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結婚、就職、転居......なぜリクルートの"おみくじビジネス"は儲かり続けるのか?

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PLANETSチャンネルにて好評毎月連載中! 昨年大ヒットした『ITビジネスの原理』著者・尾原和啓による連載 『プラットフォーム運営の思想』 の過去の掲載回を、月イチでハフィントン・ポストに定期配信していきます。


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前回はリクルートの最新の取り組みとして「Airレジ」戦略を解説しましたが、今回は「そもそもリクルートはなぜ強いのか?」について、「バーティカル市場」「純粋想起」「配電盤モデル」の3つのキーワードを手がかりに考えます。
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尾原和啓『プラットフォーム運営の思想』前回までの連載はこちらから。
 
 
 2014年の10月、DeNAが50億円で2つのメディアを買収しました。リフォームとインテリアの情報をまとめた「iemo」とファッションの「mery」です。一方、GREEはホテルの予約やベビーシッターのサービスに進出しました。こうしたDeNAやGREEなどのゲーム事業者たちが、市場の成熟化にともなって新規事業への進出を次々にはじめました。ここで彼らが目をつけているのは、「バーティカル市場」と呼ばれる領域です。不動産や育児などの一定の業種に特化した市場をそう呼ぶのです。
 
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 このバーティカル市場では、内容が専門的であるゆえにユーザーがその商品を選ぶ際の意思決定が難しくなりがちです。しかし、このバーティカル市場で、まさにその意思決定を支援するプラットフォームを整備することで、昔から強い存在感を発揮してきた企業があります。

 それが、まさに就職や結婚、旅行や中古車購入などで次々に成功を収めてきた、リクルートです。
 前回、この連載はリクルートの「Airレジ」の鮮やかな戦略について語りました。しかし、彼らのこうしたビジネスモデルの構築は一朝一夕に生まれたものではありません。インターネットが生まれる遥か前、就活中の学生の家に『就職情報』という分厚い冊子が何冊も送られてきたような時代から、リクルートが積み重ねてきたものです。

 そこで今回からは、リクルートが数十年をかけて積み重ねてきたバーティカル市場の「必勝パターン」がどんなものかを解説します。なぜ彼らは、これほど強いのか。なぜ彼らは、これほど儲かっているのか。それを分析的に考えることは、あまり語られていないバーティカル市場での戦略を学べると同時に、日本の社会をリクルートがいかに変革してきたかを知ることでもあります。
 
 
■リクルートは儲かる市場を狙っている
 
 リクルートのビジネスは、しばしば「おみくじビジネス」と呼ばれます。

 先週、お正月におみくじを引いた際に、「結婚:良い人を待て」や「就職:吉報あり」などの内容が書かれているのを見た人は多いでしょう。リクルートは、まさにこの「おみくじ」に書かれるような領域のビジネスに強みを持つ企業なのです。就職の「リクナビ」、結婚の「ゼクシィ」、不動産の「SUUMO」......これらは、どれも人生の重い決断を伴う大事なイベントです。

 では、なぜリクルートはこの領域を狙うのでしょうか。大きく、二つの理由があります。
 一つは、こうした意思決定には大きなコストが掛かるため、単価が大きくなりがちだということです。現在は、この領域で積み重ねたノウハウを元に、旅行や外食などの「単価がそこそこ」程度の業種にも進出しているので少々見えづらくなっていますが、まずはこの「大きく儲かりやすい」場所を狙っているというシンプルな話が、リクルートが「儲かる」最大の理由です。

 しかし、「大きく儲かりやすい」ことが「儲かる」ことには、必ずしも繋がりません。ところが、ここでもこの市場は強みを発揮します。実は、結婚や就職、自動車や不動産の購入は、お客さんが常に「素人ばかり」の状態なのです。これが、2番目の理由です。
 もちろん、世の中には結婚や就職を何回も繰り返す人もいますが、決して多くはありません。そこに情報ギャップが生じるのであり、リクルートが意思決定の支援に参入する隙間が生じるのです。
 しかも、新卒採用や中途採用などは企業の人事にとっても、別にメインの仕事ではなかったりします。なぜなら、企業における人事の役割は、まずは既にいる社員の育成・評価に関わる部分だからです。特に中小企業における中途採用など、ある程度の規模になるまでは行われませんし、一度採用したあとに3~4年は次の採用を行わないこともざらなのです。つまりユーザーだけでなく企業も「しろうと」なのです。そうなれば、リクルートに任せてしまった方が得策とも言えるでしょう。
 
 
■"儲かり続ける"理由は「純粋想起」――バンドエイド戦略と泥臭い営業
 
 さて、ここまでの話を聞いて、「でも、お客が素人ばかりというのは弱点でもあるのでは?」と思った方もいるのではないでしょうか――グッドクエスチョンです。美味しい外食店であれば、お客さんは何度もリピートしてくれますが、結婚や不動産の購入はそうは行きません。次々に顧客は入れ替わっていくの、顧客を獲得しつづける宿命を背負います。

 そう、重要なのはいかに「儲かり続ける」仕組みを構築するかなのです。この問題について、リクルートは圧倒的な集客ノウハウを構築することで対応しています。中でも最も優れているのは、私が『ITビジネスの原理』で説明した「純粋想起」を取りに行ったことです。しかも、彼らはそれをインターネット以前の紙媒体の時代から、ずっと重視してきました。
 
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※ 冒頭の試し読みが公開されています→NHK出版 『ITビジネスの原理』
 
 リクルートは常に新しい分野に挑戦してきた企業です。女性のための転職情報誌「とらばーゆ」、初めて結婚式場の情報を掲載した雑誌「ゼクシィ」......こうした分野で、常にリクルートは、そのことを思い浮かべたときに真っ先に思い出される「純粋想起」のポジションを狙ってきました。
 この際にリクルートが採用してきたのが、マーケティングで「バンドエイド戦略」と言われる手法です。これは新しい概念をつくったときに、商品名をその名詞や動詞そのものにしてしまう戦略です。これは、単純なようでいて大変に強力な戦略であり、「純粋想起」の究極形ですらあります。
 その一番良い例が、この言葉のもとになった名詞の「バンドエイド」です。これは絆創膏の商品の一つに過ぎないのですが、あまりにバンドエイドが有名すぎるために、薬局で絆創膏が欲しいときについ「バンドエイドください」と言ってしまうので、店員はバンドエイドを売ってしまうのです。リクルートでは、「とらばーゆ」が良い例でしょう。女性が派遣するとらばーゆに至っては「とらばーゆする」という動詞にまでなってしまいました。

「ゼクシィ」も同様です。これについては一つ面白い話があります。実は一時期まで、検索エンジンで「ゼクシィ」という単語は、「結婚」というワードよりも多く検索されていました。なぜだと思いますか。
 それは、「ゼクシィ」という言葉が、「結婚」という事柄にまつわるあらゆる内容を助けくれる存在を表現する単語になっていたからです。そして、「ゼクシィ」以前にそんな単語は存在しませんでした。「結婚式場」や「プロポーズ」や「両親への挨拶」などの言葉はありましたが、結婚にまつわる全ての過程を総称するような上手い単語はなかったのです。とすれば、「結婚」よりも「ゼクシィ」で検索をかける方が、遥かに具体的な結婚にまつわる情報が入手できてしまうのは当然です。同様のことは、不動産の購入プロセスにおける「SUUMO」などにも言えます。
 ちなみに、元・とらばーゆ編集長の松永真里さんとiモードを作った際にも、この手法を僕たちは採用しました。僕たちは、「リクルートウェイで行こう」と話し合い、iモードに――例えば"モバイルインターネット"などの――ジャンル名をつけることを徹底的に避けたのです。こうすれば、「KDDIのEZwebを使いたいな」と思った人が店頭に行っても、「iモードみたいなやつを使いたくて......」と言わざるを得ません。すると、KDDIの携帯電話を買いに行ったのに、なぜかドコモの話をすることになってしまうのです。

 こういった「ジャンルを表す言葉」を作ることへの拘りは、純粋想起をとることに留まりません。リクルートがこういう手法を発展させた原点は、創業者の江副浩正が当時の就職市場に強い憤りを感じていたことにあるのでしょう。例えば、若い人には想像がつかないと思いますが、かつては給与などの条件が応募者に開示されないことは当然でした。「委細面談」とだけ書いておいて、その場に来た人間を見て企業が判断するだけでした。これでは、選ばれる立場の応募者がプレッシャーを感じてしまい、充分な交渉ができません。
 江副はそんな時代に、就職情報を全て開示した方が企業にとって得であり、実際に成長へと繋がるのだという考え方を普及させたのです。だから、リクルートは常に「そんなことをやっていいのか?」という挑戦を続けてきました。転職は悪いこと、女性の派遣労働は嫁入り前の腰掛け......そういう世の中の古い因習を覆して、肯定的に捉え直すために新しい言葉を作り、テレビCMなどを使って大々的に広めていくことで、古い言葉に宿る"言霊"の呪縛を解いてきたのです。

 ユーザの獲得についての工夫は純粋想起だけではありません。ユーザ獲得の接点づくりもリクルートらしいやり方があります。最初にいったようにリクルートの事業は「おみくじビジネス」、人がいつ転職・結婚を思いつくかわかりません。それ故に企業は高いお金をリクルートに払います。リクルートは対象ユーザーが「いつ」「どこで」思いつくかという場所にまるで絨毯爆撃のように雑誌を置いていきます。例えば、転職情報誌であれば、サラリーマンが最も不安になる時間である、帰りの電車の中などはとても有効です。なので、駅のキオスクに置くのは大変に重要な戦略になります。
 ここで面白かったのが、リクルートの営業が取ったやり方です。キオスクからすれば分厚くて冊数を置けないリクルートの雑誌は、正直なところ置きたくないのですが、ここでリクルートの営業マンたちは「では、スタンドを置いて、私たちが1日に2~3回、雑誌を持ってきます」と提案したのです。ユーザーがその感情を起こした場面ですぐに手に取らせるために、リクルートはこれほど徹底的に泥臭く、マンパワーを駆使して、シェアを高めてきました。企業側に強いと言われる営業力を ユーザ獲得側にも徹底するのがリクルート流なのです。
 
 
■「配電盤モデル」をゼクシィで学ぶ
 
 さて、リクルートがいかに「儲け続ける」仕組みを構築しているかが見えてきたと思います。今度は、この仕組みをより精緻に見て行きましょう。そこから見えるのは、「さらに儲かり続ける」仕組みとでも言えばいいでしょうか。僕は、そのビジネスモデルを「配電盤モデル」と呼んでいます。
 
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 昔の家には配電盤といわれる、戸外からの電力を送り込むコードと家の中に電力を送り込むコードが集約される場所が存在していました。それによく似ているので、そう呼んでいるのですが、少々古い言い方かもしれません。他人に説明する際には「ゲートウェイビジネス」という言い方を使うこともあります。ただ、ここでは理論的に詳述したいので、複数のループが集約されるイメージが湧く、この「配電盤モデル」という言い方で説明していこうと思います。


 僕は『ITビジネスの原理』で、「収穫逓増の法則」という言葉を使いました。それは、ユーザーが集まる場所には魅力的な企業も集まり、魅力的な企業が集まる場所にはますます多くのユーザーが集まってくるという形のループで、プラットフォームビジネスが発展していくという法則です。
「配電盤モデル」とは、この単体でも強力なループに「幅のループ」と「質のループ」という二つのループが組み合わさり、中心にあるユーザーのいる場所の魅力がますます高まっていくというモデルです。よって、一度このループが回りだすと、もう止まらなくなってしまいます。この3つのループを同時に回しているのが、リクルートの凄いところなのです。

 ここからは「ゼクシィ」を参考に、このループについて解説します。
 まずは、「幅のループ」です。リクルートは、まずは最も見つけにくくて単価がわかりづらい結婚式場をカタログ化することで、収穫逓増のループの起点を作りました。しかし、結婚でわからないことはそれだけではありません。結婚指輪、二次会、新生活......色んなことがあります。しかし、彼らは結婚式場の情報で既にユーザーを獲得していますから、別領域へとスライドして、企業に話を持ちかけるのは容易です。そうして選択肢の幅を広げると、今度はユーザーにとって、多様な選択肢がパッケージされた、とても魅力的な雑誌になっていくのです。
 さらに同時に「質のループ」も回転していきます。ゼクシィ以前は、玉姫殿のように一から十までを業者が手がけるような結婚式場ばかりでした。しかし、実際には家族と友人だけでフレンドリーに挙式をあげたいなどの潜在的ニーズはずっとありました。ユーザーが集まってくれば、そうした細かなニーズの情報を拾い上げることが可能になります。そうしてゼクシィが作ったのが「レストランウェディング」です。さらに、ゼクシィが発見した新しい結婚式場へのニーズを踏まえて、テイクアンドギヴ・ニーズのような新しい形の結婚式場を提案する業者も登場します。そうしたプレイヤーを応援しながら、さらにリクルートはユーザのニーズを深掘り、海外での結婚などの新しいトレンドを生み出していきました。
 しかも、こうした斬新なビジネスは、企業からすれば分からないことばかりです。企業にとっては、高い金額を払ってでもリクルートにコンサルティングをしてもらうニーズが高まるのです。また、ゼクシィの場合に面白かったのは、ユーザーの側も少し微妙な心理を抱えていたことです。みんな、新しい形の結婚はしてみたいけれども、かと言ってあまりに外れたことで失敗したくはないのです。そこに、リクルートが得意とする、新しい提案でトレンドセッティングをしていくノウハウが活かせたのです。こうして結婚式場とユーザーの両方から、強く頼られる構造を生み出したのです。

 こうして「配電盤モデル」を強力に回したゼクシィは、リクルートのビジネスの中でも、最も成功した一つになりました。それは一つには、「おみくじビジネス」の中でも特に結婚というものが、重要な意思決定が次々に連続するイベントだったのが大きいでしょう。同時に先に挙げたトレンド消費の要素もありました。まさに、リクルートの強みが結集したビジネスだったのだと思います。
 さらに、結婚は人間の欲望を喚起するものであると同時に、次々にやってくる意思決定で絶えず不安になるイベントでもあります。人間の欲望を喚起するときに重要なのは、まさに「楽しそう」などのポジティブな感情を喚起する、エモーショナルなイメージ戦略によるトレンドセッティングです。一方で意思決定の不安は、ユーザーに強く関与して多様な選択肢を提示して納得のいく説明をするようなやり方が最も有効なのです。この二つは、ともにリクルートが得意としてきたものでした。
 これについては次回、リクルートが得意とする事業領域をより細かく分析していく中で用いる、ウィンスラーのマーケティングマトリックスの説明で、もう一度話したいと思います。
 
 
■「幸せの迷いの森」に見る日本的インターネット
 
 ちなみに、ゼクシィの編集方針には「幸せの迷いの森」という、とても素晴らしい言葉があります。特に女性は、結婚までの半年などの時間で、「あれもいい、これもいい」と迷い続けることになる。その時間を幸せに迷ってもらおう。だから、情報とは、Amazonのようにパッと出すだけのものではないのだ――そんなリクルートの考え方を表した言葉です。
 その過程で、最初はレストランで簡素な結婚式をしたいと考えていた人が、気がついたら何百万円もする結婚式を開いていたりするかもしれません。それで当人たちが幸せならば、家族も友人も感動するし、もちろん結婚式場にとっても良いことでしょう。そんなビジネスを可能にしたのが、ゼクシィなのです。この手法は、じゃらんなどにも引き継がれており、国内旅行において小さな「幸せの迷いの森」を提供しています。

 そして、僕は今も、この考え方の魅力に取り憑かれており、インターネットビジネスに活かしたいと考えています。もちろん、この前提には、幅のループと質のループをしっかりと回して、配電盤モデルをしっかりと機能させる必要があります。そして、インターネットという「低関与」に適したメディアにおいて、どう欲望を換気していくかという課題もあるでしょう。
 アメリカのような効率化のプラットフォームではない、余剰と余白を楽しむプラットフォームこそが新しく魅力的な市場を作り得た――このリクルートの見事なビジネスモデルを目の当たりしたことこそが、僕がいまも「過程を楽しむインターネット」にこだわり続ける理由なのです。
 
(次回に続く)
 
▼執筆者プロフィール
尾原和啓(おばら・かずひろ)
1970年生。楽天株式会社執行役員、楽天株式会社チェックアウト事業長。京都大学大学院工学研究科修了。マッキンゼー・アンド・カンパニーにてキャリアをスタートし、NTTドコモのiモード事業立ち上げ支援、リクルート、ケイ・ラボラトリー(現:KLab)、コーポレートディレクション、サイバード、電子金券開発、リクルート(2回目)、オプト、Googleなどの事業企画、投資、新規事業に従事。現職は11職目になる。また、ボランティアで「TED」カンファレンスの日本オーディションにも携わる。米国西海岸カウンターカルチャー事情にも詳しい。2014年1月に初の著書『ITビジネスの原理』(NHK出版)を出版。 



 
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本連載の最新回(なぜリクルートに追いつけない?――優れた営業戦略と編集者が"加速"するプラットフォーム(2月18日配信))はPLANETSチャンネルにて掲載中! このページでは冒頭部分を少しだけ公開します。
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『プラットフォーム運営の思想』第7回は、前々回(Airレジ)、前回(ゼクシィと「配電盤モデル」の解説)に続いて、リクルートのビジネスモデルを「ウィンスラーのマーケティングマトリックス」を用いて分析しつつ、「Web2.0以降」の変化についても解説していきます。
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 ここまで「Airレジ」の分析に始まり、リクルートという企業のビジネスモデルを解説してきました。
 今回は、その内容の仕上げに当たる回です。ここからは、リクルートは一体どういう事業領域をどう攻めており、そこから私たちが何を学べるかを考えます。リクルート的なビジネスモデルがこのインターネット時代でどういう位置づけなのかも見えてくるはずです。

 ただし、その前にまずは前回の話を補足する形で、リクルートが単に「配電盤モデル」の仕組みを作るだけでなく、営業マンや編集の質を高める体制に注力して、いかに強力にループを形成しているかを解説したいと思います。
 
・結婚、就職、転居......なぜリクルートの"おみくじビジネス"は儲かり続けるのか?(『プラットフォーム運営の思想』第6回)※上記記事
 
 
■配電盤モデルにおける営業の価値
 
 さて、「配電盤モデル」を構築する際には、競合が追いつけない速度で素早くサプライヤーとユーザーの双方で高シェアを取るのが重要です。このことは自ら市場を作り上げていく場合でも、後発で参入していく場合でも変わりません。そこで重要になるのが、単にプラットフォームの仕組みを作るだけでなく、さらにマンパワーでループを加速していくという発想です。
 
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▲「配電盤モデル」
 
 その際、リクルートでは数を一気に押さえるローラー営業の作戦に加えて、常に質の高い営業マンを採用するのを大事にしてきました。例えば、幹部の人間たちは役員会議より面接の方を重視していました。一時期などは、六大学の有名サークルのリーダー全てにインターンの誘いを出していたこともあります。一にも二にも、まずは人間なのです。

 このリクルートのこだわりは、彼らの商品が「採用活動」や「結婚」などの顧客の将来に大きく関わる意思決定を伴うことに理由があります。例えば、大企業であればともかく、中小企業にとっての採用活動は、会社の未来を左右する一大事です。社長自身が直にそうした意思決定を行うことも多く、たかだか一営業マンがそれにアドバイスを行う行為は、もはや企業の将来について語る経営コンサルタントにも近い役割となります。これは相当に優秀な営業マンでなければ厳しいことです。そして、そういった企業の根幹に関わる判断に直面することで営業マンも成長して、はばたいていきます。

 こうした質の高い営業マンを集める戦略に加えて、リクルートはさらに事業の展開を加速するために3つの工夫をしています。

 まず、配電盤モデルにおける「質」のループを加速させる施策です。
 ここで重要なのが、いわゆる「顔ぶれ営業」などと言われる手法です。リアルでのスーパーや家電量販店などの店舗を思い浮かべれば分かると思いますが、どんなに品揃えが充実していても、顧客にとってわかりやすく魅力的な「目玉商品」がなければ、なかなかお店が魅力的には映らないのです。そこで、そうした商品を確保するために、ユーザーにとって魅力的なクライアントを別途リストアップして、集中的に営業をかけていきます。ここで重要なのは、「目玉商品」として、例えば駅の中吊り広告で大きく扱ってくれたり、バナーに大きく記載してもらうことは、クライアントにとってもありがたいことです。言わばこちら側の「目玉商品」として扱いたい要望が、そのまま先方にとっての付加価値に繋がるのです。

 一方で、もちろんユーザーにとっては、単に質が良いだけでなくて、量が多いことも重要です。そこで、配電盤モデルにおける「量」のループの向上も重要になります。
 ここで問題になるのが、顧客の幅もが広がると、必ずしも顧客単価の高いユーザーばかりではなくなるということです。また、ハイスペックな営業マンの数にも限りがあります。結果的に初期のような時間をかけたコンサルティングが難しくなってしまうのです。
 そこで、リクルートは「プチコンサル営業」とでも言うべき手法を行います。これは言わば、「コンサル価値のパッケージ化」とでも言うべき手法です。例えば、じゃらんであれば、前回お話ししたように、ユーザーの要望を汲みとって「個室鍵付き温泉」などの商品を作りました。そして、マスメディアを用いてムーブメントを起こした上で、一つ一つの温泉宿に商品を提案していったのです。こうすれば、さほど一人ひとりのコンサルタントにお金をかけずとも、事業の拡大が可能になります。

 以上がプラットフォームの質と量を向上させるための工夫ですが、リクルートの面白いところは、商品そのものの魅力を高めるために、編集のパワーも利用してきたところです。特に「特集ページ」の活かし方は、大変に重要です。

 
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