をきたすことになります。例えば、新年度の保育園整備費は約75億円なので、30億円は40%にあたります。

ふるさと納税の影響を深刻にしているのは、この数年間、勢いが止まらないからです。ふるさと納税制度は、2015年度(平成27年度)に住民税所得割額の10%から20%へと、特例控除額の上限の引き上げが行なわれ、ワンストップ特例制度の導入によって、一挙にその規模が増大しました。世田谷区の場合、以下の一覧のように、2015年度(平成27年度)からふるさと納税を利用した寄附額と影響額がはねあがっています。

こうして、この3年間は寄附額・影響額ともに急上昇していることに危機感があります。このペースで影響額が膨張していけばどうでしょうか。あまり想像したくはありませんが、さらに何年かすると、税源流出の影響額が途方もない額に膨張して、財政運営が立ち往生することも想定の上で排除できません。

「ふるさと納税」による税収減 東京23区の影響額は保育所100カ所分!(「週刊朝日」2016年11月21日)

ふるさと納税をする人が多い都市部の自治体は、税収が減り、悲鳴をあげ始めている。東京23区でつくる特別区長会は、ふるさと納税で2016年度に失われる税収を129億円と試算する。100人規模の区立保育所109カ所分の年間運営費にあたるといい、影響額は前年比5.4倍に膨らんでいる。

「寄付は建前で、(都市と地方の)税源偏在是正の目的が明白」「返礼品競争が過熱している」などと、区長会は制度のあり方の再考を求めている。ふるさと納税を使う人が増えれば、こうした声は都市部のほかの自治体へと、さらに広がりかねない。

過剰な返礼品による見返りを受けた住民のみが実質税負担減の恩恵を受け、その他の住民は失われた税収入分の行政サービスの低下を甘受する不公平が生じています」と指摘してきました。 このところ、特別区長会でも毎回、ふるさと納税の制度是正について話題にし議論しています。「ふるさと納税制度」を本来の趣旨に戻し、行き過ぎた返礼品競争や控除額上限を見直して、是正を急ぐように国への制度改正を求めていきたいと考えています。

ふるさと納税 過熱にクギ 総務相、高額返礼の改善検討 寄付と地域貢献、歪むバランス日本経済新聞

急拡大するふるさと納税を巡り、総務省が行きすぎた地方自治体の対応に神経をとがらせている。高額の返礼品や地域と無関係な品を贈るケースが目に付くため、今春に自治体に是正を促す方針だ。16日は2016年分所得税の確定申告受け付けがスタート。ふるさと納税本来の趣旨を踏まえ、適切な納税意識と地域活性化への貢献のバランスが問われている。

このところ、世田谷区内で人の集まる会合があれば、「ふるさと納税の影響額」が深刻になっていることを区民に伝えています。「自治体財政から見ると、ふるさと納税によって大きな税収減となっている」「保育園5つから、学校1校分の建設費に相当する」「控除されて税収減となった穴は、ふるさと納税を利用しない方も含めた納税者全体で埋めていく」 と話すと、「そんなに深刻なことになっているとは知らなかった」という声が相次ぎます。

これは、私自身にも反省があります。「ふるさと納税と区財政への影響」について、区民にわかりやすく、目につきやすい情報発信が足らなかったと感じています。2月17日には、区に「ふるさと納税等対策本部」を設置して、現状ならびに次年度の深刻な見通しを区民に周知すると共に、目に見える形で、情報発信を強化していこうと考えています。

世田谷区の「ふるさと納税」への対策は、1年ほど前からスタートしています。「返礼品競争」からは一線を画し、寄附文化を醸成することを柱にして、区民がふるさと納税を利用して分野別の基金に寄附できるようにしました。昨年12月から『ふるさとチョイス』にも登録して、こうした寄附型の基金に24時間アクセスして、クレジット決済ができるようにしました。ここで選べる基金は7つ、「福祉」「子ども」「みどり」「文化」等です。

『ふるさとチョイス 世田谷区』

世田谷区では、支えあいの輪が広がる地域社会をめざして、寄附文化醸成に向けた取組みを進めています。
皆さんの温かい気持ちで地域の笑顔が増え、またそこから新たな善意が生まれていく。そのような社会をめざしています。
世田谷区への寄附は福祉・子ども・みどりなど7つの基金から選んでいただけます。
皆さんの善意で地域に幸せの輪を広げることができるよう、ご支援をお願いします。

こうした基金の中で、今年度大きな反響を呼んでいるのが、昨年4月から始めた「児童養護施設の退所者に向けた奨学金基金」への寄附で、今年1月末に2200万円を超えました。準備した基金の中でも、具体性があり寄附の使途について明確であったことから、区民だけではなく全国から寄附が寄せられました。基金発足時に区の一般会計から準備した基金財源の5000万円を減らさずに、将来に向けた持続可能な給付型奨学金のための寄附をかたちづくりつつあります。

さらにこれから、7つの基金による寄附の使い道を積極的に公開し、寄附をいただいた方に実感していただけるように取り組みます。さらに、世田谷の魅力発信につなげる取組みとして、世田谷美術館等の文化施設の商品や、福祉分野から障害者施設の自主生産品(参考→『はっぴいハンドメイドBOOK』、区内の名品「世田谷みやげ」http://www.setagaya-icl.or.jp/miyage 等の活用を検討しています。(カタログに記載されている品物の中で、どのような記念品を選定するかは現在検討中です。すべてが対象ではありません)

ふるさと納税が投げかけているのは、人口集中の進む「大都市部と地方」の問題です。世田谷区は、人口減と高齢化、税収減に悩んでいる地方自治体と緊密に連携しようと、「自治体間連携」を「世田谷区総合戦略」(2016年3月)で3本の柱のひとつに位置づけています。

東京一極集中、それは視点を変えれば、東京の一人勝ちといわれながら、これから高齢化が一番進むのも東京、出生率が一番低いのも東京といった、実は深刻な課題を多く抱えている東京への課題提起であるとみることができます。

また、私たち、世田谷区での暮らしが、全国の市町村での農業・漁業・林業などに支えられて成立してきたことを考えると、地方の人口が減少し第一次産業をはじめ、地方が衰退していくことは私たちの生活基盤も沈んでいくということを意味します。

このように認識した上で、活発に自治体間交流を発展させていくことが、都市部の人口の多い自治体として必要なことだと考えています。また、全国の交流自治体に呼びかけて、自然エネルギーの活用や、観光・雇用等を話し合う「首長会談」も開催し、回を重ねる等、大都市部と地方の直面する課題に向き合ってきました。この姿勢は、今後も堅持していきたいと考えています。ふるさと納税の税収減の影響は深刻ですが、制度の見直しにあたって、大都市部と各自治体が共存共栄できる道を探りたいと考えています。

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