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野党の「共通政策」で政治は変わる

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時事通信社
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桜が満開の時期を迎えていますが、もう1週間もすると4月12日告示の衆議院補欠選挙(京都3区・北海道5区)が始まります。7月の参議院選挙の前哨戦として注目されるだけでなく、このところ取り沙汰されているように安倍首相が「衆参ダブル選挙」に踏み切るかどうかの判断材料とも言われているだけあって、補欠選挙の結果は今後の政局を占うものとなりそうです。

ここでは、必ず行なわれる今年7月の参議院選挙を念頭に、野党共闘について掘り下げて考えてみたいと思います。参議院選挙の勝敗を決めると言われる「1人区」の約半分で、統一候補を擁立する野党共闘の体制が進んでいます。

野党一本化 15選挙区 32の1人区 協議中「10」

夏の参院選に向け、全国で32の「1人区」(改選数1)のうち15選挙区で民進党と共産党を中心にした野党の候補者一本化が確実になったことが分かった。両党による協議が進んでいる選挙区も10あり、「統一候補」はさらに増える可能性が高い。参院選では1人区の勝敗が選挙戦全体の結果を左右する傾向が強く、2013年の前回参院選で「自民党1強」を選んだ民意が変わるかどうかが注目される。(毎日新聞2016年4月3日)

「野党が、互いに政策が違うのに統一候補を立てるのは野合だ」との声もあるようですが、それなら長い間、日本でも連立政権が続いていることをどう考えるのでしょうか。20年前に私が国会議員になった1996年は、橋本龍太郎政権で自民・社民・さきがけの3党連立政権でした。自社さ政権は4年を超えて政権運営が続いたので、けっして短い期間ではありません。

政党間で政策の違いはあっても、共通項は必ずあります。有権者にとって関心が高く敏感なテーマで「最大公約数」を掲げてこそ、野党共闘の「大義」が生まれます。

それでも、一般的には野党共闘に「共通政策」を期待しても無駄ではないか、与党が圧倒的多数の国会では、とくに議席の3分の2を与党が抑えている衆議院の解散がなければ参議院で与野党比がかわったところで大きな変化はない、「野党の共通政策が実現する可能性はゼロ」と考えている人が多いのではないでしょうか。

結論から言えば、野党が「共通政策」で結束した時には、政府・与党の国政運営に多くの影響を与えるのです。その前兆が、「保育園落ちた」の波紋が広がった保育園待機児童問題の展開や、「給付型奨学金」創設への動きです。参議院選挙直前というこの時期に、与党としてはなるべく対立軸を鮮明にさせない「抱きつき」(クリンチ)で争点化をさせまいという意図も見えます。

実は、こうした時期こそ野党が「共通政策」をまとめ発信する好機なのです。与党の「抱きつき」(クリンチ)は、むしろ歓迎すべき態度です。2008年リーマンショックが世界を襲い、日本経済も失速しました。衆議院解散を準備していた麻生太郎内閣は、解散を先のばしして経済対策を優先するとしました。不況時の雇用調整と称して、製造業の現場で働いていた「派遣労働者」が次々と雇止めになり、いわゆる「派遣切り」が横行した結果、工場の寮等に住んでいた労働者は次々と住居を失い「難民化」しました。

この時、当時の私が野党議員として提案したのは、全戸売却が決められていた「雇用促進住宅」の活用でした。「雇用促進住宅」は1960年代から炭鉱離職者の受け皿として都市部に建設されました。国策産業であった石炭から石油へのエネルギー転換が行なわれ大量の炭鉱労働者が溢れたことに対して、当時の国会で与野党間での厳しい議論がたたかわされ、「炭鉱離職者のための雇用・住宅政策がまとめられ、再就職の支援が始まったのでした。

そうして半世紀前の雇用政策から生まれた雇用促進住宅は、リーマンショック当時、「歴史的使命を終えた」として逐次解体され売却される運命となっていました。当時の「派遣切り」という名の大量失業は、「派遣労働の製造業への全面解禁」を決めた国の政策に責任があります。そこで私は、雇用・住宅政策から「1兆円もの国費(雇用保険財源)を投じてつくられた雇用促進住宅を、今こそネットカフェや個室ビデオ店に寝起きしている住居なき失業者への支援として活用すべきではないか」と提案したのです。当時の厚生労働省と舛添要一厚生労働大臣は、当初こそ難色を示していたものの、最終的にはこの提案を受入れました。

私の経験から見ても、与党が「政策課題の焦点化」を回避したいとしている現在は、野党が官僚機構とも政策調整能力を発揮して、リアルな改革案を「共通政策」としてまとめて提案する好機だと思います。野党の政策を与党が丸飲みするような「抱きつき」(クリンチ)でも困ることはありません。「共通政策」を決定する時に政策展開の工程表と共通軌道があれば、選挙前に早くも次の駅に進んだだけの話です。選挙の前後の適切なタイミングで、さらに第2次改革案を追加発表すればいいだけの話です。

国民の最大関心事は、福祉であり社会保障です。「子育て支援」「若者支援」「年金」「介護」「医療」と誰もが当事者である政策分野で「共通政策」をまとめる努力を急ぐべきだと思います。しかも、これまでの「永田町政治」の重要政策の枠から除外されていた「子育て支援」「若者支援」政策で一致できるかどうかが鍵となります。

アメリカ大統領選挙の予備選で健闘するバーニー・サンダース候補を支えているのは、圧倒的に若者たちだと伝えられています。多額の奨学金の返済の重圧に苦しみ、極限まで拡大した格差社会の是正と社会的公平をめざすサンダース候補が誰もが予想しなかった大きな支持を集めていることには、大きなヒントがあると思います。

黒田緩和今日3年 資産最高 格差は拡大 国民の間で預貯金や株式など金融資産を持つ人と、持たない人の格差が広がっている。日銀が黒田東彦(はるひこ)総裁のもとで大規模な金融緩和政策にかじを切ってから、4日で丸3年。日銀が先月末まとめた「資金循環統計」によると、2015年末の家庭全体の金融資産は1741兆円と金融緩和前の12年から174兆円拡大し過去最高を更新。だが、一方で日銀アンケートでは「金融資産を持たない」と答えた人が単身世帯で47.6%と過去最高に達した。(東京新聞2016年4月4日)

東京新聞によると、安倍政権が発足した2012年に家庭が持つ金融資産は1567兆円だったのが、2015年には1741兆円とハネあがったといいます。一方、金融資産を持たない世帯の割合は、2012年に単身世帯で33.8%だったのが2015年には47.6%と激増しているのです。2人以上世帯になると26%から30.9%と増加していて、これでは消費が伸びないのも当然です。

今や、高校中退や大学中退の理由は、「経済的事情」がほとんどです。安倍政権がふれはじめている「給付型奨学金」については、野党共通政策をつくるために、奨学金の返済に苦しんでいる若者の声を聞き、高校や大学の教員も加えて公開の場で政策形成をすべきではないでしょうか。

子育て支援は、「待機児童解消」のための「保育の拡充」が求められています。その一方で、世田谷区でも来春に向けて20園もの認可保育園の開園準備をしていますが、この問題の当事者は国や自治体のみならず企業でもあるはずです。乳幼児の子育て世代に対する配慮義務や差別禁止等や「育児休業の延長保障」等、「長時間労働」が当たり前という企業風土に「働き方改革」を徹底させる雇用環境が必要です。

老後の生活の糧となるはずの年金も危機に瀕しています。国内外の株式投資に積極的に乗り出したアクティブ運用によって、従来よりも株価低落の影響を受けやすい状況になっています。→『「株価急落で年金削減」の悪夢を回避するために』(「太陽のまちから」2016年2月16日)

ここは、年金資金の株式市場でのハイリスク運用に歯止めをかけるべきです。昨年、短期間のうちに7.9兆円もの運用損を出しました。それなのに政府は、GPIF(年金積立金管理運用独立行政法人)の株式の運用実績の発表を、従来は7月上旬にしていたにもかかわらず、今回は参議院選挙後の7月29日と遅らせるとしています。(毎日新聞2016年4月2日

年金の運用実績は国政選挙前に堂々と開示され、どのように制度を改めるべきなのかを論争すべき大きな課題です。しかも、国民の支払った年金保険料が株式市場に投入されて、将来給付に影響しかねない年金の"消失リスク"を評価するためにも、避けては通ることのできないテーマです。

年金資金は政府・与党の支配下にあってはならない「国民共有の財産」です。野党は、「運用実績」の予定通りか前倒しの公表を求めるべきだと思います。そして同時に、政権与党の影響力を排除し、政権交代の影響を受けない年金資金の管理運用体制の提案と、GPIF(独立行政法人年金資金運用基金)を国民の監視下に置く制度設計を示すことが問われています。

野党各党の最大公約数である「共通政策」を効果的にまた現実的に打ち出すことで、「格差是正」や「社会保障改革」への道を示すことができれば、野党統一候補の意義も深まります。参議院選挙のみで「政権交代」はできませんが、「国政の優先課題を入れ替える」ことは可能なのです。

参議院選挙を前に実現可能なリアルな「共通政策」の柱を建てておけば、仮に衆参ダブル選挙になった場合に、「政策選択」の色彩がより鮮明になります。予定通り参議院選挙だけ実施される場合には、こうした知恵を練ることで有権者の関心も高まります。選挙を控えて示すべき政策は夢のようなものである必要はなく、現状を的確に改善する実現可能なものであることが鍵だと考えています。