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市民参加の環境調査プログラム 現地で研究者を手伝い、地球の今を体感

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森林文化協会の発行する月刊『グリーン・パワー』は、森林を軸に自然環境や生活文化の話題を幅広く発信しています。2017年1~3月号の「nature守り人」欄では、世界でそして日本で動いている、市民が研究者の環境調査を手伝うプログラムについて、アースウォッチ・ジャパンの伊藤雪穂さんに紹介してもらいます。まずは1月号掲載の(上)をどうぞ。

     ◇              ◇     

ボルネオゾウのモーニングコールで目が覚めた。隣に寝ているカナダ人のターニャに、「今の聞いた?」と声をかける。食堂では、アメリカ人のローラが「ばっちり撮れたわよ」と今朝のスクープ映像を見せてくれる。スロバキア人のミランも起きてきて、「さぁ、ヨガで体をほぐそう。今日も険しい密林だからね」と号令をかける。

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ボルネオ熱帯雨林の健全な姿(左)と農場開発後の様子(右)ⓒCh'ien Lee

これは、2015年に私が参加したアースウォッチの「ボルネオの熱帯雨林」調査プログラムの1コマだ。私たち、世界8カ国から集まったサイエンス・ボランティアは、マレーシアのボルネオ島北部で12日間一緒に寝泊まりし、現地の研究チームから指導を受けながら調査を手伝い、熱帯雨林の保全について学んだ。

アースウォッチは、1971年にアメリカで生まれた環境NGOである。気候変動、海洋、生物多様性、人類文化遺産をテーマに、市民が参加できる調査プログラムを開発し、これまでに10万人以上の一般市民がおよそ120カ国で行われた1400にものぼる調査プログラムに参加し、地球環境の変化を現場で学んでいる。

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熱帯林の回復状況を研究するマレーシア人のベニー博士(右端)も、ボランティアの市民を指導しながら調査を続けている=この写真と下の写真は、伊藤雪穂さん提供

環境問題の解決には、市民自らが問題を認識して、自らの責任で社会が持続的に発展していくように働きかけることが重要である。一方で対策を立てるには、まず問題の実態や原因を明らかにする必要があるが、それには広範囲の環境を長期間にわたり観察しなければならず、時間と資金、人手が必要である。

このためアースウォッチは、研究者による科学的な野外調査の現場に一般市民を送り込み、①ボランティアに対しては、具体的な現場を体感し、科学的な視点で環境問題を考える機会をつくり、②研究者には、人手と資金の支援を行い、調査の推進に協力している。

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蒸し暑く急峻な熱帯雨林を歩き回り、種を探すのは一苦労。地道な研究の大変さが身にしみて分かる

冒頭で紹介したボルネオでの調査は、アブラヤシ農場の乱開発により壊滅的な被害を受けている熱帯雨林の持続的な利用方法を検討するために行われた。私たちボランティアは、研究者から調査の意義や背景などのレクチャーを受け、熱帯雨林の代表的な樹木であるフタバガキの種を森の中でひたすら探す毎日であった。

私たちを指導した研究チームは、1985年に英国王立協会の支援で設立された東南アジア雨林調査プログラム(SEARRP)に所属し、その調査結果は、森林の回復力に関わるデータとして、「持続可能なパーム油のための円卓会議」(RSPO)でも注目され、アブラヤシ農場運営のガイドライン作成など、具体的な対策の一助となっている。

このような研究者の地道な調査は、環境問題の解決に向けて世界中で行われている。その調査の手伝いは、探す・測る・記録するなどの誰でもできる作業である。多くの研究者があなたの協力を待っている。ぜひ現地に足を運び、地球の今を体感してほしい。(続く)