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人をしつこくいじる人は、まともではない:パソコンの前でひとりごと

大学のサークル内で、私は「いじられキャラ」だった。

2018年01月19日 17時34分 JST | 更新 2018年01月19日 17時34分 JST

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大学のサークル内で、私は「いじられキャラ」だった。興が乗るとつい早口になり、語尾が伸びてしまう。そんな喋り方を先輩に真似され、皆に笑われた。「もう!やめてくださいよう!」と怒りつつ、内心うれしかった。先輩にいじってもらえると場の中心人物になれた気がした。

社会人になると同期の仲間と親しくなった。研修中は早い時間に解放されるので、店を決めて集まった。一人の男の子が、やはり私の喋り方をいじり出した。「ちょっとぉ!ひどい!」。私はふくれたが、彼にいじられると心が浮き立った。盛り上げ上手の彼は、同期のほぼ全員を平等にいじって上手に笑いを取った。

職場の先輩が私をいじり出した。私の喋り方のみならず、化粧や服装についても笑いながら指摘してきた。「はりきっちゃって」「がんばっちゃって」ということを、独特のニュアンスで、私がイケてる社会人になろうと必死、ちょっとイタイ、という風合いに言った。入社前にバイト代をはたいてブランドもののビジネスバッグを買ったのだが、そのブランドネタでもさんざんいじられた。最初は明るく言い返していたが、何度もいじられるうち、そのバッグで出勤するのが嫌になり、ノンブランドのバッグに替えた。

やがて私は先輩のいじりに愛想笑いすら返せなくなった。先輩は「すぐ顔に出る」「冗談なのに真に受けちゃって」「大人げない」と私を評した。

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私をいじったのは全員男性だったから、これは男女の差ではない。相手が楽しくいじられているか、実は頭に来ているか、本当は傷ついているか。人の心を慮れるかどうかの、想像力の差だと思う。

人を上手にいじれる人は、複数人を等分にいじったり、場に馴染めていない人を呼び込むためにいじったり、あるいは自分より立場が上の人をいじったりと、誰もがプラスになるようにうまくやる。決してしつこくはしない。一方で、嫌がっている人をいじり続けるのは、いじりに見せかけた攻撃で、はっきり言っていじめだと思う。

実はいじられて悩んでいる人は多いようだ。検索サイトに「いじられキャラ」と入れてみたら、同時検索ワードに、「つらい」「疲れる」「職場」「嫌だ」が出てきた。自分がいじられキャラだという自覚がある人が、辛い気持ちを隠しながら、共感や解決法を求めて検索しているのではないか。特に職場の場合、上下関係もあるし、長い付き合いになるから、相手の機嫌を損ねたくはない。だから、泣くことも怒ることもできず、不機嫌になることさえ自制して、誰にも見えないところでこんな検索をしている。その我慢につけ込んでしつこくいじってくる人は、どんな立場であれ、まともではない。

あの頃私は「すぐ顔に出る」「大人げない」と言われた自分が恥ずかしかった。場を白けさせたのが自分のせいだと感じた。でも、本当は、場を白けさせたのは下手ないじりをした先輩だった。そういう人に対しては、大人げない態度を取って防衛するしかなかった。

今あなたが職場でいじられていて、それが嫌なら、不機嫌になっていいと思います。

あなたがよく人をいじるのなら、自分にそれだけの技量があるのか考えてみて下さい。いじりほど、想像力と思いやりのいる高度な"コミュ力"を、本当にお持ちですか?

fin

朝比奈あすか |あさひな・あすか| 小説家

1976年東京都生まれ。慶應義塾大学文学部卒業、メディアコミュニケーション研修所修了。2000年に大伯母の戦争体験を記録したノンフィクション『光さす故郷へ』を発表。2006年『憂鬱なハスビーン』で第49回群像新人文学賞受賞。

著書に『不自由な絆』(光文社)、『やわらかな棘』(幻冬舎)、『あの子が欲しい』(講談社)、『天使はここに』(朝日新聞出版)、『自画像』(双葉社)、『人間タワー』(文藝春秋)など多数。『ワーキングピュア白書』では、PART3の鼎談「第一線で活躍するプロから ワーキングピュアに贈る言葉」で自身の経験を語っている。

※こちらの記事は日本労働組合総連合会が企画・編集する「月刊連合2017年12月号」に掲載された記事をWeb用に編集したものです。「月刊連合」についてはこちらをご覧ください。