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婚外子違憲判決で「日本の伝統」は崩れる

2013年09月05日 22時25分 JST | 更新 2013年11月05日 19時12分 JST

結婚していない男女間に生まれた婚外子(非嫡出子)の遺産相続分を、法律上の夫婦の子供(嫡出子)の半分としている民法の規定が、憲法違反という判断が最高裁で下されましたが、これについて少し。

1 法理論

この話題については以前にも触れたことがありますが(非嫡出子に関する個々の事案と日本の伝統)、私は基本的に最高裁の判断に賛成です。

これについて反対の立場を主張する方が根拠とするものに、こうしたことが認められれば、「日本の伝統的な婚姻制度」が崩壊するということを主張される方がいます。

法理論としては、民法が役所への届け出婚を定めている以上、同じ民法で背反するような規定があるのはおかしい(届け出をさせるのが民法の大原則だ)という理屈はあるかと思います。

しかし、あくまで私がざっと見た限りですが、今回の改正に反対の立場をとられている方々はこうした法理論から反対しているようには見えません。

2 「日本の伝統」

そうした方々が良く主張するものとして、「日本の伝統」とか、「伝統的な婚姻制度」というものが存在します。

こうした方々は、どうも役所に届け出を出す一夫一婦制度を「古き良き伝統」とでも思っているようですが、近代民法が制定される以前にこういた制度はあるはずもありません。

江戸時代では、試し婚とでもいう制度もあり、しばらく一緒に生活してみて、嫁ぎ先の家になじむかどうかを試すということも行われていたそうです。

それに民法は明治になって、フランスの民法典などを参考に、新しく作られた制度であるため、役所への届け出を散々しぶるものが多かったことなどを柳田国男は指摘しております(『明治大正史 世相篇』)。

なお、こうした伝統の影響はその後も続いたようで、もともと民法では想定していなかった「内縁」制度を、あまりに届け出を出さないものが多いが故に、認めざるを得なかったというのは有名な話です。

こうしたことが影響を及ぼしているのかどうか、わかりませんが、(古き良き時代のはずの)明治時代は離婚率が高かったという統計結果も見たことがあります。

3 一夫一婦制の否定?

結果、いろいろな「婚姻」の形を認めるべではないかという話になるわけですが、こうしたことを書くと、では一夫一婦制を否定しているのかという批判を受けることがあります。

話としてはそれほど単純ではないと考えます。以前、「矜持」という言葉を使う人がまず自分がそれを示すべきという批判をしたことがありますが(駆け込み退職に関して片山氏が語る「矜持」とは何か)、一夫一婦制を擁護する人は同様に浮気をしたことがないのかという話があるかと思います。 

「浮気」はしても、単なる遊びで、家庭を壊すつもりはないから別の話だと思われる方もいるかもしれませんが、それにより心底苦しんでいる配偶者もいることを考えると(他人の子を妊娠した嫁を持ち苦悩する夫に対する回答)、私はそうは思いません。

逆に、乱婚の様な形態に賛成する方々が、自分たちは自分たちだけで、好きなようにやっているのだからそれを批判すべきではないということを主張される方もいますが、外の人も属する「社会」という枠組みで見たときに、どこまでそうした「自由」が認められるかという問題も発生します。

4 最後に

いわゆる憲法でいうところの「公共の福祉」で個々人は基本的に自由に行動する権利を有しているわけですが、何でも好き勝手にできるわけではないという話です。

また、最後は好き嫌い(許せる、許せない)の問題となると、法律論以外に、マナーや道徳と呼ばれる分野に近い話にもなってくるので(甲子園のスパイ疑惑と高野連の対応2)、そうなると何が「正しい」と言えるのかという話にもなりかねず、いろいろ厄介だと思っています。

(※2013年9月6日の「政治学に関係するものらしきもの」より転載しました)