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「閉じたお寺」から「開かれたお寺」へ

2013年05月28日 17時56分 JST | 更新 2013年07月27日 18時12分 JST

最近、雑誌や書籍で「仏教」や「お寺」特集が増えていますね。大学を卒業してから新卒でお坊さんになって、今年で丸10年になります。私の生まれはお寺ではないですが、地元の北海道で祖父が住職をしておりました。

記憶がはっきりしないのですが、その祖父が幼少の自分に、「あんたが大きくなって、お坊さんになって、日本の仏教界を変えてくれたらなぁ」とつぶやいたことが、なぜか脳裏に焼き付いています。

子どもの頃の記憶は不思議と、人生の選択に大きな影響を与えるものですね。大学3年の就職活動時に、就職でも進学でもなく、「出家」の道を選んだのでした。

祖父のリクエストに応えるためというわけではないですが、私はお坊さんになってから、

・"お寺カフェ"「神谷町オープンテラス」

・"インターネット寺院"「彼岸寺(ひがんじ)」

など、お寺の世界でいろいろな取り組みをしてきました。

そして今、取り組んでいるのは「未来の住職塾」というお坊さん向けのお寺経営塾です。

この取り組みを始めるに当たり、私自身、MBAを取りに留学しました。これまで「お寺カフェ」や「インターネット寺院」などさまざまな試みを行ってきましたが、一度立ち止まって、これからのお寺の在り方というのを私自身整理して考えてみたかったからです。今までやってきた活動が点としては成り立っていましたが、それら全体がどう統合されていくのか、お寺の未来を本気で描き、それをちゃんと社会と接続していきたいと思いました。

「お寺」に「経営」というとなんだか生臭い感じに聞こえるかもしれませんが、中身はまったくそんなことはなく、かなりストイックなものです。学校には学校の、病院には病院のあるべき経営があるように、現代社会においてお寺がどのような価値を提供するのか、存在意義のレベルから原点を問い直そうという、お坊さんの学びの場を作っています。

結局大事なことは、新しいことに飛びつくことではなくて、足元をみること。そして、本当にやらなくてはいけないことを本当にやっていくということ。それに尽きるんだということを、いつも感じています。

私たちが実施しているユニークなプログラムに、「お寺360度診断」があります。お寺の住職というポジションは、実は企業の社長さん以上に孤独で、いつも上座の一段高いところに置かれるため、率直にモノを申してくれる人がなかなかいません。

だから、まずは足元から自分自身を見てもらうために、顧客視点と言いますか、ぐるり360度からステークホルダーのみなさんに評価してもらいます。お寺のステークホルダーは檀家さんだけではなく、地域社会の人とか出入りの業者さん、親しいお寺さん、ご住職の奥さんや家族、みんなに匿名アンケートに率直に回答してもらって、結果を住職にレポートします。レポートを受け取った住職は、皆さんからのナマの声に驚愕!の図となることもしばしばありますが、その苦しみを乗り越えた人がお寺の未来を開きます。

ところで、仏教では仏・法・僧と言って、"仏"はお釈迦様、"法"は教えそのもの、そして、"僧"は仲間であるサンガ、それら3つを大切にします。仏教における三つの宝のうちのひとつが、「サンガ=僧団の仲間」なのです。よい仲間を得ることこそが、学びを深める最重要事項です。未来の住職塾は、住職が宗派を超えて共に頑張る仲間を作る、いわばお坊さんの学びのプラットフォームです。

私は、お寺は気づきの場だと思います。今、企業や学校でもさまざまな教育プログラムがありますが、それが本当の意味で効果を発揮していくためは、人が人生の軸となる思想や価値観を持つことが絶対に必要になってきます。今後、その思想や価値観を磨く場として、お寺が果たしうる役割はすごく大きいはずです。

仏教とは仏の教え、ブッダの教えであり、ブッダとは目覚めた人という意味です。つまり、目覚めた人の教えであり、みんなが目覚めていくための教えです。仏教は仏道とも言いますから、その道を歩き続けることが大事です。その仏教が私の人間性をすぐに高めてくれるかというと、なかなかそう簡単にはいきません。

それでもなお、我が身のあり様が明らかに照らされることで、前に進んで行く力を与えてくれる。自分の現在地が分かるということは、迷いから抜け出る第一歩です。

「閉じたお寺」から、「地元コミュニティに深く根差した開かれたお寺」へ。お寺の未来はここから始まります。

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未来の住職塾の全国大会「お寺の未来フォーラム」の様子