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ウォシュレット(※1)は教えてくれる 日本人ってすごいんです。

2015年06月12日 17時07分 JST | 更新 2016年06月11日 18時12分 JST
吉柳さおり

外国人、びっくり! 日本の快適「トイレカルチャー」

外国人が、日本に来てびっくりしたものーー。それは、1位「音姫(※2)(トイレ用擬音装置)」、4位「ウォシュレット(※1)(温水洗浄便座)」※。私たちの国の「トイレカルチャー」は自分たちが思う以上に独特で、その快適さは、日本人の「おもてなし」の心と技術が結びついたもの。それが多くの外国人観光客の関心を集めるようです。

でも考えてみれば、一体いつ頃から「日本のトイレ=快適」の図式が出来上がったのでしょう。昔の記憶を辿ると、特に駅のトイレなど決して心地の良い場所とは言えず、その空間で歯磨きしたり、優雅に化粧直し......なんて考えられませんでしたよね。

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それが今や、ホテルや百貨店はもちろん、高速道路のSAや駅構内まで、快適なトイレの存在感は増すばかり。とりわけウォシュレット、温水洗浄便座もあらゆる施設のトイレで目にするようになりました。それも考えてみれば、いつの間に?

ということで、今回は日本のトイレカルチャー、なかでも「ウォシュレット」に迫ってみました。日本を代表するトイレメーカーTOTO株式会社にお話を伺います。

海外発、日本で大進化を遂げた「ウォシュレット」

「実は温水洗浄便座って、もともとアメリカから輸入したものなんですよ」。

TOTO株式会社・広報の桑原由典さんが、開口一番に一言。てっきり日本の技術とばかり思っていた私は、まずびっくりです。1964年に輸入・販売をスタートした、その名も「ウォッシュエアシート」は現地では医療用として流通していたもので、機能も温水洗浄と乾燥のみのシンプルなものだったそう。

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「ただ、やはり輸入品なのでうまく水が当たらない、水温が安定しないなどのクレームがありました。そこで、TOTOとしての自社開発に踏み切ったのです。それが、1978年11月のこと。そこから1年半のスピード開発を経て、1980年6月に初代ウォシュレットが誕生しました」

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たった1年半の開発期間、当時の開発チームの苦労は相当のものだったそう。課題が山積みの中、彼らが特にこだわったのは快適な洗浄感と使いやすさ。社員達、約200人に協力してもらい、実際の「おしり」、肛門の位置や快適に感じる水温のデータなどを徹底的に調査したのだとか。

「そうして、温水は38度、便座は36度、乾燥ようの温風は50度、そしてノズルから吐水するシャワーの角度は43度が一番効果的だという結果が出ました。この標準数値は、30年を経た今もほぼそのまま受け継がれているのです」

「おしりを洗う」新たな価値を地道にアピール

ウォシュレットの機能は、私たち自身がよく知る通り、その後も目覚ましい進化を遂げてきたわけですが、並行して進められてきたのが、営業・広報活動のまさに積み重ね。

「そもそも一度身についたトイレのスタイルというものは、なかなか大きく変わるものでもなく、また非常に個人的な事柄なので、伝えることは難しい。だから、とにかく体験してもらう、『おしりで分かってもらう』ことを目指しました」

なるほど、どれほどいい商品ができたとしても、「おしりを洗う」というこれまでになかった全く新しい生活様式を即座に取り入れてもらうのは難しいかもしれません。そこでTOTOがとった戦略は大々的に放映したテレビCMと地道な草の根活動の両輪の展開でした。

「まず、マスにアピールする、いわば空中戦は『おしりだって洗ってほしい』という中畑貴志さんのコピーで知られる、戸川純さんのコマーシャルですね。そして、同時に行ったのが、日々お客さんと接する水道工事店さんへの地道な営業活動です。その1店1店の担当者に、ウォシュレットの良さを実感してもらえれば、心からお客さんに勧めてもらえる。特にトイレは商品の性質上、買い替えのタイミングが10年〜20年単位の長いスパンです。だからこそ、目の前の新規のお客さんに接する全国5万店のバックアップは大きかったですね」

他にも産婦人科や肛門科などの病院やゴルフ場などを一軒づつまわって設置を提案したり、ウォシュレットを設置する喫茶店やレストランを掲載した街のマップ「おしり天国」を作ったり、まさにあの手この手の営業活動を展開したそう。

そのような地道な営業活動の結果はーーもはや説明不要です。2014年度の温水洗浄便座の世帯普及率は76%と、4軒に3軒の割合。実際、「ウォシュレットがないと落ち着かない」って語る方(特に男性!)、多いですよね。

海外ではトイレの話題はタブー! 今後の展開は

一方海外では、冒頭の調査が表す通り、まだまだデータをとるに至らないほどの低い普及率。日本が辿ってきた道筋を考えてもすぐに変化を期待できるものではありませんが、TOTOでもいずれは、売上の半分を海外での販売で占めるまでに持ち上げたいのだとか。ただ、そこには思わぬ壁があるそう。

「国によっては、トイレの話が日本以上にタブーだったりします。だから気軽にCMを打つことができない国もあります」

海外は、ハリウッド女優が自らの性生活を語ったりとオープンなイメージが強いだけに、とても意外な言葉です。TOTOでは、現地に生産拠点を持ち、雇用の大半も現地で行うのだとか。その言葉も、上っ面の調査ではなく現地の生活文化に深く入り込んだ展開を実施するからこそ分かったことなのです。パーソナルな事柄だけに、やはり肌感覚を大事にしているということでしょうか。

海外での普及を目指す時にも、やはり体験機会の提供あるのみです。日本のあらゆる施設がそのままショールームになるほか、最近では成田国際空港第2旅客ターミナルビル、出国ゲートの奥に、最先端のトイレを設置した体感型トイレ空間「GALLERY TOTO」をオープンしました。外国人観光客が日本を発つ直前、最後に体験するのが日本の「トイレ」とは、なんとも面白いものです。

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ウォシュレットもラーメンも。クールな日本を再認識

それにしても、ウォシュレットが海外発のものだったとは、あらためて驚きです。そう、考えてみればラーメンもそうでしたね。その変遷には諸説ありますが、ラーメンも元は中国の麺料理としてやってきたものが、日本人ならではのオタク的な追及と細やかなアレンジの積み重ねの結果。世界に誇るラーメン文化を日本発のものとしてすっかり確立してしまいました。

ウォシュレットも、日本人が着目しなかったらここまで進化することはなかったでしょう。まさに細やかな感性と地道な努力の積み重ねの結晶。世界に誇る「トイレカルチャー」は、私たち日本人ならではの「価値」を思い出させてくれるようです。私たちは、海の向こうで輝くクールな「何者か」を目指す必要はない、そういうことなのではないでしょうか?

※1・2:「ウォシュレット」「音姫」はTOTO株式会社の登録商標です。

※2013年、オンライン旅行会社エクスペディアジャパンが日本在住の20〜60代の外国人女性200名を対象に行った日本文化や日本人に対しての意識調査による